汚部屋の園の白華さん〜クラスメイトの才女がなぜか俺ん家に住み着いてる件〜
キノ
第1話 ゴミ屋敷と出会い
「な、何やってるんだ二人とも。」
俺、内藤
するとラウンジで管理人ののどかさんと義妹である
「お兄ちゃん帰ってきたよのどかさん!」
「ほんとだ!待ってたよ湊くん!」
俺を見つけるや否や顔をキラキラさせてこっちに近づいてきた。
翠はサイドテールにした紺色の髪にパッチリとした目に整った顔立ち、スラッとした体型。
一つ歳下だから通う学校は同じなので制服も一緒。
しかし見事に着こなしている。
俺とは似ても似つかない可愛い妹だ。
管理人ののどかさんは黒色のウルフカットに大きさを主張する胸。もちろん容姿端麗だ。
ぶかぶかのパーカーを着て下はタイツを履いている。
もう時間は夕方なんだしいくらマンション内だとしてもあんまり女子だけでいられるのは少々心配になるからやめて欲しいんだが…俺に用があったのかな?
「何かあったのか?翠。管理人さんも一緒で。」
「それがお兄ちゃん…!私たちの隣の部屋がね…!」
「そうなの…聞いてよ湊くん…。」
「…?」
—————
「なるほど…。」
二人の話によれば俺たちの隣の部屋が噂によるととんでもない荒れ具合なのだと言う。
具体的に言えば…ゴミ屋敷ということだ。
それに翠が言うには今日突然隣からドタドタと物音がしたらしく噂も相待って怖くなったらしい。
管理人さんも注意したいがどんな奴が住んでいるかも分からないから怖いそうで…
「そこで俺の出番、というわけですね。」
「そうなの!湊くんちょっと様子を見に行ってくれない?」
…そうはならないだろ。
まあでも俺たち二人は管理人さんにすごくお世話になってるから出来ることはして恩返ししたい。
「分かりました。この荷物置いたら見てきますね。」
「あ、お兄ちゃん片っぽ持つよ!かして。」
「ありがと。」
そう言いながら軽い方の袋を翠に渡す。
「ありがとね湊くん!今度また三人で一緒にご飯食べに行こ!」
「やったあ!それじゃのどかさんありがとねー!」
翠が管理人さんに手を振る。
俺も軽く会釈し、階段へと歩いた。
—————
「そういえばお兄ちゃん、テストはどうだった?」
「どうって…。」
翠がエレベーターの中で聞いてきた。
「絶望的だ…。」
「あ、あちゃー…。」
そう、俺は普段から自分と翠の家事を全て一人でこなしているため勉強する余裕が全くない。
決して言い訳じゃないぞこれは…
「また白華先輩が一位なの?」
「えーと、確かそうだったな。」
「やっぱりすごいなあ白華先輩は。私たち一年にまで噂で持ちきりだよ。」
「へー、すごいな。」
''白華先輩''というのは俺のクラスにいる
まさに文武両道、才色兼備の天才。
輝くような澄んだ銀髪もさることながら学校ではちょっとしたアイドルのようになっている。
「ねね、今日ってもしかして夜ご飯鍋?」
「そうだよ。寒いし良いだろ。」
「うん!賛成!」
チーン
「よいしょ。」
エレベーターが開いたので俺たちは降りて部屋まで歩いた。
「…今は静かだね。」
「そんなにうるさかったのか?」
「もうねバタバタドカーン!って言ってたんだよ…。ほんとびっくりしたあ…。」
扉の前に着くと翠が隣の部屋をそーっと眺めながら言う。
心してかかろう…。
—————
野菜や卵とかを冷蔵庫に入れて再び外へ出る。
「…よし。」
覚悟は決めた。
すぐ終わらせて鍋作りに行こ…。
ピンポーン
……
何も返事がない。
留守なのかな…?
ドタドタ…!バターン!
「な、なんだあっ!?」
突然中から足音がしたと思ったら何か倒れる音が鳴り響いたのでめちゃくちゃ驚いた。
しかしまたも流れる静けさ。
「このままじゃ埒が明かねえ…。よし覚悟決めろ…。」
俺はそっとドアノブへと手を伸ばす。
「うおっ…!開いてる…。」
まさかとは思ったが鍵がかかってない。
よし…一言管理人さんからもう少し綺麗にしてねと伝えるだけ…そしたら速攻で帰ろう…。
ガチャ…
「な、なんだこれ…!?」
扉を開けた俺の目に入ってきたのは……
床が見えないほどに所狭しと転がるペットボトルや積まれたゴミ袋、弁当の容器にカップラーメンのゴミ……これが見える範囲までずっと続いている…!
「これ…がゴミ屋敷…か。」
世間で俗に言う''ゴミ屋敷''…まさかこんなところでお目にかかれるとは思ってなかった。
えーと…ここのどこに住むところがあるんだろう…?
奥までのぞいてみるとふと、床に倒れている人が目に入った。
「ま、まさかあの人か…!?」
俺は急いで駆け寄ってみる。
途中途中、足場を確保するのが厳しかったが…。
そしてようやく辿り着いた時、倒れている人の正体を知り、俺はとんでもない衝撃を受けてしまった。
床に広がる綺麗な銀色の髪は部屋の薄暗い光をちらちらと反射していた。
目を瞑っていることにより、強調されるまつ毛の長さに整った顔立ち、透き通った雪のように白い肌にほんのりとかかるピンク色の頬。
「嘘だろ……この人……白華さんじゃないか…!?」
そう、この人こそ先ほど話した学校のアイドル、白華八雲さんその人だったのだ…。
な、なんでこんなところに…事件かこれ…?
「はあ…はあ…。」
「…ん?」
白華さんの息が荒い。
よく見れば少し苦しそうな気もする。
額に俺の手を当てて熱を測る。
「…あっつ!熱があるのか!」
早く体を温めて寝かせないと…なんでこんなところに…いやまて…。
「本当にここで…寝かせて良いのか…?」
どう見てもここは清潔とは言えない。
このままじゃ悪化してしまうのでは?と思うほどだ…。
「ぐぬう…ぬう…しょうがない…!」
地面に横たわる白華さんの体をそっと持ち上げてゆっくりそーっと部屋の外に出る。
向かうは俺たちの部屋…。
このまま白華さんを放っておけないし、事態は急を要する。
「お兄ちゃーん!どうだったあ…って誰その人…!?」
「…親愛なる隣人だよ。」
とりあえず…。
「風呂に入れた方が良い、のか?」
こう言う時はあまり風呂に入ると悪化するから良くないが…今は例外なんじゃ…?
なぜなら…白華さんは多分かなり汚いから…。
あんな部屋にもし住んでるとなれば更にだ。
「…白華さん。俺、クラス一緒の内藤だけどお風呂って入れるかな…?」
俺が呼びかけると瞑っていた目を少しだけ開いた。
そして小さくて形の良い口が今日初めて声を発する。
「…無理…です。入れて…くだ…さい。」
「え?」
聞き間違いなのか…?風呂に入れろって言われたような…?
「わた…しお風呂一人で…入れま…せん。」
…………
「えええええええええ!?」
これが俺、内藤湊と白華八雲の初めての出会いなのだった……。
つ、つーか本当に風呂入れるの…?
☆☆あとがき☆☆
読んで頂きありがとうございます!
こちらカクヨムコン参加作品となっておりますのでぜひ小説のフォローや☆☆☆評価よろしくお願いします!
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