第17話:ベガの防壁

僕はベガの防壁バリア能力を増幅させて、惑星アクウァを覆ってもらう方法を考えた。

サイキックは精神感応テレパシーを使える者なら同調増幅アンプリフィアが出来る。

アルビレオのデータによれば、アクウァの民は全員が精神感応テレパシーを使えるらしい。

大昔の情報だから今も同じかは分からないけれど、僕が実際に接してみた感じでは今も使える気がする。

僕はアクウァの人たちにベガの防壁バリア同調増幅アンプリフィアしてもらい、隕石群の衝突を防ぐ事を提案した。


 宇宙船アルビレオ号

 艦長トオヤ・ユージアライトの日記より




『アクウァに残っている皆さん、生きる事を諦めないで下さい。隕石群の衝突を防ぐため、防壁バリア能力者のベガに協力をお願いします』


トオヤの精神感応テレパシーが、静かに最期の時を待っていたアクウァ人たちの心に流れ込む。


『大気圏外で僕と戦闘班の狙撃手スナイパーたちが、巨大隕石を砲撃で砕きます。その破片からこの惑星ほしを護るために、ベガが防壁バリアを展開します。皆さんにはその力の同調増幅アンプリフィアをお願い出来ますか?』


その呼びかけに、アクウァ人たちはしばし考えている気配が感じられた。

彼等は隕石群の飛来に抵抗する術を持っていない。

だからもう死の覚悟を決めて、子供たちに与えられる物は全て渡して送り出している。

第三王子カールは幼い子供たちと共にアルビレオ号に用意されたプレイルームで過ごしながら、時折父や兄たちを想って目を潤ませていた。


同調増幅アンプリフィアはこの星の民なら誰でも出来ます。でも何故そこまでして下さるのですか? 私たちは知り合ってまだ半月ほどですし、子供たちさえ無事なら充分ですよ』


ルウカ王が人々を代表して言う。

それはアクウァの民の総意であると感じられたが、トオヤは引き下がらなかった。


『いいえ。惑星ほしが滅びる危険、それの対抗策を知りながら放置するなんて、僕たちには出来ません』

『俺たち地球人は、母星に住めなくなる悲しさを誰よりも知ってるからな』


トオヤの言葉にベガが続く。

地球人は故郷の惑星に住めなくなり、今もコロニー暮らしをしている。

トオヤたち移民団は、もう二度と地球に帰れない覚悟を決めて出て来ている。

同じ立場の子供たちの気持ちは、もしかしたらアクウァの大人たちよりも分かるかもしれない。


『助けられるものは助けたい。それが僕たち移民団の総意です』


トオヤは、アクウァの人々にはっきりと意志を伝えた。


大気圏外では、ティオやレシカたち狙撃手スナイパーが、隕石群の撃破に備えて兵器を調整している。

アクウァ人たちの協力が得られない時は、隕石をとにかく細かく砕いて、大気圏に突入しても地表到達前に燃え尽きるようにするつもりだ。


『……分かりました。』


国王ルウカは、トオヤたちの意志の強さを感じて言う。


『アクウァの民は、ベガさんの力を同調増幅アンプリフィアします』


ルウカが、白いイルカに似た姿から人型に変わり、微笑んでベガに片手を差し伸べる。

ベガはその手を取り、自信に満ちた笑みを浮かべて握手した。


防壁バリアへの衝撃がなるべく小さく済むように、僕も全力を尽くします』


トオヤは握手している2人の手に自分の手を被せながら、全てのアクウァの民に告げた。


隕石群の飛来まであと半月、地球人とアクウァ人は力を合わせて、滅亡の運命に抗う。

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