七話 【ニール村】
ニール村にやってきた。
途中魔生獣に襲われている獣車の人を助けたり、マドルさんに助けられたりしたけど、やっと到着だ。
「ここが【ニール村】です」
「凄い畑だ。 エイルは来た事があるのか?」
「前に一度だけ依頼で来た事があります。 その時は作物の収穫のお手伝いでした」
「なら少しはこの村の人とも顔馴染みか」
それなら話しは直ぐに聞けそうだ。
「……それであのリンゴで作ったパイがですね……、あ、村長さんの家に着きました」
村長の家に案内されながらも、ニール村で食べた物の感想を聞かされていた。
「こんにちはーー!」
エイルは入口の前で大きな声で叫ぶ。
扉をノックした方が良いと思うが……。
「はいはい……、おや? あんたは?」
「お久しぶりです」
村長と顔見知りな為、直ぐに家の中に通してもらい、早速状況を聞いた。
「……そうですか、やはり【ガウボア】が?」
「そうなんじゃ。 あちこちの家の畑が襲われて被害が出てしまってのう」
「わかりました。 今日は泊まり込みで【ガウボア】が現れるか見張ってみます」
「宜しく頼む」
俺とエイルはニール村を一回りしてみる。
畑は結構荒らされ、柵もあちこち壊されている。
「結構深刻だな」
「そうですね、毎年被害はあるようですが、ここまで酷いのは初めてだそうです」
村の人の助けになるように頑張ろう。
その夜はまだ荒らされていない畑が見える家で見張らせてもらう。
夜も更けてくると畑の方でガサガサと音が聞こえた。
「来た!」
「行きましょう!」
俺とエイルは畑に飛び出すと、そこには三匹の【ガウボア】が畑の野菜を食い散らかしている。
向かってくる俺達に気がついたのか、【ガウボア】達は森の中へ逃げて行った。
向かってくると思ったが逃げたな。
朝、村長にその事を話すと、逃げた【ガウボア】を追って村の人で退治すると言っていたので、俺達に任せてもらう事にした。
サイズは豚位だったけど、襲われたら村人が怪我をする可能性があるからな。
一休みしたあと、日が暮れる前に森の中を探索しに入る。
「ケンジ〜いた〜?」
森の中を逃げた【ガウボア】を探して探索中。
「こっちにはいないな」
きゅるる〜。
「ケンジ〜、お腹空きました〜」
探索に夢中で気が付かなかったが、昼はもう過ぎている。
しかし朝ご飯をあれだけ食べたのにな……。
とは言え、ここで食事なんてしてたらどんな魔生獣に襲われるかわからない。
「もう少し我慢してくれ。 【ガウボア】を討伐したら食事にしよう」
「しょうがないかあ……」
更に森の中を探索して行く。
「やっぱり見つからない〜」
エイルは若干諦めた様に俺の元へ歩いてくる。
「きゃ!」
木の根につまずいたのだろうか、派手に転んで草むらに突っ込んだ。
「大丈夫か?」
「いたた……」
「ほら、立てるか……?」
エイルを起こすと、そこには【ガウボア】の足跡が見て取れる。
「エイル、この足跡【ガウボア】のじゃ無いか?」
「本当だ! この足跡を追いましょう!」
俺達は足跡を追って更に奥まで入って行く。
森の奥まで来ると、大きな沼地が見えた。
「あそこに足跡が続いてるな」
「行ってみましょう」
沼地をよく見ると、何かが浮いている。
「あれってもしかして……ガウボア?」
「……! エイル! 離れろ!!」
「え!?」
沼地から音も無く黒い影がエイルの背後に伸びてくる。
黒い影は大きな口を開けエイルに襲いかかる。
エイルを抱き抱えその大口を躱す。
距離を取り振り向くと沼地から黒い影がのそっと這い出てくる。
「なんだあの魔生獣は!?」
「あれは……、確か【ボグリザード】です」
「リザード……トカゲか? それにしてはデカく無いか?」
人なんて丸呑み出来そうだ。
四つ足でのそのそと歩いてくる。
あまり動きは早くは無いのか? だがさっきの動きは早かった。
「気をつけて下さい、【ボグリザード】の体の表面は硬くて、泥も着いているので火はあんまり効きません」
硬いと言われても俺には剣で攻撃するしか方法は無い。
動きの遅い足を狙うか。
【ボグリザード】の足に切りかかるが、頭の動きは素早く大口を開けて危うく飲み込まれる所だった。
「ふう……、危なかった」
ギリギリで躱し、距離を取る。
エイルは
「やっぱり火は効かない。 なら、
鞄から取り出し、思いっきり投げる。
【ボグリザード】までは届かず地面に落ちたが、うまい具合に転がり、【ボグリザード】の足元まで転がり爆発する。
爆発にびっくりした【ボグリザード】の体勢が崩れた。
「いまだ!」
俺は顔に向かって飛び上がり、剣を振り下ろした。
だが鱗に弾かれ、刃が通らない。
「くそ……、あんまりやりたく無いけど……、エイル!
「え!? 私当てる自信無いよ!」
「大丈夫だ! 俺が投げる!」
「わ、わかった」
エイルの元まで走り
そして【ボグリザード】まで走る。
【ボグリザード】はさっきの様に素早く食らいついて来た。
「ケンジ!!」
【ボグリザード】の大口に飲み込まれた……。
「そう簡単に飲み込まれるか……」
俺は口の上顎を持ち上げ、足で下顎を押し開ける。
「そんなに食いたきゃこれでも食らえ!」
エイルから受け取った
俺は口から素早く飛び降りると、【ボグリザード】の腹の中から鈍い爆発音がし、【ボグリザード】はその場に倒れた。
「どうだ!」
勝ち誇っていると、エイルが駆け寄って来る。
「ケンジ!!」
「なんとか倒したよ」
「無茶しないで下さい! 食べられちゃったかと思ったじゃ無いですか!」
涙を浮かべてプルプルと震えている。
「ごめん、でも中からじゃ無いと倒せないと思って……」
「そうかもですけど、それで本当に食べられちゃったらどうするんですか!」
「そうだな、無茶はしないって約束するよ」
「本当ですよ!」
エイルは顔を近づけ俺の鼻の前に指を近づけ腰に手を当て、無茶はしないと約束をした。
「でも結局【ガウボア】の討伐じゃ無くて【ボグリザード】の討伐になったな」
「見た所、恐らく【ガウボア】は【ボグリザード】にやられたのでしょう。 だから一応討伐にはなりますね。 村に戻って報告しましょう」
「そうだな」
ニール村まで戻り、村長に報告した。
「そうでしたか、【ボグリザード】が……」
「はい、でも討伐したのでもう大丈夫だと思います」
エイルは鞄から【ボグリザード】の魔石を取り出した。
「ふむ、本物のようじゃな。 ありがとう、助かったよ」
「いえ、それじゃ私達はこれで依頼達成という事ですね」
「そうじゃな」
村長はエイルが渡した紙にサインをして返した。
「それじゃケンジ、帰りましょう」
「ああ、でも……」
「どうしました?」
「食事しなくて良いのか?」
ぐきゅるる〜〜!
俺の言葉にエイルのお腹が返事をした。
「完全に忘れていました。 食事をしてから戻りましょう!」
そしてエイルと多めの食事をとり、日が暮れてしまったので、一泊する事にした。
「今日は村長さんの家に無料で泊めてくれるそうです」
「なら安心だな」
お金の心配をしていたが大丈夫そうだ。
空き部屋は一つしか無いらしいから、また今日もエイルと同じ部屋で寝る事になるけどな。
「それじゃ体流して来ちゃいますね」
「ああ」
体を流せるのは別の場所だ。
ニール村にはシャワーは無いらしく、風呂桶に水を溜めて体を流すのが主流となっている。
水は井戸から汲んで、ガッドレージと同じ様に魔導石を使って温めているようだ。
生活用の魔導石は魔生獣除けの魔導石と同じく、誰でも使えて相性とか関係ない。
エイルが体を流し終えて戻って来る。
「それじゃ俺も体を流してこよう」
「え!? 体流すんですか?」
「まあ……」
人造人間だからなのか、あの位の戦闘では汗はかいたりしないけど、汚れたからな。 本当は風呂にどっぷり浸かりたい。
「ちょ! ちょっと待って下さい! あ、私、忘れ物を!」
エイルが部屋から飛び出して行った。
忘れ物って……?
しばらくして、エイルが戻って来た。
「お、お待たせしました……はあはあ……」
なんだかやけに疲れているな。
「それじゃ先に休んでてくれ」
「ええ……」
俺は体を流しながら今日の戦闘の反省をする。
エイルに心配かけてしまったから、立ち回りをもう少し考えないといけないな。
体を流し終え、部屋に戻とエイルが錬金術で調合していた。
「あ、おかえりなさい」
「ああ、それ錬金術か?」
「そうですよ。 今は
試験管に入った青い液体、すり鉢に入っている黒い粒、小型の
錬金術なんて初めて見た。
エイルはその謎の液体に小さな樽を放り込み混ぜていくとうっすらと光りが上がり、樽を取り出した。
「出来ました。 これを少し干して完成です」
錬金道具をしまい、就寝の準備を始める。
部屋にはベッドが二つあるので、俺もベッドで寝れそうだ。
部屋の明かりを消し、布団に入る。
今日は疲れた。 でも初の依頼は達成だ! ガッドレージに戻るまでは気を抜かないようにしていかないとな。
夜も少し経った頃、【ボグリザード】と戦った森の中から木々を薙ぎ倒し、村に向かって来る魔生獣がいた。
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