第27話 ウォールマート終了のお知らせ



「あ、あの……シャーチクさん?」



「胸がなくなりました」



「いやその……」



「胸が、なくなりました」



「はい」



 やはりこの店から離れると効果が発動する仕組みのようだ。



「オ、オキャ、キャキャ、クサ、ママママ」



 ドゴォ!!



「店長を呼んでいただけますか?」



「うわあ……」



 壊れかけのロボット店員にも容赦がないシャーチクさん(激おこ絶壁モード)。



「お、おいどうすんだよ。さすがにロボットの修理代までは払えねえぞ?」



「大丈夫ルナ。おそらく……」



「オ、キャ、ク、キャクク、キャサ、マ、マ、ママママママママ」



 ゴゴゴゴゴ……



「うわっなんだ!?」



「お店が変形してるルナ!!」



「…………」



 いきなり店の天井が割れ、崩壊……というか変形し始めたので、慌てて外に出る。



 ゴゴゴゴゴゴ……ジャキイイイイン!!



「ボウギャーーーーーク!!」



「お店がボウギャークになっちゃったルナ!!」



「マジかよ!!」



 周りを見渡してもビネーガは出てこない。やはり牧場とやらに更迭された話は本当だったのだろうか。



「そこのあなたたち、よくも私の店をぶっ壊してくれましたねえ」



「だ、誰だ!」



「私は第8エリア管理局責任者、ピックルスです。まったく、全エリア絶壁化計画が始まったばかりだというのに……」



 ボウギャークの背後でふんぞり返る男が残念そうに語り出す。



「あれがビネーガの上司か」



「貧乳至上主義のピックルスルナ」



 巨乳好きだの貧乳好きだの、第8エリアの管理人はロクなのが居ねえな。



「って、そこのあなた」



「ん、俺か?」



「ええそうです。あなた……」



 やべ、そういや変身中だったわ俺。さすがにプリティ☆デビルだってバレちまったか……



「すばらしい胸ですねえ! なだらかすぎてスキーができそうです!」



「できるかボケ! 労基に訴えるぞ!」



「どちらかというとアイツが労基の責任者ルナ」



 王様も趣味がアレだし、貴族はコレか。終わってんなこの国。早くどうにかしないと……



「ピックルス! これからお前を倒して、貧乳にされてしまった女の子たちを元に戻すぜ!!」



「ふん、そんなことは許しませんよ! ノーウォールノーガール!」



「いやなんだよノーウォールって。クソ失礼だなそれ」



「安心してください、アナタはウォールガールですから」



 よし、殴ろう。



「さあボウギャークよ! 絶壁ランジェリーを国中にばらまきなさい!」



「ボウギャーク!!!!」



 ゴゴゴゴゴゴ……と立ち上がるボウギャーク。ま、まずい。そんなことになったらこの国からおっぱいがなくなってしまう! いやなくなりはしないけど。



「…………」



「あ、シャーチクさん……」



「ほう、アナタも絶壁矯正を受けたのですね。すばらしい平面の」



「……制裁」



 ビビビビビビビ!!



「ボウギャッ」



 …………。



 シャーチクさんの指先から電撃のようなビームが放たれ、ボウギャークは動かなくなった。



「ホワイトさん?」



「え? あっはい。プリデビ☆はっぴねす……」



 パアアアアアアア……と周囲を温かい光が包み込み、ボウギャークは元の廃屋に戻ってしまった。そして……



「あ、シャーチクさんのおっぱいも元に戻ってるルナ」



「マジ? って、シャーチクさん! まえまえ! 隠して隠して!」



 シャーチクさんが身に着けていた下着も光となって消えてしまったのだ。つまり……丸出しである。



「……アナタが店長ですか?」



「へ? いや私はってうわあああああ!! おっぱいがあああああ!!」



 バタッ。



 シャーチクさんの巨乳を目の当たりにしたピックルスは、金曜ロー〇ショーとかでよく目をやられてる某大佐のような反応をして気絶した。

いや風呂覗いてたときのビネーガと同じやん。



「ほ、ほらシャーチクさん、悪は滅びたルナ。とりあえず服で隠すルナ」



「お気に入りだったのに……」



「デザインは気に入ってたルナね」



「こ、今度またちゃんとしたお店行きましょうよ。俺金出しますから」



 てかさっき俺が払った金どこいったんだよ。



「……はい」



「えっこれ、ピックルスの……」



「これで被害者の方々を救ってあげてください」



 気絶したピックルスの財布を漁り、中から金を抜いて渡してくるシャーチクさん。

なんかこれ、あきらか被害額よりたくさんありそうな気もするけど……まいっか。



「それではお仕事完了です。お先に失礼します」



 パアアアアアアア……



「シャーチクさん、帰っちゃったルナ」



「今度飯でもおごってやるか」



 意外と面白いなあの人。人かどうか知らんけど。



「ぐ……ゆ、許しませんよあの女狐……」



 ボンッ!!



「うわっなんだこの煙!」



「目に染みるルナ~!」



 …………。



「チッ! 逃げやがったぜあの野郎。まあ金は全部いただいたがな」



 でもなんかシャーチクさん恨んでたし、そのうちまたちょっかいかけてきそうだな。



「おーい、サンデー!」



「ルナちゃ~ん! ボウギャークどこ~?」



「あ、サタデーとチューズデールナ」



「ボウギャークならもう倒したぜ……ブチ切れたシャーチクさんが」



「すまんの。ボウギャークが出たことは分かっておったんじゃが、お遊戯会から抜け出せんで」



「サタンちゃん、教会でさんびか歌うときになんか苦しんでたね」



「ちと相性がの……」



 いや成仏しなくてよかったよほんと。

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