第7話 ゴブリンロード討伐
正面には巨大な
俺は瞬時に対処法を考えながら、スキルで作っておいたボーションを用意する。
「皆、これを飲んでくれ!」
そう言って前方でゴブリンロードと対峙しているレイティアに投げた。
パシッ!
「おっ、これこれ。うぐっ、うぐっ……ぷはっ」
レイティアが一気飲みした。
「ごくっごくっ……これ甘くて美味しいわね」
「んっ……何でピーチ味なのよ。まあ、飲みやすいポーションだけど」
両側にいるアリアとシーラにも渡したが、どうやら好評のようだ。
これで各種アビリティは上がったはず。
「レイティア、ゴブリンロードを足止めしてくれ!」
「…………」
「おい、レイティア!」
「…………」
「レイティアお姉ちゃん!」
「よしきた! お姉ちゃんに任せたまえっ!」
(やり難い……もうお姉ちゃんで決定なのかコレ)
続いて残りの二人にも指示を出す。
「アリア、左側から来るゴブリンを魔法で攻撃してくれ。できればシャーマンを優先的に」
「もうっ、レイティアちゃんだけズルいわぁ」
「アリアお姉さん、お願いします」
「はぁああぁい♡」
(くっ、緊張感が……)
「シーラ、右側のを頼めるか? 同じくシャーマンを優先的に」
「分かったわよ」
「えっ……」
「何よ!?」
「な、何でもない」
(シーラが一番マトモだぁああ。ありがとうシーラ)
「大気と大地の精霊に命ず! 古の契約に基づき神雷の雨よ降り注げ!」
ホッとしたのも束の間、シーラの唱えている魔法は洞窟内で使うようなものではないことに気付く。
「ちょちょ、ちょっと待てシーラ! ここでそんな大魔法を使ったら天井が崩れて生き埋めになるぞ!」
「
ズババババババババババババーン!!
少し遅かったようだ。途中で止めようとしたようだが、シーラの放った雷魔法は右側に居た敵の半分を薙ぎ払いながら洞窟の壁や天井を破壊する。
ガラガラガラガラガラ!
「お、おい、だから大魔法は危険だって!」
「威力は抑えたし! ちょっと良いとこ見せたかったの」
シーラが拗ねた顔になった。
(くっ! 前言撤回だ。シーラが一番マトモじゃないかもしれない)
俺は、シーラが
アリアの方に目をやると、彼女は火炎魔法で的確に敵を攻撃している。
「
ゴバァアアッ! ゴバァアアッ!
「グギャアアアア! ギョエエエエ!」
炎系魔法をくらったゴブリンが断末魔の悲鳴を上げる。的確に冷徹に敵を始末するアリアの顔がちょっと怖い。
(アリアは問題無いようだな。普段はアレなのに戦闘では一番マトモかもしれないぞ。これでホブゴブリンの集団は何とかなった。後はボスをどうするかだが……)
俺は前方で戦っているレイティアの方を向いた。相変わらず攻撃は当たっていない。
「レイティア! 無駄撃ちするんじゃない! もっと引き付けるんだ!」
俺が指示を出すがレイティアの反応は無い。
「ああぁ! もうっ、直接行くとするか」
アリアとシーラの魔法で消し炭になったゴブリンを避けながら駆け出すと、レイティアの後ろに張り付くように体を寄せる。
「レイティアお姉ちゃん! 今から俺の合図で剣を振るんだ」
「えっ、あ、あの、アキ君?」
後からレイティアの腰を抱くと、彼女は照れた顔をする。普段は自分からは密着してくるのに、俺に密着されるのは恥ずかしいのだろうか。
「グギャアアアアアア! アタラン、アタランナア! バカメガァアア!」
ドスンッ! ドスンッ! ドズンッ!
ゴブリンロードは余裕の表情で歩を進める。レイティアの攻撃が当たらず勝ち誇っているのだろう。
(迫ってくるゴブリンロード怖ええええ! 間近で見ると凄い迫力だ。でも――)
俺は後ろからレイティアの耳に顔を寄せ
「いいか、レイティアお姉ちゃんの攻撃力なら一撃でボスを
「あ、ああ、ち、近いぃ。当たってるよアキ君……」
「今は我慢してくれ。ゴブリンロードを倒すのを優先しよう」
「だ、だから、硬いのが当たってるんだよ。ああぁ♡」
(硬いの? 何のことだ)
腰に下げている
「もっとだ! もっと引き付けろ」
「ああっ♡ まだかい?」
「もっともっとだ」
「あっ♡ もう……我慢が……」
「耐えてくれ。我慢だ」
「フーッ♡ フーッ♡ キミ、意外と強引だな。ううっ」
眼前にゴブリンロードが迫る。もう完全に敵の攻撃範囲内だ。
「グッギャアアアア! シネヤァアアアア!」
ズババババババ!
ゴブリンロードが巨大な
「今だ! 振り下ろせ!」
「ううっ♡
ズドドドドドドドドドドドドーン!!
「ギョエェエエエエエエエエ!」
俺の合図で放ったレイティアの
断末魔の叫びを上げながら、ゴブリンロードが肉塊へと変わる。
「よしっ! ボスを倒したぞ。よくやったレイティアお姉ちゃん」
俺が声をかけると、レイティアは信じられないといった顔で自分の手を見つめた。
「やった……やったぞ……ボクはボスを倒したんだ。あああ! 今まで全く当たらなかったのに、クリティカルヒットするなんて夢みたいだ。アキ君のおかげだよ」
「お、おい、今までどうやって討伐クエストをやってたんだ? 強いのか弱いのか分からんパーティだな……」
喜んでいたレイティアが、急に頬を染めながらジト目で俺を見る。
「アキ君……か、感謝はしているのだが、お、男の子の、よ、欲望をお尻にぶつけるのは……」
「ほら、まだ終わってないぞ。お姉ちゃん!」
「ああぁん♡ やっぱり強引だぞぉ」
レイティアを連れ皆のところに戻る。
「アキちゃん、ザコは全滅よ」
「こっちも片付いたわ」
アリアとシーラも敵を仕留めたようだ。洞窟内にいたゴブリンは一掃された。
「やったぞ! よしっ、アキ君、今夜は祝勝会だ!」
「新生
「まあ、アキが加入したお祝いもあるしね。あ、アタシはどうでも良いんだけど」
喜び勇んで三人が洞窟を出て行こうとする。
「おい、まだ仕事が残ってるぞ。魔石を回収してギルドに――って、しょうがないな。ははっ、皆年上なのに可愛いというか子供っぽいというか」
無邪気に喜ぶ彼女たちを見ていると、こっちまで嬉しくなってしまう。前のパーティーではあり得ない気持ちだ。
◆ ◇ ◆
洞窟を出てから俺はギルドへと向かう。レイティアも一緒だ。
アリアとシーラは祝勝会の準備のため、先に家に戻っている。
俺がレイティアを誘った時は、アリアが『あやしい』とごねて大変だったのだが、なんとか
「ふふっ、今夜の料理は期待しているよ」
レイティアが無邪気な笑顔を見せる。
「ああ、期待に応えられるようにするよ。あと、ありがとう……」
「ん? 何がだい」
「いや、なんでもない」
一時はどうなるかと思ったが、追放され行き場の無い俺を拾ってくれたのには感謝している。何だか気恥ずかしいのだが。
バタンッ!
しかし、ギルドに入った俺たちを待ち構えていたのは、まさかの怒声と悪意だった。
「おいゴラッ! テメェどういうことだよ!」
穏やかな気持ちだった俺は、一気に現実に引き戻された。
――――――――――――――――
ちょっと距離感バグってたりするけど優しいお姉さんたちとパーティーを組んだアキ。かつてない穏やかな気持ちで過ごしていた。
しかし――――
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