十四話 【騎士団】
ミランさんに頼まれ西地区の兵舎にいる【ホンガン】さんへ手紙を渡しに向かっているが……。
「王都って広いな……」
「それはそうですよ。 この王都の中だけで獣車が各地区を走っているんですから」
獣車が綺麗に整地された石畳をあっちへこっちへ走っているのを見かける。
北地区には豪華そうな家が並び、食事処も高そうだ。 そんな中にあるガル本部がだいぶ質素に見える。
俺の考えを察知したのか、エイルが王都内について教えてくれる。
「この北地区は裕福層の家が並びますね。 本部の先にエルメリオン城の入口があります。 西地区は兵舎や訓練場があっていつも兵士さん達の訓練している声が聞こえてますよ。 東地区は自然が多く静かな場所です。 広い公園もあってここで食事出来たら美味しく食べれそうです……。 あ、南地区は民家なんかが並んでお食事処もそこまで高くはないはずです」
「な、なるほど。 ならこの手紙を届けたら食事にでも行こうか?」
「やったあ! そうしましょう!」
元気に頷くエイルと西地区に入った。
兵舎が並び、訓練場からは兵士の声が聞こえてくる。
「確かに結構騒がしいな」
兵舎に入るにはちゃんと入口があるので、そこにいる兵士に【ホンガン】さん宛の手紙を預かって来たとガルのカードを見せる。
「確かに、ホンガン副団長は今訓練場です」
「ありがとうございます」
中に入れてもらい、訓練場を目指す。
列を成して走っている兵士を見ると、昔のゲームにあったCMの歌が脳裏をよぎる。
「ここじゃないですか?」
結構大きな訓練場で、中からは金属音が聞こえる。
中に入ると、一際大きく筋骨隆々な人が大きな声で兵士に指導している。
多分この人が【ホンガン】さんだろう。
「ホンガンさんですか?」
「そうだが、キミは誰だい?」
ガルのカードを見せ、手紙を渡す。
「ふむ……、わざわざすまない。 しかしその若さでシルバーランクか……、どうだ、少し手合わせしてみないか?」
「手合わせですか?」
遠慮したいな……。
「ケンジさんは強いですよ〜」
「お、そうかい? 良いね。 是非頼むよ」
おいおい……、話しを進めないでくれ……。
「やりましょうケンジさん! ガルの実力を一丁見せてあげましょう!」
エイルが手合わせを受けてしまい、やる事になってしまった……。
「それで、誰とやるんですか?」
「そんなの決まってるだろう。 私と勝負だ」
ホンガンさんはデカい木製の両手剣をブンブンと片手で振りながら訓練場の真ん中へ。
俺も木製の片手剣を持ってホンガンの前に立つ。
審判役として兵士が真ん中に立ち、試合が開始される。
「ケンジ〜! やっちゃえ〜!!」
「ホンガン副団長!」
「騎士団の強さ見せてやって下さい!」
やんややんやと俺達の戦いを観戦している兵士達から声が飛び交う。
ホンガンさんはどっしりと構えている所へ俺が素早く斬り込む。
あんな大きな両手剣で俺の剣を軽々防いでいる。
「なかなかだが、踏み込みがまだまだ甘い!」
ホンガンさんの速い踏み込みの一振りで俺は吹き飛ばされた。
「まだまだあ!」
スピード、パワーでは勝てないなら……。
フェイントをかけて攻撃する。
が……、俺の剣はあっさりと弾き飛ばされ、ホンガンさんの剣が俺の顔の前に……。 勝負アリだ……。
「なかなかだが、もっと訓練が必要だな。 どうだ、ガルを辞めて騎士団に入らないか?」
負けた俺にまさかの勧誘。
「俺負けましたけど?」
「私が鍛えればキミはまだまだ強くなるぞ」
「有難いお誘いですが、俺は
「そうですか……、それは残念ですね」
後ろから急に声をかけてくる一人の青年がいる。
「騎士団長!」
ホンガンさんがその青年を声をかける。
この若い人が騎士団長!?
「初めまして、私はエルメリオン王国騎士団団長をやっている【ロイ】と言います」
「あ、俺は
「今の二人の闘いを見せてもらったよ。 ケンジ君はまだ力を温存しているだろう?」
そんな事はない。 俺は全力だった。
「そんな事は……」
「まあいいさ。 いつでも手合わせに来てくれたまえ。 歓迎するよ」
「あ、ありがとうございます」
強くなるには、たまに訓練するのも良いのかも知れないな。
二人に挨拶をし、訓練場を後にする。
「ケンジ惜しかったね」
「ご主人様が本気を出せば負けてませんよ」
エイルとレアの二人に励まされるが、今の俺じゃ勝てないだろうな……。
ガル本部に戻り、ミランさんに手紙を渡した報告と、副団長のホンガンと手合わせをして負けた事を伝えると、ホンガンさんはガルのランクで言えばマドルさんと同じプラチナだろうとの事。
そりゃ強いわけだよ。 すると、団長はもっと強いって事か!?
「ロイ団長の実力ですか? 噂ではミスリルぐらいはあると言われていますね」
そりゃ勝てなさそうだ……。
「そう言えば、ガルで最強の人って誰なんですか?」
「最強ですか? 強さだけなら【ナイデル】さんでしょうかね? 総合的な強さでは【サーデイス】さんですね。 二人共オリハルコンのランクです」
「違いがあるんですか?」
「二人共得意な闘い方がありますからね。 ケンジさんも自分に合った強さを身につけるといいですよ」
「なるほどな」
自分の強さか……。
ミランさんと話しをしていると、エイルからお腹が空いたと音が聞こえる。
「そろそろご飯でも食べに行くか」
「そ、そうですね」
エイルはお腹を抑えてきゅるる〜と返事をする。
本部を後にして、南地区に向かう。
レアには本部の影で人型になり、メイド服を着て俺の腕にしがみついて行く。
「ここなんてどうですか?」
エイルが選んだのは結構賑わっている食事処だ。
「良いんじゃないか?」
丁度空いていた席に座り、料理を注文する。
安いと言っても王都のお店だけあって、他の町に比べたら高い。
それでもエイルは手を抜かずに注文している。
ここでは葡萄酒を頼んだらしく、俺も飲んでみる。
料理も美味しく、葡萄酒も美味い。
エイルは葡萄酒が好きなようで、凄い飲んでいる。
レアも気に入ったようだが……。
「ふにゃ〜……、ご主人様ぁ〜……」
どうやらお酒には弱いらしく、葡萄酒一杯で酔っ払っている。
「レア大丈夫か?」
「……ん! ん!」
隣に座っているレアは頭を押し当ててくる。
「な、なんだ?」
「撫でて欲しいんじゃないですか?」
エイルに言われてレアの頭を撫でてやる。
「んふ〜……」
満足そうに喉を鳴らしているレアを見て、エイルも隣に来ると頭を出してくる。
「エイル?」
「私も撫でて撫でて」
二人を撫でる事になった。 なんだこれ?
しばらく撫でると、エイルは満足したようで、また葡萄酒を飲み出している。
レアは俺の膝の上で寝てしまった。
完全に寝てしまったレアを背負い、足元がふらふらしているエイルに手を貸して宿屋までたどり着く。
「いらっしゃいませー!」
元気に受付をしてくれた女性に「こちらをどうぞ〜」 と勝手に部屋の鍵を渡されてしまった。
本当なら二部屋とるつもりだったが、酔ってる二人を見た宿の人が勘違いして一部屋分の鍵しか渡してくれなかった……。
部屋に入るとベッドが大きい。
完全に勘違いしているな……。
二人をベッドに寝かせると、明日はもっと王都を見て回ろうと考えながら、俺は椅子に座って寝る事にした……。
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