第7話:真夜中に起きる事
「ベネトナシュにいる間は、ここが君の家だよ」
街の見学や買い物を終えた後、トオヤはアイオを自宅に案内した。
政府から支給されたばかりの住居はリフォームからそれほど経っておらず、真新しい。
コロニーの子供たちは成人するとそれぞれに住居が与えられる。
トオヤも先日から独り暮らしを始めたばかりだった。
「水道やシャワーの使い方は分かる?」
「はい。トオヤが使い方を把握している道具なら分かります」
自宅の設備を見せながら聞いてみると、アイオは日常生活を問題無く送れる事が分かった。
とりあえず道具の使い方が分からなくて困るような事は無いかもしれない。
「こっちの客室を使っていいよ」
そう言って来客を泊める部屋にアイオを案内した後、トオヤは自分の寝室へ行って就寝した……
……筈だった。
(……どうしてこうなった……?)
真夜中、自分のベッドに入ってウトウトしていたトオヤは目を覚まし、軽く困惑する。
客室で寝ている筈のアイオが来ていて、隣でスヤスヤ眠っていた。
(睫毛長いな……)
寝顔をじ~っと眺めて、トオヤは心の中で呟く。
美少年は寝顔もやっぱり綺麗だった。
翌朝……
「眠れなかったので、トオヤに添い寝してもらいました」
「というか、僕が添い寝してもらった気がするよ?」
目を覚ましたアイオは、ニコニコしながら言う。
軽くツッコミつつも、トオヤは添い寝された事は嫌ではない。
その後、トオヤとアイオは一緒に寝るようになった。
数日後、地球政府はアイオの提案を受け入れ、移民する者の選定を開始した。
移民メンバーはアルビレオ号の所有者となったトオヤを筆頭に、乗組員となる宇宙飛行士たち、サポート役のアンドロイド、コールドスリープで肉体の時を止めて運ばれる一般人などで構成される。
マイナス196℃凍結させた受精卵、卵子、精子も一緒に運ばれる予定となった。
「よお、俺も行くぜ。よろしくな」
「アルビレオ号を知る者として、行かない選択肢は無いな」
「アタシも行くわ。よろしくね」
選定された宇宙飛行士の中には、月地下の探索に参加したベガ、ティオ、レシカも入っている。
外宇宙に出られると聞いてほとんど全ての宇宙飛行士たちが立候補し、その中からトオヤが知る者を優先的に選定していた。
「私も同行します。よろしくお願いします」
犬型アンドロイドのライカもいる。
移民に同行するため、ライカは開発者テンゲ博士からトオヤに譲渡された。
「私には【心】がありません。だから【心】を貰いに行けとテンゲ博士に言われました」
シェパードという犬種そっくりなライカは、そう言ってトオヤを見上げる。
テンゲ博士は多くの人工知能を生み出してきた天才科学者、それでも機械に心を与えるには至っていない。
「ライカの【心】、貰えるといいね」
「惑星アエテルヌムの技術なら、ライカにも【心】を移植出来ると思いますよ」
トオヤは穏やかな眼差しでライカを見つめて言う。
同じ所有者のもの同士になったアイオも、そう言ってライカに微笑みかけた。
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