第30話 断罪の剣
俺が剣を構え踏み込むと、グリードの表情が変わった。
「凄い力を感じるぞ! よし、使ってみるか」
「ま、待て! なな、何だその剣は!?」
「お前には関係無い。覚悟しろグリード!」
ザッ! ザッ!
俺が一歩踏み込むと、グリードは一歩後ろに下がる。
「ま、まま、待てよ! 仲間じゃねーか。俺たちはよ」
「俺を仲間だと思ったことは一度も無いんだろ?」
「あんなの軽いイジリだろ。水に流せよ」
「お前らはイジリで人を騙したり利用したり追放するのか? 蹴り飛ばして人の物を略奪するのか?」
ザッ! ザッ!
「うひっ! あんなの遊びみてーなもんだろ。アキよぉ」
「遊びだと!? 遊びで人を海に落すのか? デマを流して
「まま、待てよぉ。俺とお前の仲じゃねーか」
「何が仲だ、何が仲間だ、白々しい! 仲間だなんて気軽に口にするな!」
ザッ! ザッ!
「あひっ! そ、そ、そうだ、金をやるよ。いくら欲しい? 俺の実家は勝ち組なんだよ」
「くだらない。お前はそうやって人の気持ちを踏みにじり、全て金で解決して生きてきたんだな」
ザッ! ザッ!
「あひぃ、あぁひぃいいっ! 待て! ここ、これは悪夢だ! アキが強ぇえなんてよ」
「言いたいことはそれだけか!? 俺の大切な
「うっひぃいいいいっ! 俺は悪くねぇ、勝ち組の俺様は何しても許されるはずだぁ!」
なおも醜い言い逃れをする
「くらえっ! グリードぉおおおおおおおお!
ズダダダダダダダダダダーン!
「グバボゲェエエエエェッ!」
振り下ろした剣から衝撃波が出てグリードが派手に吹っ飛んだ。闘技場の壁にめり込みゴブリンみたいな悲鳴を上げる。
「グァアアアアッ! 折れた! 骨が折れた! あひぃ! い、痛ぇええええ!」
最初の威勢はどうしたのか、グリードが情けない悲鳴を上げる。
「これはやり過ぎたか? 意外と凄い衝撃波が出たけど。まあ良いや、次はラルフだ」
俺がラルフの方を向くと、その張本人は急に言い訳を始めた。
「なっ、ま、待て! これはだな……。お、俺は
「それ、謝ってないよな……」
この男は前からそうだなのだ。特権意識が強く人を見下している。
「ち、違うんだ! 待て! 間違えた。確かにアキは強くなったようだ。だが、こう思わんか? 世の中というものはだな、弱い奴は俺のような
意味が分からない。こいつの性根は腐っているのか。
「俺は弱いものイジメや人を
「待て待て、人をイジメるのは良いものだぞ。憂さ晴らしには最高だ」
「そうか、ならお前を攻撃するのに
「ああぁ、あああぁああああぁ!」
俺はラルフに向け剣を振った。
「おりゃぁああああ!
ズダダダダダダダダダダーン!
「アババババァバブボォ!」
ラフルも吹っ飛ばされてグリードの隣の壁にめり込んだ。
俺の反転攻勢により、会場の熱気も最高潮となる。
「「「ウォオオオオオオオオオオオオオオ!」」」
バリバリッ! ドサッ! グチャ!
ぶっ飛んで壁にめり込んていたグリードとラルフが剥がれ落ちた。無様な声を上げて。
「ぐばふぁ! ぶばぇふぉ! い、痛ぇ! 痛ぇ!」
「あばばぁごぼぉ! こぉ、こんなはずではぁああ!」
かなりのダメージがあるのか、二人はまともに動けないようだ。
ザッ、ザッ、ザッ――
近付いて行くと、二人は俺を恐れたのか必死に命乞いを始める。
「アヒィイイイイッ! ゆ、許してくれ! アキぃ、い、いや、アキ様ぁ!」
「アバババババッ! ひぃいいっ! た、助けてぇええ! 怖いよぉおおっ!」
あれだけ俺を見下していたのに、負けそうになると泣き叫び媚びを売る二人。恥ずかしい奴らだ。
これがこいつらの本性だろう。弱い者を見下し利用し搾取する。そして強い者にはペコペコと媚びへつらう。
「お前らは俺の大切なシーラを傷つけた。
「「すみませんでしたぁああああ!」」
俺の追求に、あっさりと二人は罪を認める。ただ、罪の擦り合いを始めてしまうのだが。
「ちちちち、違うんだ。聞いてくれアキ! このラルフが悪いんだ! 俺は止めとけって言ったのによ、ラルフの奴ったら最初は反撃されると厄介なテンペストを始末しようって」
「何を言っているんだグリード! 計画はお前が持ちかけたんだろ! アキ、悪いのは全てグリードなんだ。お前たちパーティーの仲を引き裂くには、女を海に突き落として罪を被らせるのが良いってな」
お互いがお互いを裏切り罪を擦り付ける。まさに裏切り者に相応しい末路だ。
「こいつが全て悪い! ラルフ! テメェはいつもエリート気取りで気に食わねえんだよ!」
「何だとグリード! お前こそ、いつも偉そうにしているのが腹が立つんだ! 俺に罵声を浴びせるのは許せん!」
「うるせぇええええ! エリート気取りの低能!」
「黙れ! ビッグマウスの無能男が!」
「何だとゴラァアアアア!」
「黙れ、疫病神が!」
醜い争いに会場から奴らに向けヤジが飛ぶ。
ブゥゥゥゥゥゥゥゥ――
「おい、グリード! お前ら女を海に落したのか!」
「今まで嘘ばかり言ってたのかよ!」
「デマばかり流しやがって! 悪いのはお前らだろ!」
「冒険者の風上にも置けねえ奴らだ!」
「ひっこめクズ!」
そして俺を応援するコールが流れた。
「「「アキ! アキ! アキ! アキ!」」」
冒険者の皆が俺を応援している。闘技場を震わせるほどに。
その瞬間、これまでの俺へのデマや誤解は全て消え失せ、代わりにグリードとラルフの悪評が広まった。
「皆……ありがとう……」
俺は客席を見回してからグリードたちの方を向く。
いい加減、この卑怯者の顔を見ているのにも嫌気がさしてきた。もう、終わりにしたい。
まあ、自分から闘技場に詰めかけている人々に罪を暴露したのだけは良しとするか。
「そろそろ終わらせよう。この俺への数々の嫌がらせだけでは飽き足らず、シーラにまで手に掛けたのだからな。お前らの卑劣な言動には、もうウンザリだ! 王都を追放され破滅でも何でもして二度と俺に顔を見せるな!」
「アッヒィイイッ! これは夢だ! 夢に違いねえ! この俺様が負けるなんて有り得ねえんだ! アヒッ、勝ち組エリートの俺様なら、弱い者を言いなりにする権利も女をモノにする権利も有るはずなんだぁああああぁ!」
事ここに至っても、まだグリードは改心していない。
「おい、言いたいことはそれだけか!? まだ勝負は続いているんだよな?」
俺は容赦なく剣を振り下ろす。こいつらとの縁を断ち切るように。
「アッヒィイイイイイイイイッ!」
「ウヒッ! ウッヒィィィィィ!」
攻撃を放つその瞬間に、ガイナークさんが腕を上げ勝敗を宣言した。
「そこまで! グリードとラルフは戦闘不能とみなす。勝者アキ!」
ズダダダダダダダダダダーン!
最後に放った一撃は、グリードとラルフの間の地面を切り裂いていた。その両側で二人は白目をむき泡を吹いて気絶している。
俺が攻撃する前に気絶した為、ガイナークさんが止めたのだろう。
「おい……何だよそのザマは。イキった末に色々漏らして失神かよ……」
二人の絵面が汚すぎて放送禁止になりそうだ。思わず俺は顔を背けた。
「でも、止めてくれて良かったのかもしれないな。最後の一撃は凄い威力だった。当てていたら殺してしまったかも……」
もしかしたら、怒りに任せて攻撃しようとした俺を、ガイナークさんが気遣ってくれたのかもしれない。
カンカンカァァァァーン!
「「「うぉおおおおおおおおおお!」」」
闘技場に歓声が響き渡る。こうして、試合は大方の予想を覆し俺の完勝となった。
――――――――――――――――
圧倒的な力でグリードとラルフをねじ伏せたアキ。
冒険者たちからの誤解も解け信頼を取り戻す。
(元メンバーのざまぁな後日談は、もう少しあります)
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