第53話  何これ〜?

 リビングの琴音さんはブルーのジャージを着ている。最近はスキンシップがより酷くなってきた。


『おかえり星七』そう言って抱きしめる。『ごちそうさま星七」そしてまた抱きしめる。『おやすみ星七』やや長めに抱きしめる。僕はどうしたものかと思案に暮れた。


 図書館で作業が終わると、メンテ室で茉白ちゃんとココアを呑んだ。


「最近忙しいね?」茉白ちゃんは唇を窄める。


「そうだね、そいとげのお店もあるし、慌ただしいよね」


「私もっと二人だけの時間が欲しい」上目遣いで僕を見た。


「茉白ちゃん………」僕は立ち上がり茉白ちゃんの横へ近づく。


 茉白ちゃんはゆっくりと立ち上がって僕の方を向く。僕はゆっくりと抱きしめて少し長くキスをした。そのままおでこをくっつける、するとメガネがコツンと当たった。


「あ………ごめん」僕は少し離れる。


「いいの」そう言って茉白ちゃんはメガネをそっと外して置いた。


 僕はメガネを外した茉白ちゃんも良いと思う、そしてもう一度長めのキスをしてゆっくり離れる。


「メガネを外した茉白ちゃんも好きだなあ………」


「えっ………」恥ずかしそうに俯く。


「メガネっ子の茉白ちゃんも大好きだけど、メガネを外したら綺麗だよ」


「本当に?」


「うん」


「前からコンタクトにしてみようかと思っていたんだけど………挑戦してみようかなあ………」


「無理はしなくていいよ、ずっとメガネでも何も問題ないんだからね」


「ありがとう、でも………キスの時は無い方がいいと思った」恥ずかしそうに微笑んだ。


 僕はまた抱きしめたくなって、ギュッと茉白ちゃんを強く抱きしめる。すると茉白ちゃんの豊かな胸の感触がリアルに伝わってきた。僕の体温は急上昇してうっすらと汗をかいてしまう。身体中の細胞が目覚めていく気がした。


 家に帰ってもなかなか落ち着かない。琴音さんがジャージ姿で抱きしめてくる、そして胸の感触が伝わってくる。僕の身体中の細胞が歓声を上げている。僕は完全に変態になってしまった気がする。


 夜ベッドの上で突然激痛が僕を襲った。強烈に身体中が痛い、特に足は壊れそうに痛いのだ。僕はリビングへ這って出てきた。


「琴音さん!琴音さ〜ん!琴………痛い!………ううう………」


「どうしたの?」琴音さんは大きく目を見開く。


「痛いんです!」僕は激痛にのたうちまわる。


「星七!大丈夫!」琴音さんは慌てて救急車を呼んだ。


 僕は駆けつけた救急隊員に運ばれ、救急車で病院へ向かう。横に琴音さんが泣きそうな顔で僕の手を握りしめた。


僕は徐々に意識が薄れていく………………琴音さんの声が聞こえた………。


『神様!星七を助けて!私の命を代わりにあげるから………だから星七を助けて〜』


僕は意識が遠くなった。

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