第69話 ゆるい
「お帰りなさい星七、今夜は星七の好きなローストビーフよ」
「やった!」僕は喜んで食卓へ着いた、一瞬軽井沢での食事を思い出す。
最近の夕食は琴音さんが手間をかけて作ってくれるのでとても美味しい。
「美味しいなあ、こんなに毎日贅沢でいいんだろうか?」
「こんなの全然贅沢じゃないよ、でも星七が喜んでくれると嬉しいな」ニコニコしている。
夜になって僕が原稿を書いていると琴音さんはコーヒーをいれてくれる。最近僕はブラックコーヒーを飲めるようになった。少し大人になったような気がしている。
そろそろ寝ようかと思ったら、僕の部屋から悲鳴が聞こえた。慌てて部屋へ行ってみると琴音さんが怖い表情で僕を睨みつけた。
「星七の嘘つき!嘘つき!」
「え………」
「茉白ちゃんとHしてたのね、嘘つき星七!わ〜………」僕のベッドに倒れ込んだ。
「琴音さん、茉白ちゃんとはそんな関係じゃないですってば!」
「じゃあこれは何なの?」僕に小さな箱を投げつけた。
「あっ………」捨て忘れた避妊具だ。
「中を見たら6個入りなのに4個しか入ってない!茉白ちゃんと2回もHしたのね、信じらんない!」
「琴音さん違うよ、これは図書館の棚に置いてあったから捨てるつもりでポケットにいれたんだ、でも学校で捨てると面倒なことになりそうな気がして持って帰ってきただけなんだよ」
「本当なのそれ?」口をへの字にした。
「僕は嘘はつかないよ、これまでも嘘ついた事ないでしょう?」
「そうだけど………そうだけど………」指先で涙を拭いた。
「琴音!僕を信じろ!」
「あ………ずるい!呼び捨てにしたら私が言う事を聞くって思ったんでしょう?」頬を膨らして僕を睨む。
「うん………そう思ってる、でも嘘じゃないから………」
「星七のばか!もう………凄いショックだったんだからね!」そう言って抱きついてきた。
「ちなみに僕は中を見た事がないし、使い方もよくわからないよ?」
「そうなの?………一度試しに使ってみる?」
「何言ってるんですか!」慌てて琴音さんから離れた。
「私も見た事ないし、一つ開けてみようかな?」
「やめようよ〜、誰がさわったか分からないし、気持ち悪いよ」
「それもそうだね」
結局ゴミ箱へポンと捨てられた。
「ねえ星七ちん、最近私星七の事でいっぱい泣いてるよ、奴隷だから仕方ないのかなあ………」
「すみません、僕がしっかりしてないんで………」
「そうじゃないの、私が子供みたいになってる気がする、もっとしっかりした大人の女性になったつもりでいたのに、笑っちゃうな………」
「そうですか?琴音さんはしっかりした大人の女性に見えますけどね………」
「呼び捨てにされて喜んでる私が大人に見えるの?」
「そこは凄く可愛いです、でも可愛い大人になってもいいんじゃないんですか?」
「可愛い大人か………星七にはそう見えてるの?」
「はい、最近は特にそう見えてます」俯いてしまう。
「そっか、そのままの自分でもいいんだね?」
「はい、問題無いと思いますよ」
「そう思ったら少し気が楽になった気がするよ、じゃあこれから思いっきり星七に甘えよう」ニコニコしている。
「えっ………」僕は固まった。
「あのう………僕は甘やかされ過ぎてるのでスパルタでもいいですよ」
「分かった、努力するわよ」
やっと安定が戻ってきた、リビングは平和になっている。
「さあ、もう遅くなったので寝ますよ」そう言って僕のお尻をペシペシと優しく叩いた。
「ん………何してるんですか?」
「だから、スパルタで叩いてるんでしょう?」ニコニコしている。
「へ………」なんてゆるいスパルタなんだろう?。
「今夜は私のベッドで寝ますよ」またペシペシと叩いている。
「う〜ん………ゆるすぎる………」僕はダメな人間になりそうな気がしてくる。
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