第21話 アカデミー
入学してからあっと言う間に二週間ほど経過した。授業も科目が一巡して自分の興味がある教科が分かってくる。やっぱりイーサラムについての授業が楽しい! 授業内容は魔法と言うよりもプログラミングに近い。イーサリズムが発達しているだけあって体系が整っていて、理系魂を刺激されるわね。他の面々もここでの生活のペースが整ってきたのか、周囲と関わることも増えてきた様子。
ユージーン王子は以前扉の中で言っていた通り国際情勢や経済に興味がある様子で、社会科の授業は特に真剣に聞いている。ノートもきっちり取っていて根は真面目なのよね。見た目は一番チャラいんだけど。マシュー王子は研究者タイプで生物学がお好きな様子。それだけではなく授業全般真面目に取り組んでいて、三王子の中では一番勉強を楽しんでいる感じがする。レジナルド王子は勉強はあまり好きではないのは前から分かっていたこと。でもまあ王子だけあって一定レベルの教養は身につけているし、前世で言えばちょっと不良っぽい感じ。三者三様のこの王子たちはクラス中の、いえ、学年中の女子の注目の的だった。さすが恋愛ゲームの攻略対象ってところかしら。
レジナルド王子は勉強よりも体育会系なもんだから、護衛であるレオとサイモンの二人と妙に気が合うみたい。授業の合間など、この三人が集まっている所をよく見かける様になった。私はと言うと女子同士ということでカーラと一緒にいることが増えた。彼女は私よりも年上のお姉さんだけど、かりんとしての私は彼女よりも年上。だから彼女も話しやすいのかも知れない。まあオタ話ができるわけじゃないんだけど、こうやって話せる女友達がいるのはいいわね。
「エマ、ちょっといいか?」
カーラと話しているところへレジナルドがやってくる。当然の様にレオとサイモンも一緒だったけど。
「以前にも話したと思うが、母が一度会いたいと言っていてな。良ければ週末にでも屋敷に招待したいんだが……」
「それは光栄ですわ」
「折角だから、ユージーンやマシューも一緒にどうだ?」
「俺たちまでいいのか? アナスタシア様はここに療養に来られているのだろう? 皆で押しかけたらお体に障るのでは?」
少し離れた場所に座っていたユージーンが言う。流石イケメンは気遣いが違うわね。
「いや、その母自身が是非と言っていたから大丈夫だ。カーラも是非きてくれ。俺の学友たちを紹介したいからな」
「私もいいの?」
ちらっとユージーンの方を見たカーラ。ユージーンが小さく頷いたのを見て、彼女もオーケーしていた。もう、夫婦じゃん! この二人、観察しているとどことなく通じ合ってるところがあって、恋人同士の様にベタベタする訳じゃないんだけど、割って入るのも無理な雰囲気。もう私の中では夫婦認定している。
それは置いておいて、これは絶好のチャンス。私はエマとして以前にアナスタシア妃には会っているけど、最終的にエマを殺害した人物でもある。アカデミーにいる限りそんなに絡んでくる人物ではないものの、良好な関係を構築しておくに越したことはない。この世界線でもレジナルドに特定のパートナーがいるわけじゃないし、自分と彼は飽くまで友達ですよアピールもしとかないとな。
そうだ、もう一人注意すべき人物がクラス内にいたわね。シアーラ・マクニース。彼女については未だに情報が少なくて何者なのか不明なまま。授業態度は真面目なんだけど誰かとつるんでる様子はない。近寄り難い雰囲気の女性なので、他のクラスメイトもなかなか話し掛けられないのだろう。ただこちらに敵意がある様子もなく、私たちのグループに寄ってくる様子もない。キッカケがないとなかなか相手の懐には踏み込めないけど、焦る必要もないか。こっちはもうちょっと様子見だ。
その日も授業を終えて帰りの馬車の中。レオと向い合せに座っていつもの様に喋りながら王宮へと向かう。
「俺までレジナルドの屋敷に行ってもいいのか?」
「本人がいいと言ってるんだから、いいんじゃない? 私も王女としてではなくアカデミーの学友として行くつもりだから、レオも私の護衛ではなく彼の学友として行けばいいわ」
「相手はインファンテの王妃様だぜ。そんなに簡単に切り替えられないって」
「あら、アナスタシア様はとてもお優しいと聞いているわよ。レジナルド王子の友達だと言えば、とても喜ばれるんじゃないかしら?」
実際、アナスタシア妃は王子ラブなところがあって、若干子離れできてない感じだった。前の扉の中でエマが刺されたのも、きっとレジナルド王子へのそんな感情の延長なのでは? と思ってる。私一人で会いに行ったら変な誤解を受けるだろうなあと思っていたけれど、これだけ大人数で行けば私への注目も下がるだろうし私としてはラッキーだったわね。
そうだ、養○酒! 週末までに準備しておかなければ。あとは彼女との会話次第だけど、別荘に行く件も検討しておかなければ。さあ、忙しくなってきたわよ!
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