幽霊のユウコちゃんは、今日も楽しく生きています。

米太郎

第1話 ユウコは幽霊

 このクラスには、謎の少女『x』がいる。

 いつも一人で教室の端っこにいるのだ。


 別に、いじめが起きているとかじゃなくて、みんなには見えないっていうだけ。

 私にだけ見える、謎の少女『x』。

 いわゆる幽霊っていうやつだと思う。


 私は、昔からそういうの見える体質だからね。

 高校生にもなって、「幽霊が見える」なんてことを言い出すと、不思議ちゃん認定されちゃうから、みんなには言わないようにしているけども私だけが認識している、謎の少女『x』。

 なんだか不思議な子なんだよね。


 その子がいるのは、窓際の一番後ろの席。

 普通に並んでいる席のさらに後ろに一つだけ席が設けられていて、そこにいる。

 机も『霊体』なのか、周りのみんなには机も見えないらしい。


 その子は、いつもそこに座っている。

 私は、窓際から一つ隣の席。

 謎の少女『x』から見れば、斜め前の席にいる。


 なんだか気になっちゃって、私はいつも謎の少女『x』を眺めている。

 謎の少女『x』は、いつも席に座って、真面目に勉強したり、先生の冗談に笑ったり。

 喜怒哀楽が分かりやすくって見ていて飽きない。


 最近では愛着がわいてきて、『ユウコちゃん』って呼ぶようにしている。

 誰にもしゃべれないから、自分の中だけだけど。

 ユウコちゃんは、うちの制服と同じものを着ている。


 最初はうちのクラスの子かなって話しかけちゃったけれど、みんなから不思議がられたんだよね。

 その時は、笑ってごまかしたけれど。

 そこから、ユウコちゃんは私の事は認識しているらしくて、朝の挨拶は欠かさないでしているんだ。みんなにバレないように、隣の席の隣子りんこと一緒に朝の挨拶をする。


「おはよう!」


 隣子の朝は決まって、メイク直しから始まっている。

 顔をこちらに向けて来て、挨拶を返してくる。


「おはよう。見得子みえこは、今日もバッチリメイク決まっているね」

「もちろんっしょ! ‌そのために早起きしているもーん」


「はぁ、高校から家が近いって羨ましいよ。今度泊まらせてよ」

「いいよ! ‌じゃんじゃん来ちゃいなよ!」


「サンキュー」


 そう言いながら、隣子はメイク直しに戻る。

 私たちのやり取りを聞いて、ユウコちゃんはそわそわしている。


 いつも、挨拶されるのを期待して待っているんだよね。

 そういうところ、可愛い。


 声に出したら、みんなから変な目で見られちゃうから、ユウコちゃんにはハンドサインで挨拶する。


 二本指をくっ付けて、敬礼みたいにおでこにくっつけて。

 それで、口パクで挨拶する。

(チョリーッス!)


 そうすると、ユウコちゃんは嬉しそうに笑って、こちらに向かって何度も頭を下げてくる。


 私、こういうユウコちゃん、好きなんだよね。

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