懲戒と制止
何か騒がしいわね――目を覚ます前からパメラはそう思っていた。
「うーん……?」
目を覚ますと見えるのはおなじみのキャノピーと天井……ではなかった。シンプルな模様と装飾しかない白い天井は、パメラにとって非常に見慣れないものだった。
起きたばかりの頭がそれが皇居の病室であることに気づいた直後、パメラはゆっくりと立ち上がった。
「姫様! ご起床になりましたか?」
「ごめんね、心配かけたみたいね。でも私がどうしてここに……?」
一応周りの反応を見て条件反射で謝罪からしたパメラだったが、自分がここに来ることになった前後の事情は思い浮かべずにいた。
「廊下でいきなり気絶されました。お覚えにならないのでしょうか?」
「えっと……そうだったような気もするわね」
考えてみれば倒れたようだったことは思い出すことができた。しかしその前後の状況は依然として曖昧だった。
「誰かを見た気がするけれど……ぐっ!?」
「姫様!?」
「大丈夫、ちょっと頭が痛くて」
「もしかして倒れられた時にお怪我を?」
「そんな風の痛みじゃないわ」
突然頭の中で記憶が氾濫した。ほとんどはわけの分からない記憶だった。ここではなくどこかで、自分ではなく誰かの視線で世の中を眺めるのが。
その中でたった一つ、パメラ自身の目で見たものが混ざっていた。
「そう、騎士たちを見た気がするんだけど……?」
「その通りです。彼らは現在、謁見の間で懲戒について議論しています」
「懲戒!? いきなりどうして?」
「その……」
パメラは話を聞くやいなや病室から飛び出した。病室に運ばれながら部屋着に着替えた状態だったが、病室で見つけた大きなガウンだけを羽織って隠した。メイドたちが慌てて自分を呼んだりついてくる音が聞こえたが気にしなかった。
パメラが忙しい足取りで訪れたのは謁見の間だった。
「父上! 失礼いたします!」
いきなり扉をガタンと開けて入ってきたパメラに、ほぼ全員の視線が集まった。
玉座に座っている男はパメラと似た赤髪赤眼を持った美中年だった。秀麗な目鼻立ちは確かに美男の範疇に入るが、外見だけではすでに四十を超えているような男だった。重厚で派手な服装とマント、そして何よりも頭上に載せられている冠がこの国の皇帝であることを示していた。
彼の正面にひざまずいているのは、パメラが倒れる直前に見た騎士見習いの少年だった。他の騎士たちはまるで彼を間に置くかのように二列に並んでいた。
騎士見習いの少年を除く全員がパメラを見たが、彼女は少しも気後れしなかった。ややもすると無礼だと言われるほど堂々とした眼差しが父親の皇帝を睨んだ。
「父上。今のこれは一体何をされているのでしょうか?」
「騎士見習いアレクシス・ネオ・タルマンの懲戒を議論している」
「それはすでに存じます。私が倒れた責任を追及する懲戒だということも聞きました。私が伺いたいのは、なぜその責任を騎士見習いに問うのかということです」
「服もきちんと着ないまま走ってくるほどそれが大事だったのか?」
「もちろんです。偶然、目の前で皇女が卒倒したという理由だけで無念に懲戒を受ける人がいますから」
パメラは少年を見た。皇帝の方を向いたまま頭を下げていたので、顔は見えなかった。だから彼の感情を垣間見ることはできなかったが、彼が困っているならできる限り助けたいと思った。
「父上。私が倒れたのはあの騎士見習いさんのせいだとお思いになりますか?」
「……そういう名目で話し合っていたところだ」
「それならあの御方と全然関係ありません。私自身、正確な原因はわかりませんけれど、あの御方が私に何かをした情況はありませんでした。その距離で他の騎士の方々もいらっしゃるのに何かを飛ばしたわけでもなく、魔法を使う気配も感じられませんでした」
魔法――世界に蔓延した『魔力』というエネルギーであらゆる現象を起こす技術。理論上、想像するすべてのことを実現できるそれなら、遠くから人を気絶させることもできる。だがそんなことをすると魔力の気配が感じられる。少なくともパメラは倒れるまでそのような気配を感じなかった。
「それは他の騎士たちも証言した。そして倒れている間に医師の検査も終えたから知っている。お前が倒れたのは彼とは関係ない、これがお前の見解で間違いないのか?」
「はい。ですから不当な懲戒はどうかご中止を」
パメラは皇帝への無礼によって怒られることまで覚悟して言った。その決然とした気持ちが伝わったのか、あるいは他の理由があるのか、皇帝は困ったようにため息をついた。
「そう言っているが、アレクシスよ。娘に怒られている余をこれ以上困らせるのはやめてくれないか?」
「……はい」
少年がゆっくりと立ち上がった。相変わらずパメラの方を振り向いていなかったが、その動作には何の揺れもなかった。
それよりパメラは皇帝の言葉が気になった。
「父上? どういう意味なんでしょうか?」
「お前が倒れるやいなや謁見を要請した。そしてお前が倒れたのが自分のせいだと言って懲戒を要請した。おかげさまで余もとても困ったところだったな」
「ええ?」
パメラは口をポカンと開けそうになった。辛うじて我慢したが、大きく開いた目が驚いた心をそのまま見せてくれた。
騎士の中で黒髪黒眼の強靭な男が口を開いた。騎士団長だった。
「殿下がアレクシスをご覧になった直後に意識を失ったのは事実。責任の所在をまったく追及しないと皇室の威信に影響があります」
「騎士団長、そなたは相変わらず余計なことを気にしているな。そなたがそんな人間だから、そなたの息子があの歳でもうあんなことをしているのだ。そして証拠もなしに騎士を疑うのがむしろ皇室の威信に害を及ぼすものだ」
「どうせ些細な真似ですからね」
「ずうずうしいだな」
予想外の状況だったが、とにかく仕上がりが良ければ問題はないだろう。
だがパメラにはもう一つ用件があった。そこで彼女は謁見の間を出ようとする騎士たちを呼び立てた。
「ちょっと待ってください。アレクシスさん……でしたか」
近くでもう一度見ても、やはり前に会ったことのない顔だ。にもかかわらず既視感は依然として残っていた。しかも彼を見るやいなや思い浮かんだ名前は一体何だろうか。
「父上。しばらくこの御方とお話をしてもよろしいでしょうか?」
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