第七話:聖女様と魔族の少年


「つまり勇者アルベルト様に魔王が倒され塵散りになった若い魔族の居場所を作る為に魔力を掻き集めていたというのですね?」


『はぁひぃ♡』


 サキュバスの娘は亀さんのような模様の縛り方で両手両足を背中に宙づりにされ赤い顔でよだれを垂らしながらはぁはぁ言っていた。

 リーリアはサキュバスからいろいろな技法で情報を引き出しエマリアルに聞く。


「聖女様、どうしましょう?」


「えーと、魔王はもう倒しましたし残った魔族も有力な者たちはもういませんわよ? 彼女のような力の弱い魔族はたいした脅威にはなりませんし問題無いのでは?」


「とは言え、魔族が街中を堂々とうろつくと言うのも問題でありましょうな」


 エマリアルたちはサキュバスを見る。

 と、いきなり声がした。



『貴様等! 我が同胞に何たるむごい仕打ちを!!』



 見れば裏路地に入る所から一つの影が。

 小柄な影はズカズカとこちらに向かってくるが、途端にエマリアルの表情が明るくなる。




「どすとらぁーぃぃくですわぁっ!!!!」




「はいっ? エマリアル様??」


「ふむ、もう数年成長すればそれがしの好みの男の子おのことなろうが……その額の角、貴様魔族であるな?」


 現れたのは魔族の少年だった。



『我はブエラ、誇り高き魔貴族の末裔。我が同胞を拘束するとは! 人間、ただでは済まんぞ!』



 彼、ブエラはそう言って手を横に振り啖呵を切る。

 が、エマリアルとリーリアは何やらコソコソ話し込んでいる。



「ねぇねぇ、リーリア! あれですわ、ああいうのが良いのですわ!!(こそこそ)」


「いやエマリアル様、相手は魔族ですよ? しかもどう見てもせいぜい十三歳位じゃないですか?(こそこそ)」


「でも私一目惚れですわ! ああ、あのような殿方と……ぽっ♡ そうだリーリア、いっそのこと彼を襲って私のバージンを捨てればいいのじゃないのですの?(こそこそ)」


「いやあんた、目的と手段が逆になってますってば! それに魔族相手に子供は出来ないんでしょう?(こそこそ)」


「ですから、とりあえずバージン捨てる為に!(こそこそ)」




『だぁーっ! 貴様等我を無視して何コソコソ話してるのだ!! くそう、とにかくラリスを放せ!!』



 ブエラと名乗った少年は地団駄ふみながらそう言う。

 無視されるのが相当いやらしい。


 しかしエマリアルが振り向きニタリと笑うと何故か背中にぞくりとするものが走る。



『な、何だというのだ貴様……』


「うふふふふふ、とりあえず捕まえて私の手元に置きましょうですわ。処置は後々に考えるとしてですわ♡」


 ブエラは知らず知らずにエマリアルから発せられる危険な雰囲気に後ずさっていた。



『あ、ブエルしゃぁまぁ~、この人たちすっごいんですよぉ♡ あらしぃ、もう帰れないれしゅぅ♡』


 エマリアルの後ろからはハートをバラまいていやんいやんと嬉しそうなラリス。

 ブエラは更に青ざめて一歩引く。



『お、お前らぁ』


「うふふふふふ、痛いのは最初だけですわぁ、すぐに良くなりますわぁ♡」



『ひっ!』



 バージンのくせして凄い事口走るエマリアルに恐怖を感じて逃げ出そうとするブエラだったが、哀れブエラは裏路地で悲鳴を上げるだけとなってしまうのだった。


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