12/11 ヘクセンハウス




 ヘクセンハウス。

 みんなの憧れのお菓子の家。

 はちみつ入りのクッキーでできた家の屋根を飾りますは、ふっくら雪のような、シュガーグラス。

 サンタさんクッキー、キャンディークッキー、葉っぱクッキー、チョコスプレークッキー、アーモンドココアクッキー、アーモンド、ハートクッキー、スタークッキー、アラザン、レモンピールがその上にちりばめられています。






「すみませんでした!!!」


 蒼は暖と澪に向かって土下座をした。

 頭にヘクセンハウスと蒼の魂を乗せたまま。


 ロゼシャンパンに酔って眠っていた自分がいきなり起き出すと、あっちらこっちら走り出して材料を集めたかと思えば、大声でクリスマスソングを熱唱しつつ、手際よく作ったヘクセンハウスを頭に乗せたらしい。

 そして、そのヘクセンハウスに飛び込んできた蒼の魂が、もくもくとゆっくりと食べ続けているとのこと。


「おまえ、酔ったらヘクセンハウスを作るんだな」

「ええっと。そうなんですね。初めて知りました。ぼく、お酒に酔ったら発動するそんな特技?妙技?があったんですね。はは」

「すごかったですよ。目にも止まらない速さでヘクセンハウスを作っていました。今度、酔っていない時にぜひ作ってください!私も食べてみたいです!」

「ええっと。ぼく、食べる専門で。作るのは、兄貴の専門分野だから。どうだろう。でも、挑戦は、してみようかな。はは」

「おう。頼む」

「とっても楽しみにしています」

「うん。ガンバリマス」


 土下座のまま力なく笑う蒼を見た暖と澪は、互いに目配せしては、そっと安堵したのであった。


 どうやら記憶はないらしい。

 本当はヘクセンハウスは蒼が作ったのではなく、剣を持って攻撃しようとした蒼を止めようとしたのだろう、どこからともなく飛び込んできた蒼の魂が持っていたものだということを。

 蒼の魂がヘクセンハウスを蒼の頭にそっと置くと、蒼はまた眠りに就いて、次に起きた時はいつもの蒼だったので、暖と澪は先ほどの嘘をついたというわけである。




(酒を飲んだら、昔の人格が現れるのか?)

(お酒を飲んだら、内に秘めていた暴力性が現れたのでしょうか?)











(2023.12.11)



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