第6話 俺様御曹司様【2】

「今まで一切女性を寄せつけずに、いつも冷たすぎるくらいだったのが、お前は誰だ?ってくらいにややこしい」

「ややこしいって失礼だな」

「暁が強引に女性に迫られたら切れるだろう?なのに、成宮さんに迫ってる。お前はなんでもスマートにこなすと思っていたが、恋愛に関しては不器用すぎて……」

「こんなに誰かを必死になって追いかけるのも、誰かを想ってドキドキするのも、俺のものにしたいと欲するのも初めてだ」


 芹を見つめ真剣な面持ちで告白する。二次元でしかこんな場面に遭遇したことのない芹は、顔を真っ赤にして戸惑う。


「き、き、急にそんなことを言われても……」


 芹は視線をいそがしなく動かし落ち着かない。駿は、さすがに暁の真剣な告白に口出しはできなくなった。常に完璧だが女性には冷たい暁の姿しか知らない駿は、今の人間らしさのある暁に嬉しさも感じてもいるのだ。


 新城堂という巨大な組織を背負う暁に、ポンポンと言いたいことを言える芹は、ベストパートナーだと言える。


 まあ今後の暁次第なのだが……。


 車は、芹も馴染みの新城堂のオフィスビルの前を通過した。そして、すぐ近くのタワーマンションの地下に入っていく。


 新城堂のオフィスビルはオシャレな街中に建っていて、交通の便が良い。その近くに建つこのマンションは、ちょっとやそっとの金持ちじゃ住めない超高級タワーマンションとして有名だ。


 芹の中では、廉くんと同じ二次元でしかありえないセレブな世界。ポカンとして、開いた口がふさがらない……。


「着きました」


 普段なら駿が降りてドアを開けてくれるのを待つ暁が、一番にドアを開け自分でサッと降りたと思ったら、芹の座っている方に回り外からドアを開けた。


 あまりの素早い身のこなしに、駿も芹も驚き固まってしまう。


「あ、あ、暁、暁が自分でドアを……」


 幼稚園児が初めてのお遣いができたくらいの驚きようだ。


「芹」と呼び手を差し伸べる。


「えっと……」


 駿の言葉と暁の言動に驚き戸惑うまま、思わず手を出していた。そのまま自然にエスコートされて車を降りたと同時に腰を抱かれる。駿も急いで車を降りようする。


「駿お疲れ様。今日はもう帰ってくれていい。明日も休めるか?」

「え゛⁈俺も一緒に……」

「いや、いい」

「……」

「で?明日は休めるのか?」


 駿は慌ててタブレットを取り出して確認する。


「明日は急ぎの案件は特に……。新しいゲームソフトの確認くらいです」

「ああ。それなら大丈夫だ。やっておく」


 新城堂のゲームソフトは、芹の勤める子会社の『シンジョーテック』がメインで開発しているが、他社とのコラボ商品もある。


 『シンジョーテック』の製品に関しては、暁のところに上がってくる段階で完璧に仕上がっているが、コラボ商品に関しては社長自ら確認をしているのだ。


 それこそが暁の秘密なのだが……。


「わかりました。その他の細かい仕事に関しては、こちらで調整しておきます」

「頼む。芹行こう」


 拒否権は全くないまま歩き出した。駐車場からエレベーターホールに入る時でさえカードをかざし、さらにはエレベーターを呼ぶのにカードをかざし、エレベーターに乗り込みカードを差し込んでいる。


 セキュリティも完璧で、行き先の階のボタンさえなくエレベーターは動きだした。





 

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