第37話 デス・アームレスリング



「突如現れた謎の仮面男ミスター・ボウ! なんとなんと、まさかのまさかの7連勝! それではお次の挑戦者はいませんか~!? カモーンヌ!」



「ボウボウ! ボウギャアアアアク!!」



「いやボウギャーク言ってるじゃねえか」



 第7エリアにボウギャーク出現情報が出たので急いで来てみたら、まさかの地下闘技場でデス・アームレスリングとかいう違法賭博に参加してやがった。

いや本当なにしてんだよ……



「はあ~あほくさ。まあなんか街を壊してるとかじゃねえし、ほっといても平気なんじゃねえか?」



「しかし、ここにいる皆さんはとても悲しんでいますの」



「悲しんでるって……」



「うおおおおおおん俺のなけなしの掛け金があああああ!!」



「どうしよう……女房のへそくりこっそりパクってきたの全部スッちまったよ……家帰れねえよ……」



「…………」



「これはあんはぴエナジーがドバドバかもしれんの」



 いや自業自得じゃねえか。ギャンブルで負けたおっさんまで救わなきゃいかんのか俺たちは。



「で、どうすんだ? 今ここでアイツをぶっ飛ばせばいいのか?」



「賭博場には賭博場のルールがあるのじゃ。のうハイドロ」



「そうですの。正々堂々と勝負を挑みましょうですの。有り金全ツッパですの!」



 シスターが違法賭博に信徒から貰った金を全ツッパすんなよ。



「というわけでホワイトよ、ちょっと変身してあやつに勝負を挑んでくるのじゃ」



「ええ……」



 __ __



「皆さんお待たせしました、デス・アームレスリング第8ラウンド! さあやってきたぜ新たなチャレンジャー、連勝中のミスター・ボウに挑むのはコイツだ!」



「ミス・サンデーだ……よろしく」



「なんとこちらも仮面で顔を隠したアームレスラー! ミス・サンデーの登場だああああ!!」



「うおおおおおおおおおお!!」



「なあ、アイツ女か?」



「わっかんねえ……胸はねえよな」



「こりゃあまたミスター・ボウの圧勝だな。もっと筋肉付けた方がいいぜチャレンジャーさんよお」



 ミスター・ボウことボウギャークを倒すため、デビル☆サンデーに変身したうえで顔バレ防止のために仮面を付けてデス・アームレスリングに参加することになった俺。いやなんで?



「このデス・アームレスリングは連戦すればするほど腕に蓄積ダメージが溜まっていきますから、中々連勝するのは難しいですの」



「ということは、8戦目のミスター・ボウはかなり消耗してるはずじゃの」



「今ならハイエナのごとく勝利することができるかもですの」



「めちゃめちゃ卑怯じゃねえか俺たち。なにが正々堂々と勝負を挑むだよ」



「勝つのはミスター・ボウか、それともチャレンジャーのミス・サンデーか!? さあ張った張った!」



「まあここはミスターの連勝だろうな」



「オレはサンデーに賭けるぜ……有り金オールインワン……ッ!!」



「拙者たちもサンデーに賭けるのじゃ」



「こっそり捕まらずに活動している信徒の方から頂いた軍資金をベットいたしますの」



「おい」



 なにこれ。ヴィラン対ヴィランの勝負なの? エイリアンvsプレデター?



「ボウ……ボウギャアアアアク!!」



「いやお前、もうちょっと素性隠せよ……」



 それにしても腕ムッキムキだなこのボウギャーク。大丈夫かな……俺勝てるかな……



「それでは両者右手を組んでください! いきますよ~……スリー、ツー、ワン、ゴー! って言ったらスタートです!」



「紛らわしいリハーサルやめろや!」



「スリーツーワンゴー!!」



「おわっ!?」



「ボーウ!!」



「試合開始です!!」



 __ __



「グギギギギ……!!」



「ボウ……!!」



「おっ結構互角に戦えておるではないか」



「その調子ですのサンデーさん! ぶちかますですの~!」



 試合が始まり、ボウギャークとの地獄の腕相撲に全力を注ぐ。

このデス・アームレスリングはお互いの腕が倒れた先に画びょうのようなニードルが設置されており、負けるとそのままニードルが手の甲に突き刺さるというなんとも地味に痛いデスゲームである。



「うおおおおおおおおおお!! サンデーストロングアーム!!」



「サンデーストロングアーム……あれがサンデーさんの必殺技なんですのね」



「いや、あれはそれっぽい名前を叫んでるだけなのじゃ」



「そうですの」



「ボウギャアアアアク!!」



「うおっ!?」



 いきなりものすごい力が腕にかかる。どうやら本気を出してきたようだ。



「出ましたミスター・ボウの互角に見せてからの猛烈な追い込み! これにはミス・サンデーも太刀打ちできないかー!?」



「くっそ……このままじゃ俺の手に風穴が……!」



「サンデー頑張るのじゃ!」



「教会の皆さんのお金がかかってるんです!」



「頼むぜサンデー! 勝ってくれええええ!!」



 そのとき、なんだかとてもあたたかい光が俺の全身を包んだ……気がした……これがはぴねすエナジーのパワーってやつか?



「ち、力がみなぎってくるぜ……!! うおおおおおお!!」



「ボ、ボウ!?」



「おおーっとここでミス・サンデーが一気に盛り返す! これはまさかの展開だ~!!」



「みんな! 俺に力を分けてくれええええええ!」



「頑張るのじゃサンデー!!」



「頑張ってくださいですの!!」



「いっけえええええええええええ!!」



「サンデー! がんばえ~!!」



「うおおおおおおおおおおお!!!!」



「ボ、ボウギャアアアアアク!!」



 みんなの応援を力に……!!



「おらあっ!!」



「ボッ!!」



 グサッっとボウギャークの右手がニードルにぶっ刺さる。



「決まったあああああ!! 勝者、ミス・サンデー!! 遂にミスター・ボウを破りました!!」



「よっしゃああああああああ!!!!」



「正義は必ず勝つのじゃ!!」



「やりましたサンデーさん! オッズ100倍ですの!!」



 ボウギャークは負けたショックかニードルで腕が終わってるのか分からないが、さっきから反応が無い。

あとでこっそり連れ出してプリデビ☆はっぴねす! しておこう。



「そ、そんな……絶対勝つと思って全財産乗っけたのに……」



「む、娘のへそくりまで失っちまった……もう家に帰れねえよ……」



「アホじゃの」



「全財産ブッパとかありえんですの」



「お前らもやってたじゃねえか」



「勝った方が正義ですの」



 一部あんはぴエナジーが爆増してるやつがいるみたいだけど、まあアレは自業自得だから放っておこう。

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