第13話 サイダー瓶の倒し方



「ボウギャーク!!」



「ああッ!! 我の城がああああ!!」



「いやウチは湯浴み屋だけどな」



「父ちゃんは黙ってて!」



 巨大化したサイダー瓶のボウギャークにより、ヘルアンドレイブン、崩壊。



「ど、どうすれば……我は無力だ……」



 キラキラキラキラ♪テッテッテレレレー♪



「な、なんだこの音は!? 新手か!?」



「チッ、出たな悪魔め……」



 パアアアアアア……!



「ジメジメ人生に一筋の光! 毎日が日曜日! デビル☆サンデー!」



「地獄の沙汰もキラキラ次第! 無敵の土曜日! デビル☆サタデー!」



「「美少女ヒーロー! プリティ☆デビル!」」



「なっ!? なんだってえええ!?」



 いやダフマが一番驚くんかい。というか……



「俺の口上だっせえええええ!! なんだよ毎日が日曜日って!? 煽ってんのかコノヤロー!!」



「魔族の王である拙者が……キラキラ……? せ、拙者のイメージが……」



「おいルナッ……って、今日はいないんだった。チクショウ! 絶対後で文句言ってやる!」



 あと俺のヒーローネームもおかしいだろ。少年誌かよ。なるほどSUNDAYじゃねーの。



「ま、まあ今はグチグチ言っても仕方ないのじゃ。おい、サンデー!」



「ったく、しょうがねえなあ! とりあえず目の前のコイツを倒すことに集中するか!」



「ボウギャーク!!」



 今回のボウギャークは、ヘルアンドレイブンにあったアップルサイダーの瓶と融合している。

つまり巨大なガラス瓶だ。もちろん中身入り。



「おらっくらえっ! サンデー右フック!」



 ゴン。



「~~!!」



「うわ、拳痛そう」



 かってえ~……!!



「なーにやっとんのじゃおぬしは。よいか見ておれよ……死に晒せっ! サタデーローキック!!」



 ゴン。



「お、あ、足が……」



 アホかよ。



「ギャーッハッハッハ! お前らのような絶壁ヒーローに私の鉄壁ボウギャークが負ける訳がないだろう!」



「「あ゛?」」



「いや、その……と、とにかく! やってしまえボウギャーク!」



「ボウギャーク!」



 ドッバアアア!!



「うわっコイツ中身を飛ばして来やがった!」



「シュワシュワなのじゃ!」



 サイダー水を高圧で発射してくる、なかなか危険な技だ。



「あのガラス瓶をどうにかしねえとダメだな……おいダフマ! なにか良い方法ねえか?」



「へ、へぇっ!? なんで我の名前を……?」



「いやなんでって、俺だよ俺」



「へ……もしかして、ホワイトさん?」



「そうだよ」



「で、でも、さっきデビル☆サンデーって」



「そういうお約束なんだよ! ほらよく見ろ! 顔つきとか一緒だろ!?」



「へっあっちょ……! 顔近い! 顔近いです!」



 もうそのくだり良いから。



「そういえば子供のころ、ホットアップルサイダーを作ろうとして瓶を火にかけたら割ってしまったことがあって……って、なに話してるんでしょう。今の話は忘れてください」



「……いや、それだわ。ナイス情報だぜダフマ!」



「はぅっ……!! こ、光栄の極みぃ……!!」



 ガシガシとダフマの頭を撫でまわしつつ、作戦を考える。



「中のソーダを突沸させればワンチャン……おいダフマ、なにか液体を急激に熱湯にする方法とか知らねえか? 火とか熱の魔法とかさ」



「それなら、あれが使えるかも……父ちゃん!」



「おう、受け取れ!」



 ぱすっと、ミソクから何かを受け取るダフマ。これは……赤い、宝石?



「“灼熱の魔石”です。これ1つで我の店の1日分の湯を沸かすことができます」



「コイツをあの瓶の中にブチ込めば……よし!」



「おーいまだか! なんで拙者だけ戦っとんのじゃ!」



「今行くからもうちょい粘れ! ……ありがとな、ダフマ。お前の店は俺が守る」



「は、はいぃ……!!」



 みとけよボウギャーク。内側から破壊してやるぜ。



 __ __



「待たせたな」



「まったく、デートだったら好感度ダダ下がりじゃぞおぬし」



 今はデートじゃなくてバトルだけどな。



「で、どうするんじゃ?」



「コイツをあの瓶の中にシュートするぜ」



「灼熱の魔石か、なるほどのう……あとは、どうやってあの高さまで行くか、じゃの」



 巨大化したサイダー瓶のボウギャークはかなり高い位置に飲み口が付いている。あそこまでひとっ飛びとはさすがにいかなそうだ。



「おや、中二病ガールとのイチャイチャはもう良いのかヒーローよ」



「ああ、もう大丈夫だ。悪いね、アンタより女にモテちゃって」



「くっ! 貧乳女のクセにっ……! 私は“なんか同性にモテる顔の良い中性的な女”が大嫌いなんだ!」



 いや知らねえよ。でもちょっと分かる。



「よし、じゃあ俺がサタデーを担いで飛び上がるから、その後に俺を足場にして2段階ジャンプ決めて、そのままダンクシュート決めてくれ」



「オッケーなのじゃ」



「ボウギャーク!!!!」



 ボウギャークがまたサイダーを打ち出す態勢に入る。



「今じゃ!」



「行くぜっ!!」



 サタデーを担いでババっと飛び上がる。



「軽いなお前。もっとメシ食った方が良いぞ」



「いやこの幼女ボディじゃから。元々のムキムキ巨体だったらおぬし持ち上がらんぞ」



 それはそう。



「フン、飛んでしまったら避けられまい! 狙えボウギャーク!」



「ボウギャーク!!」



 瓶の角度を調整してこちらを狙ってくるボウギャーク。むしろこっちが狙いやすくなったぜ。



「よしっ! いけっサタデー!」



「飛ぶのじゃ! よっこら……しょっ!!」



「ぐえっ!!」



 あ、あぶねえ、肩外れるかと思った。



「ボ、ボウギャーク!?」



 俺とサタデー、どちらを狙うか迷っているみたいだ。



「闘魂一球! これでもくらえー!! なのじゃ!!」



 ぽちゃんっ



「ボ、ボウ……?」



 グツ……グツ……



「ど、どうしたのだボウギャーク?」



 グツグツ……ジュワジュワ……!!



「ボ、ボウギャーク!!!!」



 ジュワワワワワワワワ!!!!



「ボッ」



 バリイイイイン!!



「な、なにいいいいい!?」



「作戦成功! やったぜ! うおっあぶねえ!?」



 飛び散るアツアツアップルサイダーが危険すぎる。



「ボ、ボウ、ギャーク……」



 破裂してガラスの山となったボウギャークにサタデーがゆっくり近づいていく。



「絶壁の空気抵抗を舐めるでないぞ。プリデビ☆はっぴねす!」



 パアアアアアアア……



「コウフーク……」



 ゴトッ。



「拙者はアツアツより、キンキンに冷えたアップルサイダーの方が好きじゃの」



「それはそう」



 ボウギャークが光になり、元のアップルサイダーの瓶に戻る。



「ああっ謎の光に包まれて我の店が修復されていく……ありがとうプリティ☆デビル……」



 敵を倒すと周りの建物も元通りになった。理屈じゃねえんだ、お約束ってやつはな。



「く、くそっ!!」



「……あっこら! 待つのじゃビネーガ!!」



「逃がすか犯罪者!!」



「つ、次に会ったときは覚えてろ~!!」



 ボンっ!!



「うわっなんだこの煙! ゴホッゲホッ」



「逃げられてしまったのじゃ……今度会ったら問答無用でデスベアーさんのエサなのじゃ」



「やっぱ人間食うのかよアイツ」



 何はともあれ、これにて覗き魔事件は解決! はぴねすエナジーも増えてめでたしめでたし。



「あ、あの、ホワ、じゃなかった、サンデーさん……」



「おうダフマ。お前のお陰でボウギャークを倒せたぜ。なにかお礼をしねえとな……」



「あっ、それなら、そのっ……我と一緒にお風呂入りませんか!?」



「ん? 別に良いけど。そんなんでいいのか?」



「それが良いのです!」



 ちなみにこの後二人で風呂に入ろうとしたら、ダフマが俺の裸を見て鼻血出してぶっ倒れた。なんだコイツ。

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