12/13 マツの木




 よく手入れのされた荘厳たる松の木が等間隔で立ち並ぶ中。

 吸血鬼ハンターは頼んだ。

 己が滅した吸血鬼を迎えに来た死神に。

 肉体は塵と化して消え去っても、魂は残っているのかと思いながら。


 引き裂いては放り棄てたが、恐らくは消滅してないだろうこの世を彷徨う、いくつもの己の魂を刈ってほしい。


 死神は目を眇めて、暫し口を閉ざしてのち、吸血鬼ハンターに言った。












「兄貴」

「うん?」

「そんなに松ぼっくりを集めてどうするの?」

「クリスマスツリーの飾りにする」

「クリスマスツリー」

「クリスマスツリー、知らないか?」

「知ってる。けど、飾った事はないなあ」

「私もです」

「なら全部が終わったら、三人で飾るか」

「うん!」

「はい!」


 あちらこちらと地面に落ちている松ぼっくりは、傘が開いているものもあれば、閉じているものもあった。

 嬉々として拾いまくる暖に釣られたのだろうか。

 蒼の魂も続々と集まって来ては、松ぼっくりを拾いまくっている。

 さびしんぼうのくせにどうして本体に戻らず、このアドベントカレンダーに逃げたんだか。

 ほぼ毎日現れる自分の魂に、自分の事ながら呆れた蒼は暖と澪と一緒に松ぼっくりを拾っていた。

 動きが鈍い蒼をちらちらと見ていた暖は、ほいっと、飴玉を蒼に手渡した。

 鉄分多め代用血入りの飴で、暖はいつも携帯していた。


「ありがとう」


 蒼は丸い飴を口に放り込むと、右に左にと移動させながらなめ続けた。

 チョコレートの味がするのは、まだチョコレートの匂いが身体中から漂っているためだ。

 まさかずっとこのままなのかな。

 ちょっとそれは嫌だと思いつつ、蒼は重たい身体を動かして松ぼっくりを拾い続けた。

 早く全部終わらせて、暖と澪と一緒に飾るクリスマスツリーを楽しみにしながら。











(2023.12.13)



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