襲撃

 アレクシスはパメラの言葉に異論を唱えなかった。むしろ何かをイメージとしてパメラに伝えた。


 それは彼が把握した身元不詳者と護衛たちの位置に関する情報。


 パメラはそれを土台に距離を計算し、瓦礫を片付けながら時々調査した瓦礫自体と魔法の耐久度を土台に威力を測った。


 ――砲撃魔法〈ゼノンの威圧〉


 パメラが展開した魔法陣から巨大な魔力砲が発射された。


 無生物と魔法だけを破壊し、生物にはダメージを与えない制圧用魔法。それを護衛たちには触れないように絶妙な距離を計算して放ったのだ。


 坑道が再び崩れないように支持する魔法をパメラが展開する間、アレクシスは開かれた道に沿って突進した。


 ――霊氷魔法〈霊結の剣〉


 アレクシスは氷の新しい剣を作り、振り回した。姿が公然と明らかになった身元不詳者たちは武器を抜いて彼の一撃を防いだが、眉をひそめて後に退いた。


 身元不詳者たちの姿は一言で言えば平凡だった。平凡な服と外見はパメラたちを密かに監視していた身元不詳者らしくない姿だった。


 しかし、あまりにも平凡でありふれた姿だったため、逆に特定できる要素もほとんどなかった。所属や出身が分かる要素がほとんど見当たらず、特に服はアルトヴィア帝国ならどこでも買えるものに過ぎなかった。武器や魔道具も製作地を特定するのが難しかった。


 人数は四人。アレクシスが探知した身元不詳者の数と一致した。


「一旦聞いてみよう。貴様らは誰だ?」


 アレクシスは彼らを睨みつけて尋ねたが、身元不詳者たちは答えなかった。


 しかしアレクシスに露骨な敵対感を示さなかった。彼らの感情は敵意よりも当惑に近かった。自分たち同士で視線を交換し、どうすればいいのか確認しているようだった。


 アレクシスはまず彼らが敵だと確定したわけではないので警戒しながら待った。その間、パメラがアレクシスの後ろに立った。


 身元不詳者たちはパメラを見て決心したような顔で武器を持った。


「この御方がどんな御方か知ってそんな態度を取るのか?」


 アレクシスは剣をねらって言った。一種の最後通牒だった。


 しかし、身元不詳者たちはその言葉には答えず、パメラとアレクシスを交互に見た後に話した。


「小僧を始末しろ。姫殿下を連れて行く」


「そうか」


 アレクシスは剣を両手で握り、姿勢をとった。


 パメラも身元不詳者の話を聞いて敵対的な目になったが、アレクシス眼差しと魔力が噴き出す冷気に比べればまだ穏やかな方だった。


「貴様らのような未熟者たちを刺客にするとは。裏が誰かは知らないが有能な奴ではないようだな」


 簡単な挑発の直後、アレクシスの姿が身元不詳者たちの先頭の目の前に現れた。


「!?」


 アレクシスの氷剣を相手はかろうじて防いだ。だがさっきアレクシスの初撃を防いだ剣は半分ほど折れていたし、今回の一撃で完全に真っ二つに割れた。


 彼は慌てて引き下がり、交代するように他の者たちが剣と短剣のような武器を持ってアレクシスに飛びかかった。しかし鍛えられた肉体に身体強化魔法まで重なったアレクシスを倒すことはできなかった。むしろ彼らが一度ずつ武器を振り回すよりも、アレクシスが五回十回武器を振り回す方が速かった。


「ば、馬鹿な!?」


「まだ見習いなはず……」


「騎士見習いを見下したのか。間抜けな奴らだな」


 身元不詳者たちはそれぞれ武器はもとより、防御や牽制のための魔道具も備えていた。しかし彼らがどんな武器を取り出しても、魔法を駆使しても、アレクシスの氷剣に触れた瞬間凍りついて粉砕された。


 霊氷魔法〈霊結の剣〉――魂まで凍りつく力で物質も魔法も粉砕する特殊な魔法剣。まだ幼い騎士見習いであるアレクシスの力はまだ完全ではないが、目の前にある身元不詳者の魔法と装備程度は触れるだけで壊すほどの力があった。


 にもかかわらず、身元不詳者たちも容易な相手ではなかった。


「距離を取れ。あの剣には遠距離攻撃能力がないぞ」


 身元不詳者たちは直ちに後に退いた。ある者はアレクシスの後方に向かおうとした。


 しかしその時、パメラの魔法が起動した。


 ――防御魔法〈動く城壁〉


 アレクシスのすぐ後ろに魔力の防壁が現れた。通路をふさぐ壁だった。それはアレクシスが前進するたびに一緒に前進し続け、アレクシスのすぐ後ろを維持した。


 当然、身元不詳者たちはアレクシスの後方を占めることも、パメラに向かうこともできなかった。


 そしてもともと通路自体がパメラの魔力砲で破壊されてできただけ。それほど長くはなかった。そのため、アレクシスとパメラが彼らを隅に追い込むのはあっという間だった。


「くっ……」


「最後に聞こう。貴様らは何者だ? 誰の命令を受けて何をしようとしているのか?」


「貴様こそ姫殿下を誘惑して何をするのだ?」


 アレクシスは眉をひそめた。


 適当な言葉で時間を稼ぐのかと思ったが、彼らの表情や眼差しは真剣だった。さっきまでは微弱だった敵意がようやく強くなった。


[ふむ。どうしましょうか?]


[演技かもしれませんし、間違った情報が植えられたり、魔法で操られたりするかもしれません。とにかく私たちがすべきことは変わりません。詳しい話は制圧した後に聞いてみることにしましょう]


[かしこまりました]


 アレクシスは右手で剣を持ったまま、左手で別の魔法陣を描いた。


 この程度の者たちならあえてパメラの助けがなくても一人で制圧できる。しかしせいぜいあの程度の者たちなら、あえてアレクシスでなくても普通の騎士見習いたちは一人で制圧できるほどだった。


 学年首席のアレクシスが傍にいる状態でたかがあんな者たちを送ったということは、あの者たちをえさにして本命が別にあるかもしれない――そうした考えをもとに、アレクシスは最速で彼らを制圧する準備をした。


―――――


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