第28話 やわら暖かい?

 リビングでジャージ姿の琴音さんへ声をかける。


「あのう………今度の日曜は何も予定ないですよね?」


「うん、別にないけど………何?」不思議そうに聞いてくる。


「今度の日曜は茉白ちゃんの買い物に付き合う約束をしたので………」


「お〜星七ぴょん、やったね!ついに茉白ちゃんとデートか?」ソファーから大きく身を乗り出してきた。


「そんなんじゃないです、茉白ちゃんのイトコがもうすぐ誕生日なのでプレゼントを探すお手伝いです。琴音さんの誕生日にお世話になったので」


「ふ〜ん、そうなんだ………」ニヤニヤが止まらなくなっている。


「ただ買い物に付き合うだけです」念を押す。


「ん………」突然琴音さんは天井を見て固まる。


「星七、どんな服で出かけるの?」


「えっ、いつもの服ですけど?」


「ちょっと着てみて!」ややキツめの口調で詰め寄ってきた。


 僕は仕方なく外出用の服に着替えた。それを見た琴音さんはガックリと項垂れる。


「ダメだ〜!ダサい、子供っぽい、酷すぎる」両手を頭の上に上げて絶望的な表情だ。


「僕は普通だと思いますけど………」


「星七の普通は限りなくレベルが低い!低すぎる!」


「そうかなあ………」僕は首を傾げる。


「明日の夕方買い物に行くわよ。確かに今まで気にしてなかったのがいけないのね、危なかったわ、恥をかくところだったわ」


 琴音さんはブツブツとつぶやく。結局次の日の夕方、駅で待ち合わせて洋服屋さんを回った。


「うん、これなら何とか大丈夫よね」頷いている。


 琴音さんは数着の服を買ってくれた。僕は小さいので裾を直してもらう間食事して帰ってきた。


「すみません、沢山お金を使わせてしまって」僕は頭をさげる。


「いいの、私は親代わりなんだから」優しく微笑んでいる。


 服を買ってもらった僕は日曜が来るのが少し楽しみになった。


「星七、お・風・呂!」琴音さんの一言で僕は日常業務へ戻る。急いでお風呂の充備をした。


「ありがとう星七」琴音さんはランデビ琴音に変身してお風呂へ向かった。


 また一枚の画像がまぶたの裏に張り付く、白か………………

琴音さんからは慣れろと言われているが、ちっとも慣れることができない。何故だろうと思う、ふと、もし茉白ちゃんなら?と想像してしまう。「おわ〜!!!ダメだダメだ」慌てて妄想をかき消した。ヤバイ、僕はもう変態になっているかもしれない、不安が押し寄せてきた。


「星七、ちょっと来て!」お風呂から声が聞こえる。


 僕はガラス戸をノックした。


「入っても大丈夫よ」


 中に入ると、湯船の中に髪をまとめて上げた琴音さんが見える。


「ねえ、またアレルギーが出たっぽい、ちょっと見て?」


 近付いて見るとやはり首の皮膚が赤くなってカサカサしてるような感じがした。


「前みたいに少し赤くなってカサカサしてる感じがします」


「やっぱりそううか………」少しくもった声が聞こえた。


 僕はリビングへ戻るとパットでこの数日の食事メニューを確認した。


「う〜ん、卵料理が多かったなあ………何か影響があるんだろうか?」


 僕は卵アレルギーを検索してみる。琴音さんはランデビさんになった後ジャージになってリビングへ来た。


「何を見てるの?」


 僕はパッドのカレンダーを琴音さんに見せる。


「見てください、ここ数日の食べた食事を、卵が多いと思いませんか?もしかしたら卵アレルギーじゃないかと思って今検索したんです。卵アレルギーは子供が多いんですけど大人になっても出る人がいると書いてあります」


「えっ、毎日食べた料理を記録してるの?」


「はい、アレルギーの原因がわかるかもしれないと思って」


「そうなの?私のためにそんな事をしてくれてたの?」瞳を大きく開いて僕を見ている。


「ご飯は僕の仕事ですから………」ポツリと漏らす。


 琴音さんはいきなり抱きついてきた。


「うっ………………」僕の頬は琴音さんの胸の柔らかさを感じる、しかもジャージなので余計に伝わってくる。


「ムギュ………」僕の心は音を立てる、そしてほっぺたはとってもやわら暖かい〜………………。


「ヤホーがまた私のために検索してくれた」つぶやきが聞こえる。


 琴音さんはコーヒーを淹れてくれた。僕は琴音さんの顔を見るのが恥ずかしくなっている。それにしてもコーヒーって苦い………。


「僕はオムレツを作るのが少し上手くなって嬉しくなり、卵料理が増えちゃったみたいです、少し間を置くようにしますね」


「大丈夫よ、多分卵のせいではないと思うわ」少し寂しそうな表情でコーヒーを飲んだ。

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