第2章:水の惑星

第11話:旅の始まり

最初の空間転移ワープ成功。

僕たちはたった1回のワープで銀河系を抜け出した。

これから僕たちは、アルビレオの航行データを頼りに宇宙そらを進むんだ。

コールドスリープに入った移民メンバーも、未来を託された卵や種たちも、異常は無く眠っている。

宇宙飛行士たちは第2コロニー【メラク】から譲り受けた一部の農作物を栽培し始めた。

トマトやキュウリやナスはすぐ育つから、そのうち食卓に出るかな?

艦内の生活エリアは地球人が暮らしやすいようにカスタマイズされて、なかなか快適だ。

アイオはコロニー暮らしで覚えたお菓子作りを始めた。

一度食べた事がある物は再現出来るらしい。

今日も厨房に入って何か作っているみたいだよ。


 宇宙船アルビレオ号

 艦長トオヤ・ユージアライトの日記より



「トオヤ、お菓子を試作したんですが、食べてみませんか?」


艦長室に持ち込んだパソコンで日記を書いていたトオヤに、アイオが調理室で用意した紅茶と菓子を届けに来た。


「ありがとう。いただくよ」


トオヤは受け取ると、湯気の立つカップを口元に運ぶ。

お菓子は苺のシロップ漬けが乗ったタルトで、サクッとしたタルト生地、甘さ控えめのホイップクリーム、甘酸っぱい苺の美味しさが味わえる。


「美味しい。アイオはパティシエになれそうだよ」

「船内でお店でも開きましょうか」


お菓子を褒めたら冗談が返ってくる。

アイオは人間と変わらない反応をするので、トオヤは船の端末というよりパートナーのように感じていた。


艦内は地上やコロニーのように重力や空気があり、普通に生活する事が出来た。

重力や空気を発生させる機能は、トオヤたち宇宙飛行士が持つ小型宇宙船にもある。

宇宙での生活を余儀なくされた地球人類は、その分野では高い技術を得ていた。


「地球へ来る途中で補給が出来そうな惑星を幾つか発見したので、寄ってみましょう」


探索船アルビレオは、地球を見つける前に様々な惑星を発見し記録していた。

それらの惑星にはまだ知的生命体がおらず、D因子を無効化する遺伝子も存在しなかったため、情報を記録しただけで離れたという。


アルビレオは光エネルギーで稼働する宇宙船で、エネルギー補給は恒星が見える位置にいれば可能、月に停泊していた時は太陽からエネルギーを貰っていたらしい。

その端末であるアイオはアルビレオからエネルギーを貰う事で生存出来る。

トオヤも今はアルビレオが存在する限り、飲まず食わずでも衰弱する事は無い。

アイオとトオヤにとって、食べ物や飲み物は嗜好品になっていた。


しかし他の乗組員はそうはいかない。

コロニーを出る際に米・小麦粉・乾燥野菜・乾燥果物・調味料など長期保存出来る食料と水は確保してきたけれど、補給出来る惑星があるならしておいた方がいいだろうという事になった。


「間もなくウェントゥスという惑星に接近する。惑星調査と物資の補給を頼む」


艦長トオヤの指示で、乗組員は数人ずつグループを組んで小型艇に乗り込んで待つ。

目的の惑星が見えてくると、アルビレオ号は惑星の引力が及ばぬ距離を保って待機し、小型艇に乗った調査班が大気圏内へと降下していった。

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