五十六話 【結婚?】

 アームダレスに到着した俺達は宿で一泊し、報告と報酬の受け取りにガル支部へ向かっていた。


「あら〜……、ケンジさんじゃないですか〜」

 ガル支部で出迎えてくれたのはホランさん。

「お久しぶりです。 今日は依頼の報告と報酬の受け取りに来ました」

「聞いてるわよ〜、大活躍だったみたいじゃない〜」

「そんな事は無いです。 皆んなの協力のおかげです」

 ほんわかモチモチのホランさんに報告をし、報酬をもらう。


「え!? こんなに!?」

 聞いていた報酬よりも多い。 多すぎる!

「そうよ〜、なんたってこの国のお姫様を助け出したんだもの〜」

 それにしては多すぎる気がするんだけど……。

 最初に聞いていた報酬は五百万ジル。

 そして受け取った金額は一千万ジル。

 倍額の報酬だ。


「本当に良いんですかね?」

「もちろんよ〜」

「それではありがたく頂きます」

 こんな大金を持ち歩くのは怖いな。


「その大金を持ち歩くのは大変でしょう〜……、ガル支部に預けておけば各地のガル支部で受け取る事が出来るわよ〜」

 それは助かる!

「それじゃ、百万ジルだけ受け取ります」

「わかったわ〜、それじゃ、残りは預かっておくわね〜」

「宜しくお願いします」

 無事に報告も出来たし、思っていた以上の報酬も受け取れた。


「ケンジさんが帰って来たんですかー! わああ!!」

 二階から階段を転げ落ちて来る音が聞こえる。


「いたた……」

「大丈夫か?」

 派手に転げ落ちて来たのはアームダレスの守護盾ガルガードのラカン君だ。


「ケンジさん! 聞きましたよ! 凄い活躍だったって!!」

 ラカン君は興奮気味に尻尾を振って話して来る。

「まあまあ、落ち着いて」


 捲し立てる様に聞いてくるラカン君に、ホランさんがにこやかに楽器を取り出すと鳴らす。

「うわっ! ホラン! その音やめてーー!」

「では少し落ち着きましょうね〜」

 ホランさんに止められてラカン君の耳と尻尾が垂れて大人しくなった。


「そうそうケンジさん〜、お城から招待状が届いていますよ〜」

「お城から?」

 ライアさんの事も気になるから一度行ってみるか。

「わかりました。 お城に行ってみます」

「なら僕がまた案内しますよ!」

 パタパタと尻尾を振っているラカン君の尻尾が気になっているルルア。


「いえ、あなたは〜、依頼を受けているでしょう〜、依頼をちゃんとこなしましょうね〜」

 ホランさんに楽器を見せられると、直ぐに支部を飛び出して行った。

 ホランさんから招待状を受け取り城を目指す。


 城の入口で兵士に止められるも、招待状を見せると直ぐに中へ通される。


 謁見の間に通されると、アームダレスの王様【キングダレス】様と隣にライアさんが綺麗な格好をして立っている。


「待っていたぞ。 良くぞ我が娘を助け出してくれた。 礼を言おう」

「いえ、とんでもございません」

「うむ、そこでじゃ、どうやら娘がケンジの事を気に入ったようでな、是非結婚をしたいと申しておる」

「え!? 結婚!?」

 どう言う事?

「ケンジはワシの修行を受け魔闘気を物にした。 そして見事大会を優勝し娘を救った。 ケンジなら娘を任せられるがどうだ?」

 いきなりそんな事を言われても……。


 ライアは王様の隣で頬を赤らめている。

 そして後ろからは殺気を感じる。


「大変嬉しく思いますが、私はまだまだ弱輩者。 ガルとしても未熟者ですので、自分を鍛える旅をしたいと思っております」

「……ふ……ふふ……ふわーっはっはっはっ!!」

 な、なんだ突然笑い出したけど、何か失礼な事をしたか?


「良い! 良いぞ! もしワシの問いを素直に受けてたら半殺しにして追い出しておったところだ。 娘の婿に相応しい答え! さすが娘が見込んだ男よな!」

 そ、そうか?


「ケンジの話しはわかった。 世界を回ってしっかりと修行してくると良いだろう。 修行が終わった時はワシと本気の勝負をし、ワシに勝てば娘の婿として迎え入れようぞ」

 どうやら今回の結婚は回避出来たようだ。


「お父様! せっかく結婚式の用意を急いでしましたのに!」

「無茶を言うな。 ケンジの気持ちも考え無いといかん。 それにケンジがワシを倒す所を見たいとは思わんか?」

「それは……、見たいですわ!!」

「だろう。 ……ケンジ、修行に出る前にこのアームダレス王国を楽しんで行くと良い」

「はい! ありがとうございます!」


 ライアさんの無事も確認出来たし、王様からアームダレス王国を楽しんで行けと許しをもらったから、少しこの国を楽しんで行こう。

 ジルならある。


 ガル支部へ戻り、ホランさんに王様からアームダレスを楽しんで行けと許しが出たので、何処か良い場所が無いか聞いてみる。


「……そうねぇ〜……、北のホルデ村なんてどうかしら〜?」

「ホルデ村ですか?」

「そうよ〜、ケンジさん達も長い旅でお疲れでしょう〜、ホルデ村には温泉があるから疲れを癒すには丁度良いわよ〜」

「「温泉!!」」

 温泉の言葉にエイルとルルアが反応した。


「ケンジ行きましょう!」

「ケンジさん! 私も行きたいです!」


 二人に袖をぐいぐい引かれながらお願いされる。

 温泉か……、この世界でも温泉に入れるなんてな……。


「よし、行こう!」

「「やったあーー!!」」

 次に向かう予定が決まり、温泉のあるホルデ村に向かう事になった。

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