【完結】浄化の花嫁は、お留守番を強いられる~過保護すぎる旦那に家に置いていかれるので、浄化ができません。仕方がない。こっそり、ついていきますか~

うり北 うりこ

プロローグ


 ガタゴトと揺れる荷馬車の中、息を潜めていた。


  私、小野崎おのざき真理花まりかは夫である白樹はくじゅに何度頼んでも家に置いていかれるので、強硬手段に出ることにしたのだ。


  もちろん、一人で決定したわけではない。


 この世界には、穢れという生き物へ寄生して凶暴化させる黒い実態のないものがいる。

 その穢れによって、凶暴化した生き物を討伐するという危険な場所へ向かうのに、戦闘の素人である私がそう簡単についていけないことは分かっている。

 足を引っ張ることは明白だ。それでも、私にはついていかないといけない理由がある。


 穢れを浄化できるのは、私だけだからだ。


 だから、白樹以外の人物へ相談した。 そして、私がいても大丈夫なようにしてもらった上で、白樹にバレないように荷馬車に乗り込んだのだ。



 荷馬車の中は窮屈で、こんなところに隠れていることに自嘲が漏れた。


 私と白樹は、普通に生きていれば交わることのない人生だった。


 ここは、私たちが住む日本とは違う。神様がいて、東西南北の四つの国に別れている世界。


 そこへ、神から選ばれた花嫁として日本からこの世界へと来てしまったのだ。

 陽元ようげんという国のおさの花嫁として、国を守るための特別な力を与えられて。


  千年ぶりの浄化の力を持つ浄化の花嫁として、夫となった白樹はくじゅとともに国を守るはずだった。


 ……はずだったのだ。 それなのに、私はいつも屋敷に置いてけぼり。


 穢れを浄化するためについて行きたいのに、まだ私が連れて行けるようにするのに時間がかかるの一点張り。他の人に聞けば、準備はとっくに出来ているという。


 そっちがその気なら、勝手について行ってやる。

 確かに私は戦えない。だけど、浄化をすることは私にしかできない。


 心配だからって家に置いていくな!!

 いい加減、浄化のために連れていきやがれっつーの!!!!

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る