第16話 男と男のまぐわい?

 実は道中に俺は、大きな緑色のシルエットが特徴のドッス・コイジャーに命令を出していた。


“ケイル村に到着する少し手前で連れている兵士全員に夜営を取らせる”と。


 だから目の前にケイル村の明りが見えているにもかかわらず、兵士達は夜営を始めたのだった。


 俺は新鮮な空気を吸い込むために馬車の窓から乗り出し、大きく深呼吸する。とてもおいしい空気、空気に味なんかありゃしないと思っていた部類の人間だったが、こんなジェットコースター状態の馬車の中で日が沈むまで過ごし、疲れ切った体には馬車の中以外の気体を吸うことができることがうれしかった。


 馬車から顔を出して空気を味わっていると、ちょうど目の前を緑色の巨体が通り過ぎた。


 俺がコイジャーを呼び止めると、彼はいつものように額に汗をかきながら、こちらへ向かっている。長旅で汗をかき過ぎたのか、緑色の立派な背広は濃い緑色になっていた。


「なんでしょう、カエザル様」

「あそこがケイル村であってる?」

「はい、あそこに見える小さな明りがケイル村になります」

「ちょっとお願いがあるのだけど聞いてくれる?」

「もちろんです!カエザル様のいうことならば、いかようにも」


 俺は周りを見渡し、周囲の視線が馬車に向いていないかだけを確認すると、馬車の扉を勢いよく開けた。


 俺は巨体であるコイジャーの腕をつかみ、全力で馬車の中に引きずり込み扉を素早く閉めた。


「さっきなんでもいうことを聞くといったよな?」

「はい。カエザル様」

「今すぐお前が来ている服を全部脱いでくれないか?」

「え?服をですか?」

「さすがにカエザル様の前では……」

「恥ずかしがらなくていいから、同じ男だろ」

「いやそれは……」


 あまりにも脱ぎ渋るドッス・コイジャーにしびれを切らしてしまった俺は、暴挙に及ぶ手を下した。


「いっいやぁカエザル様ぁ」

「だから脱げって!」

「なりませぬぅーカエザル様ぁ」


 なぜか頬を赤らめるドッス・コイジャー。どこからその声がでているのだろう。日頃聞かない甲高い声。


「私にはぁーそういう性癖など、ございませぬぅーあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー」


 パンツ一枚になったドッス・コイジャー。

 まぁその、あれだ。見た目通りのふくよかな体だ。うん。

 恥ずかしがるドッス・コイジャー。


 俺も身に着けている衣類を脱ぐ。上着を脱ぎズボンを脱ぎ、シャツを脱ぎ。


「かっカエザル様、なっ何を!?服を脱いで御身を晒して何を?もしかして、私、ドッス・コイジャーにご乱心を!?」

「ちょっお前!!静かにしないか!!外に聞こえたらどうする!!」


 突拍子のないドッスの発言に俺は思わず彼の口をふさいだ。だがこの行為がドッスの誤解をさらに加速させた。


「いっいいですよ。カエザル様」


 ドッス・コイジャーは薄く目を閉じる。


 この展開どこかで見覚えのあるような……薄い本。女子たちがキャーキャーいう薄い本。


 男と男のまぐわい。

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