第2話 出会い【1】
『新城堂/SHINJYODO』の社長に就任して一年。
祖父が子供達の喜ぶ顔が見たいと始めた『ゲーム機の新城』は、年々右肩上がりで業績を伸ばし、父である前社長の代に『新城堂/SHINJYODO』と社名を変更した。子供から大人までが楽しむゲーム機の会社として、世界中で親しまれ人々を魅了している。
三代目として跡を継いだ
更には180cmを超える長身に甘いマスクで経営者としてだけではなく、イケメン御曹司としても女性達から騒がれている。
業績が上がれば上がるほど注目度が増し、暁の機嫌は業績と反比例して下がっていく。
日々注目され一瞬でも隙を見せようものなら女性が集まってくる。ストレスが溜まりイライラが募る日々。常に近寄れないオーラを醸し出している。
もちろん右腕である社長秘書も、秘書課のメンバーも男性と徹底している。とにかく甲高い声で騒がれるのが嫌なのだ。本当は、自分と関わる人間はすべて男性にしたいと思うほど、女性には今まで嫌な印象しかない。
外出先から、オフィスビルのエントランスに戻って来た。エントランスに常駐する警備員が後部座席のドアを外から開け、頭を下げる。
社長秘書の
暁が降りたのを見届け、駿が暁の半歩前を歩きだす。社長の前を歩くのは、暁に接触しようとする者を阻止するためだ。秘書なのだがSPの能力をも兼ね備えている。
駿の父親は、暁の父親の有能な秘書だった。息子である駿も、幼い頃から暁の右腕になるべく一緒に育てられた。更には暁を守れるように柔道、剣道、空手を習い有段者なのだ。ちなみに暁も自身の身を守れるようにと一緒に通っていた。暁自身も有段者という最強のふたりだ。
駿はがたいがいいため少し
いつも冷静に対応する駿は、暁にとってなくてはならない存在なのだ。
ビルのエントランスに暁が入った瞬間、その場の空気が変わるのはいつものことだ。大概の者はすっと端に避けて頭を下げる。
お近づきになりたいと思っている女性の下心は、駿も敏感に感じ取り暁が切れないように事前に対処する。
暁が通ると緊張感が増すエントランスで、この日は予想だにできない出来事がふたりの数メートル前で起こった。
『ビタッ』と痛そうな音を響かせ、漫画かと突っ込みたくなるほど盛大に女性が転けたのだ。
『シーン』と辺りは静まり返りなんとも言えない空気が流れる。
暁の機嫌が一瞬にして急降下しているのが、駿には手に取るように伝わった。
『ピキッ』と音が聞こえそうなほど眉間にシワを寄せている……。
女性はわざと暁の前で転けて気を引こうとしたのだろうか?判断できない。ただ、駿の目線の先には女性のつけていただろう眼鏡が飛んできて落ちている。
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