片翼のフリリューゲル ~カワイイが絶対的正義な世界で、落ちこぼれとバカにされていましたが、自分らしさを磨いたら憧れのナンバーワンにユニットを組もうと言われました~

槿 資紀

プロローグ

 愛を愛したフリリューゲルがいた。


 誰よりも美しい翼を持ち、同胞を慈しみ、人間を愛して、そんな自らを愛していた。


「ボクは、キミの愛に命をもらった。だから、キミが捨てても、ボクは」


 灰色の雨が降りしきる。


 理解も及ばぬほどに、沢山の人間が踏み潰された。沢山のフリルが薙ぎ倒された。


 その日、その時。見渡す限りの大地に立っていたのは、ただ一翼のフリルだけだった。


 そのフリルは、持ち主からもぎ取られ、邪気に塗れて灰色に濁った、されど在りし日の見事な姿を想起させるような、大きな翼のなれの果てを抱きしめた。


 眩い光が、雲間から溢れる陽光のように、あたりを照らす。そのフリルの振り絞った力が、穢れてしまった翼に注がれ、みるみる、月の涙のような純白へと浄化されていった。


「キミに見つけてもらえるように、めいいっぱい輝くよ。だから、いつかまた、ボクたちのもとにおいで」


 そっと、くちづける。その祝福によって、片翼はひとつの小さな星になり、天へと昇っていったのだった。

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