悪役令嬢の父親に転生したので、全力で溺愛してみたら

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 どうやら俺は悪役令嬢の父親に転生してしまったらしい。

 それが分かったのは、20歳を超えてからだった。

 よく考えてみると、割と遅い方だと思うけど、色々あって病弱な俺は満足に外に出られなかったし、人と交流ができなかったから仕方がない。


 両親がいい人たちだったから、体に聞く薬とか名医を探してくれたので、すぐに死ぬことはなかった。


 その後、ちょっと状態が改善した俺は、遅まきながら様々な人と交流を持ち、色々な世界を知る事になった。

 そこで、その世界が前世でやっていた乙女ゲームの世界だと発覚したのだ。


 でも、最初はただのモブだと思ってたんだよな。


 それがまさかのまさか。

 悪役令嬢の父親になってしまうとは。


 嫁ができて。そんでもにょもにょがあって、そんで生まれた娘に万歳してたら、嫁がつけた名前にびっくり。


 珍しい名前だったからまさかと思っていたら、悪役令嬢しか持っていない特別な力が秘められている事も分かって。


 まじかってなったよ。


 だが、まあそうなってしまったのはしゃーない。


 悪役令嬢の父親になるってわかってたら、婚活しなかただろうし、嫁ともくっつかなかっただろうが。


 色々いまさら言っても遅いしね!


 というわけで、俺は悪役令嬢が悪役令嬢にならないように考える事にした。


 っていっても、特別な事をする必要はなさそうなんだよな。


 普通に溺愛して、普通に成長を見守っていれば、悪役なんかにはならないだろう。


 原作の悪役令嬢は、色々あって家の人間とか屋敷の人間がひどかったから、悪役になってしまっただけだし。


 ん?

 色々で省略しすぎ?

 人には色々と言いたくない事があるってもんよ。


 妻が病気で他界するとか、それを気にして鬱になった原作の俺が冷たくなるとか、わざわざ説明したくないじゃん!


 考えたくもないよ!


 ちなみに妻の件は、死ぬ気で特効薬探して、即調合士に調合させたがな!


 ごほん。


 まあ、そんなわけなので、俺はただ娘をかわいがることにしたのだ!


 全力で!


 お誕生日には豪華なプレゼントをたくさん!


「ほうら、この部屋の端から端まで、お前のプレゼントを用意したぞ!」


 もちろん無駄遣いはしたくないので、こっそりやったアルバイト的なもので費用は賄ったぞ!


 んで。


 習い事には俺が直々に見定めたその道のプロ&人間性がばっちりのやつをつけた!


「剣聖! ーは無理だったから、そのお弟子さんを呼んでおいた! あと大魔法使い! ーも無理だったから、そのお弟子さんを呼んでおいた!」


 それに加えて!


 交友関係もびしっと調査! お友達になる子たちが変な子じゃないかしっかり調べて置いたぜ!


「お友達たくさん作って健やかに育つんだ! 友達がいると毎日が楽しいぞ!」


 そのおかげでわが娘は悪役令嬢にならずに済んだみたいだが……。


「もう!パパなんて知らない!私がやるまえに、何でもかんでもやっちゃうんだから!」


 過保護&溺愛のせいで一周して嫌われてしまったよ。


 うおおおおおおん!


 俺の心にダメージ9999!


 クリティカルヒットだようおおおおおん!






 今は仲直りのために全力で計画を練り練りしている最中だ。


 妻には呆れられているし、「こうなるのは分かっていましたけどね」とため息をつかれてしまったが、モノ申したい。


 俺の気持ちを分かってよねぇ!


 だって、自分の血を分けた娘じゃん!?


 可愛くないわけないじゃん!?


 せっかく生まれてきてくれたんだから、ダダ甘に甘やかしたくなるじゃん!?


「娘よ!俺と仲直りしておーくーれー」


 仲直りのプレゼントを以て、部屋のドアをどんどん叩いてみるけど、返事ないなあ。


「パパは出入り禁止!」と書かれた部屋のプレートが、頼りなく揺れるのみだ。


 はぁ、先は長くなりそうだなぁ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

悪役令嬢の父親に転生したので、全力で溺愛してみたら 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ