異世界帰りの俺、ダンジョンが出現した日本でダンジョンから逃げるように生きることにしたら各所で謎の強キャラ扱いされてましたっ?!~初めからめちゃくちゃ強いけどダンジョンには極力入らないようにします
にこん
第1話 英雄の帰還?いや、違う。戦犯の帰還だよ
ピッピッ。
機械的な電子音で俺は目が覚めた。
ここは病室だろうか。なんでこんな所にいるのかは分からないが。
それより。
(負けたか)
2年間だった。
異世界に召喚されていた。
女神様とやらに頼まれて異世界に召喚された俺だったが、魔王の討伐を命じられた。
そして俺は戦った。
しかし、魔王に負けた。
完敗だった。
その結果俺は当初の予定通り日本に戻された。
ここまでは俺の覚えている事だ。
「づっ……」
魔王との戦闘でつけられた傷が痛む。
ペラッ。
服を軽くまくってみるとそこには傷跡があった。
(俺がこのザマだとこの国もだめかもな)
俺が必死に魔王と戦闘していた理由は簡単だ。
魔王は世界征服をたくらんでおり、そしてそれを成し遂げた後にはこの世界にも影響が出る。
そういう話だった。
典型的日本人?自己犠牲ってやつなのかな?
俺は頑張ったが結果はこの有様だ。
だが今となってはなんのために頑張ったのか分からなくなった。
結局俺は負け、運命は変わらなかった。
俺が何かしても何もしなくても運命は変わらなかった。
「行動するだけ無駄だなこりゃ。これからは楽に怠惰に生きよう。何をしても無駄だからな」
2年かけて学んだことはそれだけだった。
(しょせん俺は一般人。魔王に勝てるわけもなし、ってな)
そんなことを思っていたら病室の扉が開いた。
中に入ってきたのは2年ぶりに見る顔だった。
しかし少しも変わっていない顔だった。
同い年の妹の椎奈だった。
「お兄ちゃん?!」
椎奈が近付いてくる。
「大丈夫?血まみれで倒れて運び込まれたって聞いたけど」
あわあわあわあわあわ。
って慌ててる。
よっぽど俺の事を心配してくれているらしい。
その姿は2年前からいっさい変わっていない。
不思議なものだ。
「血まみれで運び込まれたのか、俺は」
「そうだよ。高校近くの道路でひき逃げにあったんだって。許せないよ、どんな車か覚えてないの? 」
こう聞かれて魔王の顔を思い出すのは世界で俺1人なもんだろう。
(そもそも車じゃないんだよな)
俺は首を横に振った。
「なんにも覚えてない」
「そうなんだ」
「あぁ、なんにも、な」
今の俺から話せることなんて何一つない。
悪いが黙っていようと思う。
俺が黙ってベッドに座ってると椎奈が口を開いた。
「お医者さん呼んでくるね」
そう言って部屋を出ていった。
その間に俺は自分の近くにあったスマホに手を伸ばした。
バッテリー残量なんてないとは思うが電源ボタンを軽く1度押す。
ブゥン。
画面がついた。
「まじか。とっくにバッテリー切れだと思ってたが」
不思議なもんだ。
そう思って日付を見てみると。
「12月10日?」
それは俺が女神に召喚されて数日後の日付だった。
そして、年も一緒だった。
「へ?」
そう思って以前に女神が何か言っていなかったかを思い出す。
『向こうとこちらでは時間の流れが違います』
頑張って思い出した結果そんなことを言っていたを思い出す。
「あー、そういうこと、ね。こっちは2年経ってないってわけか」
合点がいった。
現状をまとめていた俺だったがそのとき、妹が医者を連れて戻ってきた。
「おー、意識が戻りましたか。西条さん」
俺の名前を呼んでくる医者。
歳は50くらいの男の人だった。
「お陰様で。」
そう言いながら立ち上がると医者は慌てて言った。
「き、傷が開きますよ?!西条さん?!」
バッ!
体を慌てて動かして俺をベッドに戻そうとしていた医者だったが俺は服をまくって自分の腹を見せた。
「傷ってのはこれのことですよね?それなら問題ありません」
「んなっ?!」
俺の腹に刻まれていたくっぱりと開いた刀傷はすでに回復していた。
「なにっ?!もう治った?!いや、それとも幻?!あんな深い傷こんなすぐに治るわけが」
そう言ってる医者に答える。
「体が少し特殊でしてね。治るのが早いんですよ」
俺はそう言って医者に聞く。
「費用などは親から受け取っていますよね?」
「え、ま、まぁ」
「なら良かった。自分はもう帰りますよ」
そう言って椎奈に目を向けた。
「えっ?!もう帰るの?!」
「いつまでもこんなところにいられないさ。学校もあるだろ?」
「そうだけど、大丈夫なの?」
「心配することない。言ったろ?俺は特別だって」
そう言って俺は椎奈を連れて病室を出ることにした。
◇
病院を出てみるとすぐにここがどこか分かった。
どうやら本当に学校近くで倒れたらしい。
家に帰りながら俺は影響が出ていないかを見てみることにした。
(魔物なんかが湧いているような感じは無いな)
そう思いながら俺は椎奈に聞いた。
「俺が事故にあって何日だ?」
「1週間くらい。ずっと目が覚めなかったんだよお兄ちゃん」
「なるほど」
「このまま目が覚めなかったらどうしようって思ってたけど、よかったよぉ、うええ」
心配してくれているようだが俺は椎奈に聞いてみることにした。
「なぁ椎奈。変わったことはなかったか?」
「え?どうして?でもなんもなかったよ」
「そか」
なんにも無かったらしいことに安心。
影響が出ていないということだ。
いや、安心だな。
(異世界での出来事が日本にまで影響を与えるわけないよな)
そんなことを思いながら俺は今日は帰宅することにした。
そして、明日のことについて考えよう。
俺も今日からまた一般日本人の高校生だ。
学生の本分は勉強だ。
頑張らないと。
そう思ってたら椎奈が言ってきた。
「あ、でも」
「なに?」
「お兄ちゃん、なんか顔変わった?前も死にそうな顔だったけどそれよりしんどそうな顔してる。大丈夫?」
「ははっ、大丈夫さ」
いかんいかん。
どうやら異世界ですり減ったメンタルが表情に出ていたらしい。
だが。
椎奈の顔つきが変わった。
俺を本気で心配してるような目をしてる。
「お兄ちゃん大丈夫?おっぱい揉む?」
こんなふうに心配されてしまった。
メンタルをすり減らして良かったかもしれないっ!
しかし兄として注意しておこう。
「椎奈冗談でもそういう事言うのはやめとけよ。はしたないからな」
「はーい」
お兄ちゃんは許しません!
そんな会話をしながら家に戻ると心配した両親から色々と話をされたが記憶がないと言い張った。
でも俺にはたしかに異世界で過ごした日々の記憶が残っている。
1人で部屋に戻った俺はさっそく異世界で学んだ魔法を使ってみることにした。
「ファイアボール」
ぼっ。
俺の人差し指の先端に小さな火の玉が現れた。
しかし、突如けたたましい音!
『火事です!火事です!』
バッ!
上を見あげると火災報知器からの音であることが分かった。
その後スクリンプラーが作動。
水が降ってきたが
「ウィンドウォール」
風で作った壁を盾にする。
つつつーっと俺を濡らさずに水は床へ落ちていく。
これで俺は濡れずに済んだのだが。
ドタドタドタドタ!
(廊下を走る音、まぁそりゃ火災報知器の音は聞こえるよな)
この後火災報知器の件について両親たちに問い詰められることになるのは当然の話だった。
だが、分かったことがある。
この世界でも引き続き魔法が使える、ということだ。
そして俺は異世界で学んだ数々の使用可能魔法について思い出していた。
【使用可能魔法】
ファイアボール
ファイアフレイム
ウィンドウォール
ウォーターボール
その他
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