第17話 クラスのおとなしい娘:久御山桃菜の場合(その3)
「どうぞどうぞ、上がって。いま誰もいないから」
久御山桃菜にそう言われて、俺は何となく気になりながらも「お邪魔します」と言って彼女の家に入った。
彼女の家は、山手通りと井の頭通りを越えた所にある高層マンションにあった。
確かに路線は違っても、俺の家とは大して離れていない。
歩いても20分はかからないだろう。
玄関から入ってすぐ右側が彼女の部屋らしい。
「コッチ、コッチ! ここが私の部屋!」
やけに嬉しそうに桃菜は俺を部屋に呼び入れた。
「どうぞ座って!」
そう言ってローテーブルの前に丸いクッションを差し出す。
「ありがとう」
俺は彼女の出してくれたクッションに座ると、何とはなしに部屋の中を眺めた。
部屋の大きさは六畳ほどだろうか。
勉強机のある壁は一面本棚となっている。
そこにはギッシリとマンガとラノベが並んでいた。
反対側にはベッドがあり、その上にも棚があって、雑誌やら同人誌っぽいのが積み上がっている。
(かなりのマンガ好きなんだな)
そう思いながら見ていると、その中に俺がネットで読んでいるマンガがあった。
異世界物だが、ネットでは途中までしか公開されていないマンガだ。
「久御山さんも、このマンガ読んでいるんだ?」
俺が背表紙を指さすと、彼女は嬉しそうな顔をした。
「ショウ君、このマンガ知ってるの? あんまりメジャーじゃないのに!」
「ああ、ネットで最初の方は無料で読んで面白かったから続きは購入したんだ。だけどなぜか途中からネットでは更新されなかったみたいで」
「続きは別雑誌に掲載になったみたいだから。それで私は書籍で買ったんだ、面白いよね、コレ!」
「主人公の感情の動きがいいんだよな。最初はアレだったけど」
「ヒロインだってだいぶ変わったよね。最初は主人公を警戒していたみたいだけど、段々と二人の距離が縮まって来て」
俺と桃菜はマンガの事で楽しく話した。
彼女は学校での大人しいイメージとは違って、かなりおしゃべりだった。
好きな事に関してはこんなに積極的に話すんだな、と俺は感じていた。
気が付くと一時間近くが経っていた。
そろそろ帰ろうかなと思った時だ。
「あ、私ったら、イッケナ~イ。話に夢中になっていてお茶も出してなかった」
「あ、いいよ、そろそろ帰ろうと思っていたから」
「そんなこと言わないで! せっかくだからもう少しお話しようよ。こんな機会は滅多に無いし……いまお茶とお菓子を持ってくるね!」
彼女はそう言うと俺の返事を待たずに部屋を出て行った。
そこまで言われて俺も「いや帰る」と言うほどの理由はない。
やがて桃菜がトレイにティーカップとケーキを二つずつ乗せて戻って来た。
「ケーキがあったから持って来たね、ここのフルーツケーキ、すっごく美味しくって……」
そう言って中腰でケーキを俺の前に置こうとした時だ。
斜めになった皿からケーキが倒れて落ちそうになった。
「あっ」
そう言って彼女は膝を着いて皿のバランスを取り、ケーキが床に落ちるのを防いだ。
だがその結果、トレイを持っていた方の手が疎かになり……
さらに惨事を招いた。
ティーカップに入れた紅茶の方がひっくり返ったのだ。
しかもそれは位置が悪く、ほとんどが彼女の右上腕部から背中にかけてかかったのだ。
「熱っ!」
彼女が悲鳴を上げた。
「大丈夫か?」
俺も思わず立ち上がる。
「熱い、熱い!」
彼女は不明を上げて、紅茶がかかったブラウスを脱ごうとする。
「そのままだと火傷する。早くブラウスを脱いで」
「ぬ、脱げない!」
慌てているためか、彼女は中々ボタンを外せない。
「手伝って!」
そう言われて俺も彼女のブラウスのボタンを下から外し始めた。
最後は半ば強引にブラウスを剥ぎ取る。
ブルン
予想外に豊かなバストが目の前に飛び出した。
女子高生らしい白いブラジャーに包まれた白い双丘は、見事なまでの大きさを誇っている。
俺は一瞬、その巨乳に目を奪われていた。
俺はそれを悟られないように「大丈夫? 火傷してない?」と尋ねると、彼女は背中を向けて「見てくれる?」と言う。
彼女の背中は白かった。
紅茶がかかった所だが、特に火傷をしている様子はない。
「見た所は大丈夫そうだけど……痛いとかそういうのある?」
見ただけでは分からないので、そう尋ねる。
「今は平気だけど……紅茶がかかったのは右肩の下くらいの所だから……少し触ってみてくれる?」
そう言われて彼女の白い肌に手を伸ばした。
指先でそっと触れる。
彼女の身体が微妙に反応したような気がした。
「痛かった?」
俺がそう聞くと、彼女は無言で首を左右に振った。
(なんかこの状況、やけに興奮するな……)
そう思った俺は、これ以上はマズイと思って立ち上がる。
「特に火傷はしてないみたいだけど、早く冷やした方がいいかもね。俺はもう帰るから」
すると彼女は俺の方を向いて立ち上がった。
再び彼女の見事なバストが俺の目に入って来る。
「ごめんね、私、ドジだから……」
「いや、大丈夫だよ」
「それで、あの……私って魅力ないかな?」
「え?」
「ほら、私、太っているから……」
彼女はそう言ったが、別に太っている訳ではない。
痩せてる方ではないが、むしろバランス的にはちょうどいい体型ではないだろうか?
「太ってるって事はないよ。むしろ……」
そこまで言いかけて俺は口を閉じた。
(ちょっと待て、俺、いま何を言おうとした?)
確かに彼女の胸は大きく魅力的だ。
そして色白のため、さらに肌が輝いて見える。
顔立ちだって派手さはないが、かなり整っている。
一般的に言って可愛い部類に入るだろう。
(でも俺がここで『胸も大きくて魅力的だ』なんて言うのはおかしいだろ)
しかし彼女はその先の言葉を聞きたがった。
「むしろ、なに?」
「いや、それは……」
「気になる……言って欲しい……」
そこまで言われて、俺は逃げられない気がした。
「魅力的だって思うよ」
すると彼女は俺にゆっくりと手を伸ばして来た。
そのまま背中に手を回す。
「本当に、そう思ってくれてる?」
彼女が甘さを感じさせる声でそう囁いた。
俺は自分の中で欲望がムクムクと沸き起こって来るのを感じる。
「思っているよ」
「嬉しい……」
彼女はそう言って腕に力を込めた。
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この続きは、明日正午過ぎの予定です。
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