Sky Play!

マサ

プロローグ


  --キュッ、キュッ。


 静かなコートに靴が擦れる音が響く。


 ……くそ、なかなか点差が開かない……


 相手がパスを回す中、俺--伊藤和馬いとうかずま--はそう考えながら、一瞬の隙を探す。


 ……ここだ!


 ふと俺は、相手のパス回しの隙をついてボールをカットした。


 --ワァァァァァ!


 先ほどまで静かだった会場から観客の歓声が上がる。


 一気に流れがこちらに傾いた。ディフェンスをしていたチームメイト達が一斉に攻めに転じる。


「和馬!」


 --速攻に走った優斗ゆうとが俺を呼ぶ。間髪入れずに俺は優斗にパスを出した。


 ……ふとスコアボードをチラッと見る。残り3分で2点差。ここで点を取れればまだツキはうちにもある。


 俺も全力疾走で敵陣に切り込む。どう攻めるか思案していると、予想外の事態が起こる。


 --目の前のディフェンスの間に大きな隙間が生まれた。


 俺はそのチャンスを見逃さず、一気にディフェンスの合間を縫って6mラインからジャンプした。


「和馬!」


 それを見て、優斗がフワッとボールをパスしてくる。

 ……俺は、空中でボールを受け取ると、そのままシュートを打った。


 --シュッ……。

 --スパァァァン!!


 俺が投げたボールはキーパーに触られることなくゴールに突き刺さる。



 --すげぇ!!

 --今のって『スカイプレー』じゃね!?

 --あいつすげぇぞ!



 俺のシュートに観客からそんな声が上がる。

 そちらに気を取られることなく、俺はディフェンスに戻り声を出す。


「まだいける! このまま追いつくぞ!!」

「「応!!」」


 俺の掛け声に全員が声をあげる。


 …残り2分弱で1点差。緊張感が増す中、試合は緩やかに終焉へと向かっていった。


-プロローグ 完

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