第6話 高校生活がぁ………
やがて入学式を迎え、僕はついに高校生となった。1年C組が僕のクラスだ。初めて入った教室には朝日が差し込みホコリが少し舞っていてキラキラ光っている。学校独特の匂いがリビングと小悪魔から開放してくれる気がする。楽しいクラスになるといいなあと心から思った。
クラスに知り合いはほとんどいない。しかし一人だけ最も離れたかった友だち、いや友だちなんかじゃ決してないあいつがいる。僕と一緒にみんなからいじられていたあいつがニコニコと近づいてくる。悪夢の再来か………僕は気持ちがズンと重くなった。
「よう、久しぶりだな、同じクラスで嬉しいよ、俺たち名コンビだしなあ」ハイタッチを要求している。
う………ハイタッチなんてしたくない絶対するもんか、心の中で呟く。
「どうしたんだよヤホー、反応薄いなあ」不思議そうに顔を覗き込んでくる。
「うるさいな!そいとげ」僕は奴のニックネームを胸元めがけて叩きつける。
彼は
クラスのみんなは僕のヤホーを軽いと笑い、そいとげを重いとさらに笑った。そしてちょうどいいのはいないのかよと質問され僕とそいとげは手を横に振って「いないよ」と返すのがいつものパターンだ。
しかし『そいとげ』にプライドを持っている彼はあまりめげていないようだった。
こんな面倒くさいヤツが、なぜこの高校へきたんだろう?この高校ではワルを学ぶことができるんだろうか?不思議でならない。しかも運の悪い事に僕の隣の席になってしまった。あ〜また二人漫才コンビのような扱いを受ける学校生活が始まるんだろうか、僕は一気に気持ちが重くなってきた。
初めてのホームルームが始まると担任の若い男性教師、
「
「はい」立って軽く会釈する。
「樹神、お前は図書部員に任命されたからよろしくな」
「えっ、図書部員ですか?はい………………」椅子へ崩れ落ちる。
「おいヤホー、よかったなあ、この高校では図書部員はクラブに入らなくてもいいらしいぜ」となりのそいとげが親指を立てている。
「何でだよ、何がいいんだよ」僕は煙たい顔でそいとげを睨んだ。
この東栄高校はクラブ活動にかなり力が入っている。そしてクラブ活動から有名な人もたくさん出ているのだ。そこがこの高校の魅力になっている。僕はこの高校の文芸部へ入りたかったのだ。それなのに図書部員を押し付けられてしまった。
学校でも自宅でも思っていた方向とは違う状況になってしまった。嘘だろう………ため息が漏れる。こんな事なら福岡にでも行ったほうが良かったのではないかと思ってしまう。
今僕の心は殺伐とした荒野に一人佇んでいる、そして楽しい未来の光は僕を照らすことはないのだ。気がつくとぽたりとひとしずく涙が溢れて机の上に落ちた。
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