異世界転生する勇者のために、「ハンバーグ」を開発します!!
@KiBno
プロローグ
国歴1265年、フロトーミ王国は未曽有の危機に瀕していた。邪知暴虐の限りを尽くす魔王ドゥラッサと、その影響を受けた多数の魔物の存在によって、国土は荒らされ、民衆は蹂躙され、このままでは王都を魔の手が覆うのも時間の問題であった。今日も王が住むモモ城には、魔王の眷属と戦闘したフロトーミ軍の一個師団が壊滅し、隊員5629名全員が死亡したという報が入ってきた。
連日、耳をふさぎたくなるような報告が入っているというのに、国王は一人国営の図書館で書籍を読んでいた。一般国民に開放されている1階、2階ではなく、歴史的、科学的に貴重な資料や国家機密情報も扱う地下3階のさらに奥、金庫室の中には、禁術を記した巻物が厳重に保管されている。国王が読んでいる重厚な革の背表紙にはこのように書いてある。
『並行時空上の任意の生命体の半強制的な亜空間転移における具体的な方法論、及びそれに伴うバタフライエフェクト抑制に関する幾つかの予想』
積み重なった羊皮紙の束には、これ以外の書籍からも取ったであろう無数のメモと、その隣には書き潰した羽ペンのペン先が、これも無数に散らばっている。
国王の元にもう一人現れた、王女もまた目の下にクマを作り、両手には水晶を抱えている。普段は簡単に扱っているはずの石の固まりも、疲れによって美しいだけの重りになってしまった。
国王は最後の書籍を閉じて初めて王女の存在に気付いた。
「おお、フィコンか、どうだったか、何かわかったか?」
「はいお父様、ハンバーグです!」
異世界転生する勇者のために、「ハンバーグ」を開発します!! @KiBno
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