第13話 2日目の成果
「まずはランニング!」
「「「押忍!!」」
部長の指示を受け、カードの外側に3列に並び出す。慌てて俺も最後尾に並んだ。
そのままコートの外側を走り出す。
--コート外周だと、単純計算(40+20)×2……つまり120m弱か。問題は何周するかだよな……。
頭の中でそう計算を働かせる。何周なのかを近くの1年生に聞こうかと思い、ふと隣に声をかけようと横を向くと、そこには先ほど嫌味を言ってきた優斗がいた。ふとあちらもこっちに視線を向けてきたため目が合う。嫌そうな顔をされて目線を外されてしまった。
(俺そんなに嫌われるようなことしたかな……)
走りながらもそんなことを考える。そもそも会話をしたことほとんどないことを考えれば、おそらく部長につきっきりで教えてもらったことに対する嫉みだという弘樹の言葉が有力なのだろうか。とんだとばっちりである。
そんなことを考えつつ、ランニングについていくと、10周ほどで部長からさらに声がかかる。
「サイドステップー」
「「押忍!」」
その掛け声と同時に全員が横向きになり、昨日やったサイドステップがはじまる。
ランニングのタイミングでやるとは思わず、慌てて俺も横向きになりサイドステップを始める。
昨日やったのもあってか、比較的スムーズにやることができた。
大体2周くらい行うと、今度は反対向きになり再びサイドステップが行われる。
……昨日ステップをやって思ったが、俺は右足の使い方が下手だ。
左足を前にしてするステップは比較的得意だが、右足を前にすると途端にぎこちなくなる。
このことを昼、弘樹に相談すると
「ああ、利き足の問題じゃね? ハンドボールの場合、右利きは左足で踏み切ってジャンプシュートを打ったりするんだよ。多分、和馬って右利きだから左足が利き足なんだと思う。 練習すればステップくらいは問題なくできるようになると思うぞ?」
とのことだった。
なるほど。利き足というのはわかっていたが、ハンドボールは利き手と逆でジャンプするのか。
確かにフォームを考えると右足で踏み切ると打ちにくいとは思う。だから左足なのか…。
そんなことを考えつつ、サイドステップを終えてクロスステップも行なっていく。
左右両側終えると、パス練になった。今日は弘樹が誘ってくれたので、弘樹と練習する。
「和馬、パス上手くね? 普通に胸に投げれるのすごいと思うんだが」
「はは、ありがとう」
弘樹が褒めてくれる。流石に3日目ともなれば、何となく感覚が掴めて投げられるようになった。……距離が多くなると届かないけど。
「よし、スリークロス!」
……きた。昨日半分ほどしか理解できなかったが、夜頭の中でしっかりと反芻してきたし、できる……と思う。
そのまま弘樹と一緒にやることになったが、もう1人をどうしようと悩んでいると、ふと弘樹が声をかける。
「おい、優斗。お前余ってるんだからやろうぜ」
「……はぁ、わかったよ」
声をかけたのは、優斗(弘樹が教えてくれたが、「
「……伊藤、だったっけ?足引っ張んなよ」
「わ、わかった……」
混ざりながら釘を刺してくる。
……まずい、これはミスできないぞ……
俺はとてつもない緊張感を持ちながら、順番を待ち、スリークロスを終えた。
「和馬! 昨日より早くできるようになってんじゃん!」
スリークロスが終わり少しの休憩の指示が出ると、弘樹が飛んできてそんなことを言ってくれる。
「ありがとう。昨日夜動画見ながら動き学んでたんだよね」
「へ〜。和馬って勤勉だよな。……ほら優斗。和馬のスリークロス、余裕だったろ?」
ふと横を通りがかった優斗に声をかける弘樹。優斗は気だるそうにこちらを見ると一言
「ふん、まぁ及第点だろ」
と答えてスタスタと行ってしまった。
「……ちぇ、素直じゃないやつ」
弘樹は後ろ姿にそう吐き捨てると、再びこちらを向いて話しかけてくる。
「そうそう、やっぱり今日速攻やるっぽいぞ」
「そうなんだ。速攻……」
「ま、和馬の足ならスピードは問題ないけど、ロングパス受け取るのにはちょっと苦労するかもな。頑張れよ?」
「う、うん!」
確かに走るだけなら自信はあるが、走りながらボールを受け取るとなると、少し厳しいかもしれない。
キャッチできなければシュートも打てないし、そもそもコート外に転がってしまう。
「休憩終わり! 次速攻!」
「「押忍!!」」
部長の指示が飛び、全員が集まっていく。
俺は少し緊張しながら、次の練習へと臨むのであった。
-第13話 完
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