3人の魔法族による無敵なアオハル物語
ことまるびぃ
第1章 無敵への階段
第1節 青の遭遇
第1話 プロローグ
十字架が掲げられた旗を中心に丸く立つ建物の中は、ステンドグラスを通した太陽の光で輝いていた。
十字架の下には「魔法高等学校 入学式」と書かれた弾幕が飾られてある。
ここは、ムーントピア王国魔法省が経営する魔法高等学校内における教会。
そこでは、本年度入学する1年生ーおよそ30人ほどがずらりと椅子に座っている。
新品のネイビーのローブは、まだ堅苦しく輝いていた。
「続いて、新入生代表の誓い」
司会の声がマイクを通して教会に響くと、一番前の席から壇上へと上がる1人の少女がいた。
2つに結んだピンクのツヤツヤ髪が揺れ、堂々たる姿で全員の前に立ちマイクを握った。
「本日より、私たちは魔法高等学校の新入生として、仲間とともに勉学に励み、魔力を駆使して、国民を守ることを誓います。新入生代表ーアザレア・ロードクロサイト」
彼女の発言に会場がザワつく。
ロードクロサイトとは、ムーントピア王国内における魔法族四天王の1つーロードクロサイト家の名だからだ。
アザレアは魔法族名家の生まれで、本来魔法は1つの属性しか扱えないにも関わらず、2つの属性を扱えることでロードクロサイト家の中でも突出して有名だった。
次いで容姿端麗のため、幼い頃から許嫁の申し出がひっきりなしに届いていたが、すべて断ったという逸話も王国内で知らない者はいない。
アザレアはその堂々たる挨拶の後、綺麗に頭を下げ席に着いた。
その立ち振る舞いから名家の生まれであることは一目で分かるほどだ。
「けっ、アイツが首席かよ」
新入生の中でただ1人、目立つ男がいた。
サラサラな海色の髪に瞳、整った顔立ちにも関わらず、長い足を組みアザレアを睨む。
その男の名はーハス・タンザナイト。
魔法族四天王の1つータンザナイト家の生まれであり、現存している魔法族の中でも最強と謳われる男。
4つある全属性の魔法を使える魔法族は1000年振りの誕生だった。
その上、16という齢で既に2級クラスの実力であり、難しいと言われる転移魔法まで使える。
クラス上限が撤廃される16歳で、最高クラスのクラウン級に近い魔法族だ。
ハスは頭の後ろで腕を組み、退屈そうに欠伸をした。
(有名人揃いだな……)
アザレアやハスを1番後ろの席から眺めながら、腕を組んでいる男。
真っ黒な髪に鋭い緑の瞳をキラリと輝かせ、姿勢を正して真っ直ぐ座っている。
その男の名はーカポック・チャロアイト。
一般家庭の出身ながら魔法族の中でも希少な回復魔法を扱うことができる。
その中でも彼の才能は異質で、回復魔法は普通自己にのみ適応されるが、カポックは複数の他者への回復を同時に行うことができ、また傷の回復、体力、魔力を一度に回復できる治癒の力は、国内においてもカポックの他にいない。
そんな突出した3人が揃ったこの学年は、ムーントピア王国始まって以来の最強世代として魔法省からの期待が熱い。
三人寄れば文殊の知恵という言葉がある。
これは特別頭が良い者でなくても3人揃えば良い知恵が浮かぶという意味だ。
しかし、頭も良く技術力にも長けている者が3人揃うとどうなるだろうか。
それはー
【無敵】
彼らは3人で無敵だった。
無敵になれた。
どれだけの数の魔物が居ても、どれだけ強い魔物が現れても3人揃えば完璧だった。
これはそんな無敵な3人の始まりと終わりの物語。
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