12/8 クランベリージャム
「ありがとうのう。わしの望みを叶えてくれて」
「じいさん。そんなに吸血鬼とロゼシャンパンを飲みたかったんだな」
結局、みんなで飲むことになったロゼシャンパン。
小さなワイングラス一杯を飲んだだけで眠りに就いてしまった蒼と澪に、現世から持ってきた毛布をかけた暖はおじいさんと、同じく現世から持ってきたクラッカーとクランベリージャムと一緒に嗜んでいた。
「そうだのう。今際の際に望むくらいには」
「そっか。叶えられてよかったな」
「っふ。理由は尋ねんのか?」
「んん?そうだな。まあ。いっかな。叶えられた今だけで、腹がいっぱいだ。過去話なんて聴いた日にゃあ、腹がはち切れちまう」
「っふっふ。ならば、若者の健康のために止めておくかのう」
「おう。まあ。若者に見えても、じいさんよりは年上だぜ」
「吸血鬼あるあるじゃな。では、あの眠っている少年もわしより年上なのかのう?」
「ん。んん。いや。あいつは。じいさんより年下だな。まあ。大体、見た目と変わらない。と思う。いや、若返ったんだっけ?吸血鬼になりたてなんだ」
「おぬしが血を吸ったのか?」
「ああ」
「愛ゆえに?」
「んー。そうだな。愛ゆえに。って、言っておこうか」
「ああ。いいのう。胸がむずむずするのう。望みが二つ、叶えられたみたいじゃ。本当に、本当にありがとうのう」
「死神が目覚めるまでまだ時間はあるだろ。それまでは、今を堪能しようや」
「ああ」
何度目だろうか。
暖とおじいさんはワイングラスを軽く当てて、乾杯と言ったのであった。
(2023.12.8)
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