第22話 リリアーヌside3

コレットは地味な使い古しのドレスでリリアーヌは新品で流行りのドレス。

愛されているのはどちらか、一目見ただけで明白だろう。


リリアーヌは完全に浮かれたていた。

そしてリリアーヌは知らなすぎたのだ。社交界がどんな場所かを……


リリアーヌは自らをアピールするように声を掛けて回る。

社交界でのマナーはずっと前に習ったような気もするが、もう忘れてしまった。


(もしかしたらこの国の王子様だって、わたしを見たら夢中になるかもしれないわ!)


令嬢たちはリリアーヌを見て、コソコソと何かを呟いている。

それを見て嫉妬の視線だと思い、ますます気分がよくなった。

だからコレットから奪ったエスコート役のディオンがいなくなったことにも気がつくことなく、リリアーヌは煌びやかな会場にうっとりしていた。


今まで仮病を使っていたことを後悔するくらいに。


(こんなに素敵な気分になれる場所があるなら、もっと早く来るべきだったわ……!)


リリアーヌは天にも昇る気持ちだった。体は羽の様に軽い。

部屋の中では得られないキラキラとした美しい世界だ。


「ごきげんよう。あなたはだぁれ?」

「わたしはリリアーヌ・ミリアクトですわ!今日が初めてのパーティーなのっ」


しかしそんな素晴らしい時間はコレットによって遮られてしまう。

コレットはリリアーヌの前に出ると、注目を奪うように頭を下げて何かを必死に話していた。

舞台で気持ちよく演じているのに引き摺り下ろされたような、そんな不満に怒りが込み上げてくる。

リリアーヌが文句を言う前に怒鳴り声が耳に届く。


「いいからこっちに来て!」


コレットに怒鳴られるようにして腕を引かれ城の外へ。

強い力にリリアーヌは抵抗することができなかった。

リリアーヌはディオンに助けを求めようとしたがどこにもいない。

ここで初めてディオンが自分の隣にいないことに気づく。


そして乗ってきた馬車に詰め込まれてリリアーヌは怒り心頭だった。

そこに現れたのはディオンだった。


(まぁ!きっとディオン様が助けてくれるんだわ……!)


しかしリリアーヌの予想は大きく外れることになる。

何か話しながら馬車を指差すコレットと、リリアーヌの馬車を指差して馬鹿にするように笑うディオンの姿。


(ディオン様だって、わたしと一緒にいられなくて、あんなに残念がっているじゃない!早く会場に戻りたいわ)


しかしリリアーヌは怖くて一人で馬車を降りることができなかった。

コレットは走り回って疲れたのか荒く息を吐き出しながらなりながらも馬車に乗ると、御者に「ミリアクト伯爵家まで」と言った。

リリアーヌは信じられない気持ちだった。



「なんで!?パーティーはまだ始まったばかりじゃない!どうして邸に帰るのよっ」


「リリアーヌ、あなた自分が何をやったかわからないの?」


「意味わかんない!自分が何をやったかわからないですって!?コレットお姉様の方でしょう!?」


「……もういいわ。話にならない」


「~~~ッ!」



何を言っても『リリアーヌが悪い』と言いたげなコレットにリリアーヌの怒りはピークに達していた。


(ディオン様を取られたかって、わたしにこんな嫌がらせをしてくるなんて絶対に、絶対に許さないんだから……!)


リリアーヌは血が滲むほどに唇を噛んだ。

コレットを追い詰めて、リリアーヌに這いつくばって謝ってくるまで許さないとミリアクト伯爵邸に到着してすぐにリリアーヌは両親に泣きついた。


「コレットお姉様がディオン様を取られたからって嫌がらせをしてきたの!わたしっ、みんなの前で恥ずかしい思いをしてっ……このままミリアクト伯爵家が悪く言われると思うと心配だわ」


すると両親は激昂してコレットの話を聞くことなく責め立てた。

コレットはドレスのまま部屋に引き摺られていき、物置部屋に閉じ込められて怒られているようだ。


(アハハ、いい気味だわ……わたしのやることを邪魔したらこうなるって、わかってもらわないとね!)


しかしリリアーヌの気分はこんなもんでは晴れはしない。

あることないことを両親に吹き込んでコレットを苦しませ続けた。 

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