第11話 帰り道
「よし、時間になったし、今日の体験入部はここまで!」
ふと横にいた部長が指示を出す。すると、練習を続けていたメンバー全員が部長に駆け寄ってきた。
「お疲れ様。1年生はここで終了。2、3年は引き続きゲームやるから準備!」
「「「押忍! お疲れ様でした!!」」」
部長の指示に、2・3年は再びコートへと戻っていく。
残った10名弱は1年生なのだろう。弘樹以外は見たこともない。
「とりあえず、今日はここで終わる。体験入部中は18時までと限られた時間となるので、しっかりと集中して取り組むように。もしハンド部以外を見にいく場合は自由に行ってもいいので気にしないこと。以上。解散!」
「「お疲れ様でした!!」」
部長の言葉にそう返すと、1年生がゾロゾロと部室の方へと歩いていく。何名かはこちらをチラチラと見ながら向かっていった。
何だったのだろうかと首を傾げていると、ふと弘樹が寄ってくる。
「和馬、お疲れ!駅に行くだろ?一緒に行こうぜ!」
「あ、ああ」
軽く肩を組みながらそんなふうに声をかけてくれる。
もちろん断る理由はないので、了承して2人で部室へと戻り、服を着替えて駅への道を歩き出す。
先ほどチラチラと見られたことを弘樹に聞くと
「あー。 多分和馬が初心者だから部長がつきっきりで教えてるの羨ましいんじゃない?まぁ、悪い奴らじゃないから、本入部になったら話してみなよ」
笑いながらそう返してきた。そんなもんなんだろうか。俺は少し懐疑的になりつつ、今はそう思い込むことにした。
帰りながら弘樹と話して知ったことだが、弘樹の家は俺の最寄駅の少し先くらいだった。もしかしたら通学中に会っていたのかもしれない。
「まぁ、この高校に来る奴も多いし、第1和馬はクラスメイトとほとんど交流してないから会っててもわかんなかったっしょ」
「た、確かに…」
図星である。
正直弘樹が声かけてくれなかったら俺はまだクラスでぼっちだった可能性が拭いきれない。
「ま、同じ部活だし、仲良くしようぜ?」
笑みを見せながらそう言ってくる弘樹に俺も笑顔で返す。
電車に乗り込み、近くの椅子に座ると弘樹がLINE交換しようと提案してくれる。
別に断る理由もないし、友達として仲良くさせてもらおうと思い交換した。
電車に揺られて他愛もない会話をして数分、俺の最寄駅についた。
「じゃあ、俺この駅で降りるから」
「おっけー!また明日な!」
弘樹に挨拶をして電車を降り、改札を出て家へ向けて歩き出す。
今日はとても疲れる1日だった。身体の疲れ、というよりは、頭が疲れた。
「やっぱハンドって頭使わないと出来ないな……」
そんなことを実感してしまう。
肉体的な大変さは陸上で慣れていたが、あそこまで頭を使う事はやってこなかったので、正直俺にできるか不安だった。
「……とりあえず帰ったらスリークロスのやり方、しっかり覚えよ……」
俺は一つずつしっかりと覚えていくことを決意しながら家の門を開けて家の中へと入っていく。
……明日以降、もっとしっかりハンドについて知っていこう。
そう決意して夜、ルールブックと格闘するのだった。
--なお、この日の夕食で父と会話することはなかった。
-第11話 完
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます