洗濯機の裏は異次元

@mia

第1話

 洗濯機の裏は異次元だ。

 なくしてしまった靴下の片方は洗濯機の裏にあるらしいが、うちの家族はみんなズボラなので洗濯機の裏など掃除しない。まあ、母一人息子二人ならそんなもんだろう。でも、金に関することはちゃんとやっている。ただのずぼらじゃないぜ。

 同じ靴下を何足もセットで買うので片方なくなっても問題ない。なくしたと思ったハンカチが洗濯機の裏から出てくることもあるらしい。でもうちの家族はハンカチがなくなってもきっと気づかない。おそらくTシャツがなくなっても気づかないだろう。

 洗濯機の裏からハンドバッグやブーツの片方が見つかったという話を聞いたが、どういうことだろうか。ハンドバッグやブーツを洗濯機で洗うのか。洗面所で洗って洗濯機の上に置いたのか。そんなの持っていない僕には分からない。

 家族で住んでいたアパートから母親の実家に引っ越すことになった。荷物をまとめたり家電を業者に引き取ってもらったりと色々面倒だ。

 洗濯機の裏から六年と十ヶ月前に行方不明になった父親が出てきた。

 チッ、あと二ヶ月で失踪宣告できたのに。      

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

洗濯機の裏は異次元 @mia

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ