第22話 ボウギャークと化したビネーガ



「くそっ! せっかく新しい制服貰ってウキウキだったのによ」



「おぬし、そこまでガールズソウルが……」



「着実に心まで女子になってきてるルナ」



「なんでだよ、おニューのお洋服は嬉しいだろ」



 あれ? 俺ニートなのに……母さんにしま〇らで買ってきてもらった服とかばっか来てたのに……



「ま、まあそこは今は考えないでおこう。ほらサタン! ボウギャーク探しに行くぞ!」



「フレイムもいく~!」



「いや遠足じゃないんだから……」



「フレイムは私とお店の準備よ」



「え~……まあそれもいたしかたなしか~」



「おい、フレイムにサタンの変な喋り方がうつってきてるぞ」



「気品溢れる魔王言葉じゃから良いのじゃ」



 気品ねえ……



「みんな、気を付けてね」



「ウェスタさん……!」



「あ、あと帰りにパン屋さんでバゲット買ってきてくれる?」



「ウェスタさん……?」



 __ __



「それで、ボウギャークはどこにいるんだ?」



「出現位置の特定機能はまだ無いルナ」



「そこは自力で探さないとって……ん、どうしたんだサタン?」



「いやな、別に位置特定はせんでも問題ないと思うてな」



「サタン様、それはどういう意味ルナ?」



「ほれ」



「ん? ……あ」



 サタンが指さした方を見上げると、そこには巨大な……



「えっ……あれって……ビネーガ!?」



「ビネーガじゃのう」



「おっきいルナ」



 ビネーガお前……まじめにやってきたからデカくなっちゃったんか? いや女風呂覗いてんだから真面目にはやってねえか。



「ボウギャーーーク!!!!」



「ああっ! めちゃめちゃ街を破壊してるルナ!」



「とりあえずヤツを止めるぞ!」



「いくのじゃ!」



「「プリデビ☆トランスフォーム!!」」



 キラキラキラキラ♪テッテッテレレレー♪

 


「そろそろ早送りでも良いんじゃないかルナ?」



 いや俺は毎回フルでやってほしい派だから。



 パアアアアアアア……!!



「ジメジメ人生に一筋の光! 毎日が日曜日! デビル☆サンデー!」



「地獄の沙汰もキラキラ次第! 無敵の土曜日! デビル☆サタデー!」



「「美少女ヒーロー! プリティ☆デビル!」」



 さて、それじゃあ早速……



「必殺技発動! 『サンデーの、のーじょぶ☆制裁ストライク』!!」



「なっ!? おぬし、こんな初っ端から必殺技を!?」



 ふっ、前回の戦闘で分かっちゃったんだよね……最初からこれであの人を召還すれば勝ち確定ってことに。



 パアアアアア……



「…………」



「あ、シャーチクさんこんにちは。早速なんですけど、あそこで暴れてる無職のボウギャークが」



「いや、早出勤務は申請してませんので無理です。お疲れ様でした」



 パアアアアア……



「あれ?」



 労働の神シャーチクは、機嫌悪そうな態度で消えていった。



「……誰じゃ今の?」



「シャーチクさん。俺の必殺技」



「よく分からんが、タイミング良く発動しないとダメみたいじゃの」



「うん」



 世の中そんなに甘くはなかったか……社会って大変なんだな。



「ボウギャーーーク!!」



「おっと」



 バゴオオオオン!!



「あああああローン30年のマイホームがあああ!!!!」



「あ、やっべ」



 ボウギャークの巨大右ラリアットを避けたら、後ろにあった罪のない一般人の30年ローンマイホームが崩壊してしまった。

すまん、あいつ倒したら勝手に修復するからちょっと我慢してくれ。



「かっかっか! そんな召還した奴の気分次第な技より拙者の必殺技をぶっ放してやるのじゃ! くらえ!『サタデーの、ろーりんぐ☆更生ビーム』!!」



 …………。



『充填が終了していません。しばらくお待ちください』



「…………」



「どっちもどっちじゃねえか」



「くっ! しくったのじゃ!」



「あ、ちなみに必殺技は1日1回しか使えないルナ。ふたりともさっきので発動判定になってるルナ」



「「えっ!?」」



 プリティ☆デビル、大ピンチ!!



 __ __



「くらえっ! サンデーの強すぎストレート!」



 ※ただのパンチです。



「いくのじゃっ! サタデーの消滅確定ミドル!」



 ※ただのキックです。



「ボウギャーク!!」



「だめだ、俺たちの必殺技が全然効いてないぜ」



「全くじゃな、こやつかなりの強敵じゃぞ」



「いや、二人とも必殺技を自称したって意味ないルナ」



 必殺技が使えなくなっちゃった結果、決定打がなくてだらだらと打撃戦を続けている俺らwithボウギャーク。



「チクショウ! 最初の植木鉢やサイダー瓶のやつは普通に倒せたのに!」



「敵もパワーアップしてきてるってことじゃな」



 ニチアサのお約束展開が今になって牙を剥いてきたぜ……



「ボウギャーーーク!!」



「しかし、何故ビネーガ自身がボウギャークになってしまったんじゃ」



「分からねえけど、ヤツも後がないってことだな……」



 おそらく、ビネーガの上司のピックルスとかいうやつにやられたんだろう。ソースはニチアサ。

自分の部下をこんな状態にしちまうなんて、頭いかれてやがるぜ。



「そろそろ街の崩壊も、俺らの体力もヤバくなってきたぞ、どうするサタデー?」



「ふむ、相手も多少疲労してきておるようじゃが……」



 なにか、もうちょい強力な攻撃を加えられたら……



「あ、いたいた! おーいみんなー!!」



「……ん? って、えっ!? フレイム!?」



「危ないから店に戻るんじゃ!」



「えっとねー、ウェスタお姉ちゃんからの伝言でー」



「ど、どうしたルナ? そっちでも何かあったルナ?」



「パン屋さんでバゲットと一緒に食パンも買ってきてだってー」



 …………。



「そんなこと言うために妹を戦地に向かわせんなよ!!」

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