第22話 福岡県民、ときめく。
特別来賓室で、団長のお父様と初対面。
ジョージがお茶を運んでくれたけれど、手が震えている。
お父様は侯爵閣下だとは聞いていたけれど、それ以外の情報は知らなかった。何で聞かなかったんだろうと今更後悔。
「昨日は立ち会えなくて済まなかったね。妻が煩かっただろう?」
「いえ、とても楽しい時間を過ごさせていただきました。こちらこそ急に訪問してしまい、大変申し訳ございませんでした」
軽く頭を下げると、またクスリと笑われた。
「普通に話して構わないよ。息子からは聞いている」
何を聞いているんだ。そして、何を言っているんだあんにゃろめ!
「不敬罪にならんですか?」
「はははは! あぁ、大丈夫だ」
低い笑い声が腰に響く。
団長のお父様が格好良過ぎる。
団長が年をとったらこうなるのかと思うと、ときめきとワクワクが綯い交ぜになって、動悸が激しくなってしまう。
団長のお父様と色んなことを話した。
あまりにも会話が上手くて、ずっと話していたいとさえ思える。
団長のお父様は、国王陛下の首席秘書官なのだそうな。
ドン引きするほどに大物だった。
「おや? あの子はそんなことも話していなかったのかい?」
「いえ……ウチがちゃんと聞こうとしとらんかったんやと思います」
諸々の事情から。
だけどこれからいっぱい話していこうとは思っていた。
初っ端から躓いてしまっているけども。
団長の子供の頃の話を聞いた。
彼が名前を嫌う理由も。
本当は彼から聞きたかったけど。
「君に不快な思いをさせたのではないか、と心配になってね」
今日の訪問はそういうことだったらしい。
「お気遣いありがとうございます」
「カリナ嬢、これからも息子をよろしく頼むよ」
「はい」
穏やかな雰囲気で面会が終わる、と思っていたのだけれど、やっぱりというかロイ団長が乱入してきた。
「父上⁉」
団長は自分抜きだったことがとても不服なようだった。
「全く。少しは落ち着いたかと思ったが。カリナ嬢の方が精神的には随分と大人なようだな」
団長のお父様が私の目の前にくると、ポンポンと頭を撫でられた。
大人だと言いつつ子供扱いなのは突っ込んだらいけないのだろうか?
案の定、団長が怒り出したが、流石実父というところだろうか。動じず相手にせずで軽やかに笑いながら退室していった。
――――あれは、たぶんわざとやろなぁ。
そう思いはするものの、頬が熱を持つのは止められず。
剣呑な雰囲気を醸す団長と二人きり。
「……何を考えているんだ?」
「何をっち?」
「未婚の女性が、密室で男と二人きり。様々なことを疑われるぞ」
――――なるほど、ね。
「ウチを、疑うったい?」
「っ! 違っ……」
顔面蒼白になった団長は少しだけ可愛くて憎たらしかった。
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