7 世界大会GERO(ゲロ)
九条さんの相談とはわたしたちがやりこんでいる格闘ゲームメディウム・オブ・ダークネス』が今年のGEBOに選ばれなかったことだった。
世界大会をふくめた大会もいまのところ動きがない。時代は3D格闘全盛期。『メディウム・オブ・ダークネス』のような2D格闘ゲームは時代遅れなのだろうか。
「じつはあたくしはアーケードゲーム雑誌アーケードユートピア元編集部の方と相互フォローでして……。
彼が言うことには格闘ゲームの世界大会が一二月に日本で開催されるそうです。その名も
「
姫川さんも初耳らしい。
「いつも思うんだけどさ。語感って知ってる? なんか汚いのよ」
折笠さんが眉根をひそめた。
「GEROは今年で十年目の由緒正しき大会です。有名タイトルよりニッチタイトルを多く採用することで新規参加者を開拓する意図の小規模の世界大会です。
そしてGEROの公式種目のひとつに『メディウム・オブ・ダークネス』(MOD)が選ばれる可能性が高いそうです。
MOD大型アップデートで実装される三対三の団体戦モードでは先手一本の勝抜戦で試合ができるそうです。
さらに前のラウンドで減らした体力は、タイムの三分の一しか回復しないとか。そして一番重要なポイントなのですが三人一組・ひとり一キャラクターを受け持つ団体戦という特殊ルールが採用されるそうなのです。GEROでも団体戦モードが採用される可能性が高い。つまり?」
「あたしたち全員参加できるね! 三人一組にはひとり足りないけど」
コトジョ組は三年生(姫川天音・折笠
すべての合計は八人。三人一組のチームをつくるにはひとり足りない。
「あたくしたちは全員GEBOのオンライン予選通過者。参加資格は十分です。コトジョ組と鳳組の予選通過者でメンバーを組みませんか? 姫川さん。コトジョの皆さん。どうです? やりませんか?」
「GEBOの優勝者の韓国人プロゲーマーの方も参加するんですか?」
わたしこと鳴海千尋は質問した。
「確定ではないですが、おそらく。GEROの情報は来月にも解禁されるそうです」
九条さんは黒曜石をくりぬいたような瞳を輝かせた。
「(小声で)ヒメ。あのことは大丈夫?」
折笠さんが姫川さんを気遣う。あのこととは『余命』意外に考えられない。
「なんとかなるって」姫川さんは一同を見わたした。
「みんな、やろう!」
「ひとつだけ懸念がございます。日にちがアップデートからまもなく新規キャラクターをやりこむ時間がないことです」
「それはほかのプレイヤーも同じでしょう。みんな準備はいい? あたしたちの人生はあたしたちがルール! シナリオを描くのはあたしたちだ! これからは奇跡のジェットコースターだよ!」
みんな歯を見せて微笑んだ。
目標が決まった。一二月。日本で開催される世界大会GEROで優勝を目指す!
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