第6章:作られた生命

第51話:惑星リベルタス

惑星ベスティアを離れたアルビレオ号は、次の星系へとワープした。

光エネルギーの補給に訪れたのは、惑星リベルタス。

その星には農業と牧畜が盛んな国があり、僕たちは艦内で収穫した作物を、リベルタス人が食べられるように調整して物々交換に出してみた。

結果は好評で、僕たちはリベルタス産の農作物や肉などを手に入れる事が出来た。

トウモロコシが特に喜ばれたみたいだよ。

農家から種や苗も分けてもらったので、後でアルビレオの畑に植えよう。

こちらからも、収穫した作物から採れた種を交換に出した。

いずれはこの星で、地球由来の作物が採れるようになるかもしれない。


 宇宙船アルビレオ号

 艦長トオヤ・ユージアライトの日記より




「とうちゃん、これいい匂いがするから食べ頃だぜ」


果樹園で果物狩りを楽しむメンバーで、特に張り切っているのはマヤ。

枝にぶら下がる果実の中から、良い物を選んで採集している。

薬草園で農作業をするようになってから、植物系の良し悪しを見極める特技に目覚めたマヤは、野菜や果物選びに長けていた。


「おお、坊や凄いな。うちで働かないか?」


農園の人が感心してスカウトするくらい、マヤの農作物に関する目利きは優れている。


一方……


「お~いトオヤ、ここの果実酒なかなかイケるぜ」

「居酒屋に仕入れとくからな」


アルビレオの酔いどれオヤジコンビは、相変わらずである。

農園の果実を使ったお酒の試飲コーナーにて、早くも出来上がりかけていた。

ブレないオッサンたちに苦笑しつつ、トオヤはマヤがオススメする果物を受け取る。

ハート型の赤い果実は、イチゴとサクランボを足したような味で、甘酸っぱくて美味しかった。

モグモグしているトオヤの背後で、オヤジたちは選んだ酒を箱詰めしている。

艦内の居酒屋は、しばらく新入荷のお酒で盛り上がりそうだ。



ティオ&レシカ夫妻と双子の養子たちは、近くの森で狩りの真っ最中。

農園の持ち主が所有する森で、狩猟許可はとってある。

アルビレオ乗組員用の短銃ハンドガンは持ち主に合わせてつくるオーダーメイドで、ニイとミイに扱いやすいものを作ってもらっていた。


「獲れた!」

「お、やったなニイ!」

「血抜きは任せて!」

「ミイってば、女の子なのに血とか平気なのね」


ティオに教わって短銃の扱いがかなり上達したニイは、見事に獲物を仕留めている。

ニイの射撃は、このまま育てばいずれは狙撃手としても活躍出来そうな素質があった。

ミイは魚を捌く技術の延長線で、ニイが獲った獲物の血抜きなども難なくこなす。

食材の下処理なども覚えた彼女は、アルビレオの厨房に欠かせない存在になりつつあった。



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