第7章:双子星

第61話:海洋惑星ソロル

リベルタスの星系を出たアルビレオ号は、知的生命体が存在する2つの惑星を持つ星系を訪れた。

2つの惑星の名はフラテルとソロル。

1つの恒星の周りを、まるでおいかけっこをするように2つの惑星が公転している。


フラテルは広大な森林を有する星。

ソロルは青く美しい海が広がる星。


アルビレオに残る過去データによれば、フラテルには半人半獣、ソロルには人魚に似た知的生命体がいるという。


水惑星生まれのカールが、久しぶりに広い海を泳ぎたいと言うので、まずはソロルに行ってみよう。


 宇宙船アルビレオ号

 艦長トオヤ・ユージアライトの日記より




青い海を、白い子イルカが泳ぐ。

本来の姿になったカールは、尾ビレで水を蹴り、勢いよく海面高くジャンプした。

空中でクルンと1回転して、盛大に水を飛ばしながら着水するカールは、正に水を得た魚だ。

水中を高速で進み、勢いをつけて飛び上がる。白いイルカは青い海によく映えた。


「楽しそうだね、カール」

「こんなに広い海なんて、アクウァ以来だな」


アイオとトオヤは、水上移動用のボートで寛ぎながら、カールの単独イルカショーを眺めている。

仲良く肩を寄せ合って座る2人は、バカンスを楽しむ恋人たちのように見えた。


「カールすご~い!」

「かっこいい!」


子供たちが歓声を上げる。

カール以外の子供たちは、海を見るのも初めてという子が大半を占めている。

みんな泳ぎ方を知らないので、救命胴衣を着けて水に浮かんでいた。


「旅の方、ようこそソロルへ。その白い鳥のような宇宙船ふねは、アエテルヌムの使者御一行様でしょうか?」


海面の騒がしさで気付いたソロル星人たちが、海面まで浮上して問いかける。

彼等は熱帯魚のように鮮やかで美しい色の髪や瞳や尾ビレを持つ人魚の姿をしていた。


「はい。アエテルヌムの宇宙船アルビレオ号のメンバーです。光エネルギー補給のため、しばらくこの星の近くに滞在させて下さいね」

「承知致しました。ごゆっくりどうぞ」


アイオが話すと、人魚たちの1人が微笑んで承諾する。

アエテルヌムの星系はまだ遠いが、この星も過去に友好関係を築いたと記録に残されていた。


「あちらの白い子は、ここと同じ環境の生まれですか?」


はしゃいで泳ぎ回る白い子イルカを不思議そうに眺めて、別の人魚が問いかける。

同じ水棲人ではあるものの、上半身が人間のソロル星人と、イルカ姿のアクウァ星人とでは、水中での移動速度が段違いだった。


「あの子の名前はカール、水惑星アクウァから加わったメンバーです」

「アクウァ、初めて聞く星の名前ですが、きっとここと同じ青い水の星なんでしょうね」


そんな話をしながら、トオヤとアイオと人魚たちは、元気いっぱいジャンプするカールを眺めていた。

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