12/4 チョコレートの湖




「夢っちゃ夢だよなー」

「そうですね!一度は誰もが抱きそうな夢です!」

「でも抱くだけで実際に飛び込みたいと思わないよね」

「そうだなー」

「そうですね」


 ぼくと兄貴と死神は横に並んで見つめていた。

 それはそれはもう溶けたチョコレートがたっぷりと注がれた大きな湖と、その中で嬉々として泳ぐぼくの魂を。


「………なんだかぼくの魂どんどん分裂してないかな?」

「そうだな。分裂してちっちゃくなってるのに、チョコレートを飲み込んですぐに大きくなって、また分裂してちっちゃくなってどんどん増えてる。はは。もうすぐにチョコレートが枯渇するんじゃないか」

「もう!ぼくはそこまで食いしん坊じゃありません!って、言い返したいけど。本当にできそうな勢い」

「すごいなー」

「死神。ぼくの身体よりすんごく大きくなっちゃってるんだけど。あの魂を身体に戻せるのかな?」

「はいきっと!………ええっと。多分」

「まあ、小さくしなくちゃいけないなら、しごきまくるから大丈夫だ」

「そうですね!兄貴がいるから心配ないや!」

「まあ!本当に素敵なお二方です!お互いに信頼しているのですね!」

「まあね!」

「まあな」




 一時間後。

 本当にチョコレートを枯渇するまで飲みまくったぼくの魂は、一つに集まって山のような大きさになったかと思えば、ぼくの身体と同じ大きさになって身体に戻って来た。

 身体からチョコレートの匂いが漂っているように感じたのはきっと、気のせいではないはず。

 兄貴と死神には申し訳ないと思いつつ、ふと不安が過った。

 あれだけ摂取したのだ。

 満足しているはずなのに。

 まだ食べたいと思っている。


 そんなにチョコレートが好きだったかな?











(2023.12.4)



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