第5話:天女のたわむれ。

「まあな・・・そんな現実的なこと考えなくていいよ、君の存在自体

非現実的なんだからさ」

「分かんないんなら、無理に聞かなくていいから・・・しゃべったことが

全部無駄になるだろ?・・・意味ないだろ」


「だって自分の旦那様がどんなお仕事してるのか近所の奥様に聞かれたら、

知らないってわけにはいかないでしょ?」


「俺の住んでるマンション独立してるし」

「そんな機会はまずないと思うけど・・・」


「って言うか・・・旦那様ってなに?・・・いつから?」


「空から舞い降りてきた時から・・・」


「旦那様って、たとえば家政婦さんが言う旦那様?じゃなくて?

自分の夫のこと?、または亭主のこと?・・・そう言う意味で言ったのか?」


「そのつもりだけど・・・私の夫、すなわち旦那様」


「それってさ、彼女とかって立場通り越して早すぎないか?」


「なに?私が妻じゃ不服なの?・・・奥さんまたはお嫁さんとかって不服?」


「言い方変えただけで、同じだよ」

「あのさ、物事には順序ってものがあってさ、全部飛ばしまくってるじゃん」

いきなり、夫婦って・・・最初は友達関係からってのが筋だろ?」


「男と女が出会って、お友達からなんて気持ち悪いと思わない?」

「この世に男と女がいるかぎり愛の花は咲くのよ」

「それで人類の歴史も天界の歴史も先祖代々続いてるんだからね」


「お〜なんか哲学的・・・」


「いいのよ彼女でも妻でも・・・内縁の妻でも、どれだって一緒」

「一所に住んでたら一蓮托生」

「そんなことより辰也君ちって遠いの?、まだかかるの?」


「そうだね、ここから3時間ってとこかな」


「じゃ〜私、寝てもいい?」

「いろいろあったから疲れちゃった・・・」


「どうぞ、駅に着いたら起こしてあげるから」


(明日香ちゃんはけっこうな頻度でわがままって言うか自己中だよな・・・)


明日香ちゃんは俺の肩にもたれて寝てしまった。

その寝顔をみてるとなぜかとっても切ない気分になった。


過去の悲しい思い出が蘇ってきた。

僕の横で、僕の肩にもたれてすやすや寝てた元カノ・・・幸せになろうね

って言ったのに別れたいって僕のマンションを出て行った。


それからは僕には彼女はいない・・・って言うかそのことがあって恋愛に

臆病になった。


でも、これからこの子と、明日香ちゃんと暮らすのか・・・。

妻って・・・なんだよ、勝手に決めちゃって。

でも天女が妻ってファンタジー好きや伝説好きなやつにはたまんないだろうな。


それ俺だけど・・・。


天界には帰らないって言ったけど、いいのかそれで?

どっちにしても明日香ちゃんが天界には帰らないんなら俺といるしかない

んだもんな。


そうだ、一緒に暮らすなら着物じゃダメだし天女の格好でうろうろされても

違和感ありありだしな。

こんな格好でスーパーに買い物に行くのか?・・・まあびっくりされるのは

最初だけか・・・みんな人のことになんか関心ないからな。


やっぱり今のこの格好だから天女って言えるんだよな。

髪下ろして今時の服なんか着せたらそこらにいる普通のおネエちゃんじゃん。

この今の格好だからいいんだよ。


普通のギャルみたいになっちゃったらつまんないだろ?

ロマンがないじゃん。


ん?明日香ちゃんパンツなんか履いてんのかな?

着物で生活してた江戸時代の女性ってノーパンだったんだろ?

俺は実はパンツフェチだし・・・。

明日香ちゃんにパンツ履いてって言ったら履いてくれるのかな?

一度チャレンジしてみるか。


待てよ、着物か?・・・そうだこれいい考えだ。

明日香ちゃんをモデルに写真撮ったらイケんじゃないか?


今の天女の格好のまま、どこか風景の綺麗な場所へ明日香ちゃんを連れて

行ってさ。

写真バンバン撮ってそれで写真集かなんか出すんだよ。

それいい考えだよな。


写真集のタイトルは・・・そうだな・・・《天女のたわむれ》・・・いいんじゃないか?

いいアイデアだよな。


そう思うと天女ちゃんってキャラは俺にとってとっても貴重で美味しい存在

になりそうだった。


明日香ちゃんが起きたら早速交渉してみよう。


そんなわけで、天女ちゃんと俺の楽しいかどうかまだ分かんない新たな生活が

はじまることになった。

とにかくもう後戻りはできない。


俺は明日香ちゃんをモデルに写真集を出すってことを考えるとめっちゃ

テンションが上がった。


なにも知らない天女ちゃんは辰也にもたれてスヤスヤ眠っていた。


とぅ〜び〜こんて乳。

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