#15 初めての任務 その②
葵と白華に連れられ警察署の中に入る朱珠。
警察署に入ると葵と白華は受け付けに向かい、
2人は警察手帳の様な物を見せながら、
受け付けの女性に話し掛けていた。
綾女 葵
『こんにちは。
如月警部は、いらっしゃいますか?』
受け付けの女性は手帳を見た後、
笑顔で話し始めた。
受け付けの女性
『御苦労様です!
如月警部なら、
もう少ししたら帰って来ると思いますよ。』
そう言うと、
受け付けの女性は少し背伸びをして、
葵と白華の後ろを眺め、
大きく手を振りながら、
『あっ! 帰って来た! 如月警部! お客様!』
と大きな声を発した。
葵と白華の背後に、
大きな足音が近寄って来ていた。
葵と白華が振り返ると、
そこには息を切らした如月警部の姿があった。
如月警部
『はぁ・・・はぁ・・・お待たせ!
ゴメン! 少しだけ時間頂戴!
お茶、飲んで来る!』
そう言うと、
如月警部は息を切らしながら、
廊下の奥へと歩いて行った。
少ししてから、
『君達! こっちにおいで!』
と奥の方から如月警部の声が聞こえて来た。
葵と白華と朱珠の3人が声のする方へ向かうと、
缶コーヒーを飲みながら、
販売機の前で如月警部が立っていた。
如月警部
『ゴメン! 待ったでしょ!』
そう言うと、
如月警部は販売機にお金を入れ、
『順番に選んで!』と言った。
林藤 白華
『大丈夫ですよ! 私達別に・・・!』
と白華が話しているのを遮る様に、
『ええの♪ どれにしようかなぁ〜♪』
と満遍の笑みで朱珠が販売機の前に立った。
林藤 白華
『バ・・・バラちゃん!』
綾女 葵
『たまには、甘えさせてもらいましょ。』
そう言うと葵も朱珠の隣に立ち、
販売機を眺め始めた。
林藤 白華
『リ、リーダーまで!』
そんな光景を眺めながら、
『良いから良いから! 遠慮しないで!』
と如月警部は、白華にも選ぶ様に、
販売機の方へ手を差し示した。
林藤 白華
『すみません! 有難う御座います!』
葵はミルクティー、白華は微糖のコーヒー、
朱珠はミックスジュースを買ってもらった。
綾女 葵&林藤 白華&神原 朱珠
『頂きます。』
如月警部
『どうぞ!』
笑った如月警部は、
とても顔が可愛らしい顔立ちをしていた。
葵の耳元で、
『なぁなぁ、この警部さん男前やなぁ〜!』
と小声で嬉しそうに話す朱珠。
綾女 葵
『随分と嬉しそうね。』
神原 朱珠
『へへへ。 何歳なん?』
綾女 葵
『忘れちゃったけど、
確か20代半ばだったと思うわ。』
神原 朱珠
『ええやん! ええやん!』
綾女 葵
『残念ながら、
婚約を前提で無い限り、
あなたには無縁な相手よ。』
『せやな!』と言いながら、
朱珠は笑っている。
そんな話しをしている2人を他所に、
白華が口を開いた。
林藤 白華
『所で用があると、お聞きしたのですが。』
如月警部
『うん。 一つ頼みたい事があってね。
先月海沿いのトンネルで
2回巻き込み事故が
あったんだけど分かるかな?』
林藤 白華
『確かどちらも
赤信号に変わっているにも関わらず、
ブレーキを踏んだ痕跡が
見当たらなかったんですよね。』
綾女 葵
『周囲の人の話しでは、
運転手が事故を起こす寸前に、
体調を崩して意識を失った訳では無く、
自ら突っ込んで行った様に
見えたって話よね。』
神原 朱珠
『2人亡くなったんやっけ?』
綾女 葵
『最初の事故で1人、
後の事故で2人亡くなっているわ。』
神原 朱珠
『えっ! て事は何なん⁈
もしかして2件共、
霊体が引き起こしたって言うん?』
如月警部
『まだ、ハッキリとは分からないよ。
ただ実はあれ以降も、
死亡者は出ていないものの、
その近辺で
同じ様な事故が多発しているんだ。』
そう言うと、
如月警部は眉を顰めながら、
『それで2つ奇妙な共通点も見つかったんだ。
1つ目は、
事故を起こしたのは全員、結婚していて
子供が産まれたばかりの男性という事。
2つ目は、
全ての事故が18時25分から35分の間に
起きていると言う事。』
綾女 葵
『この話し、
四葉ちゃんは知っているのかしら?』
如月警部
『勿論、彼女にはメールで先に伝えてあるよ。
彼女の事だから然程時間がかからない内に、
情報を集めて
知らせてくれるんじゃないかな?』
如月警部の話しを聞くと、
葵は白華に向かって、
『こうしては、いられないわね。
タクシーを手配してもらって、
海岸に向かいましょ。』
林藤 白華
『そうだね。
ここからだと20分くらいは、かかるからね。』
如月警部
『タクシーなら呼ばなくても大丈夫だよ!
blancとは言え、君達は高校生だからね。
僕も一緒に同行する。』
如月警部は飲み干した缶をゴミ箱へ捨てると、
『部長に話して来るから、
君達は、ここで少し待ってて!』
と言い残し、その場を離れて行った。
葵に不安そうな顔で近寄る朱珠。
神原 朱珠
『なあ、
私達も事故に巻き込まれたりせぇへんよな?』
綾女 葵
『"大丈夫"とも言えないけど、
安心して。』
そう言うと、葵は茜に
白と黒が半々に彩られた球体を差し出した。
綾女 葵
『はい。 お守り。』
球体を受け取る朱珠。
綾女 葵
『その球体は、
いつもあなたを守ってくれるはずよ。
今までだって、
あなたを守ってくれたでしょ?』
その問いに、
朱珠は笑顔で『せやな。』と返し、
そんな2人のやり取りを、
白華が笑顔で見守っている中、
階段の方から凄く大きな音がした。
慌てて朱珠と白華が階段に向かうと、
階段を滑り落ちた如月警部の姿と、
同じく音を聞き駆けつけた、
受け付けの女性の姿があった。
林藤 白華&受け付けの女性
『大丈夫ですか!』
如月警部
『痛たたたた・・・。』
林藤 白華
『病院へ行った方が良いんじゃないですか?
私達、タクシーで行けますよ!』
腰を抑え苦笑いを浮かべながら、
『大丈夫! 大丈夫!』
と答える如月警部。
受け付けの女性
『無理しないでくださいよ!』
そんな会話をしていると、
口元をハンカチで拭きながら
遅れて葵がやって来た。
葵の顔を眺めながら小声で、
『ほんまに、この人と一緒で大丈夫なん?』
と不安そうな顔で尋ねる朱珠。
綾女 葵
『私達が居れば、
大丈夫なんじゃないかしら?』
葵は白と黒に彩られた球体を、
ポケットから出して朱珠に見せた。
神原 朱珠
『嘘やろ! 私達が守る側なん?』
この後、葵、白華、朱珠の3人は、
おっちょこちょいな如月警部の車に乗り込み、
例の海岸に向かったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます