第160話急に恋愛シミュレーションゲームみたいな展開になったな
「なるほど……好感度をマックスに……って、はぁ?!?!」
人差し指を立てて、得意気に鼻を鳴らすアカツキさん。これが最適解とばかりの口調だが、この人、何言ってるの?
「なんですか好感度マックスって」
「なんだお前さん、乙女ゲームのキャラの声真似をしているのに、好感度のパラメーターがある事も知らんのか」
「え、いや……ゲームの好感度は分かりますよ。そうじゃなくって! なんで乙成のゾンビ化を解く為に、好感度メーターが必要なんですか?! ふざけてます?!」
「俺は至って真面目だ! つまりはこうだ。お前さんの彼女である乙成あいり、あのこはどういう訳かお前さんのその声――蟹麿ボイスで、全身に現れるゾンビ化の兆候を抑えられている。でも治る事はない。それは何故か? 答えは至極簡単だ。乙成あいりの、お前さんに対する好感度が足りてないからだ。好感度をマックスにした状態で蟹麿ボイスを聞かせる。するとどうだ? ゾンビ化が解けて元の姿に戻れるって訳よ!」
「………………」
なんか納得出来るような、出来ないような……? この人、適当な事言ってない?? 本当はなんか理由つけて俺から金やらなにやらを奪おうとしてない? もしくはこんなナリをしてるけど、新手の詐欺師か何かで、やっぱり俺から金やらなにやらを奪おうとしているとか……?
「待ってください! 俺と乙成は今、付き合ってるんですよ?! 好感度がマックスじゃないなら、付き合ったりはしないですよね??」
「君は何も分かってないなぁ〜。え、もしかして君、童貞か? まぁそれなら知らなくても無理はないか……いいか? お前さん達がどうなって付き合うまで至ったかは知らんが、許容範囲という言葉があってだな、人間は、ある程度許容範囲内にいる人間だったらとりあえず付き合ってみるなんて事が出来るものなのだよ。特に女なんてのは大体そうだ。まだ大好きではないけど〜付き合っていく内に大好きになっていくかも〜なんて言ってだな、言い寄ってくる男共の中から許容範囲内の男だけ選り分けてな、そこから本命、アッシー、メッシーなんて都合の良い男を作っていく生き物なのだよ」
「な、なんか凄い偏見な気がするけど……それに! 乙成はそんな子じゃないですよ!」
「え? 何、そんな子じゃないとか言ってるけど、実際に確認した訳じゃないんだろ? 根拠もないのにそんな事言っちゃ行かんよ〜〜〜〜エビデンスがないとね、今時は!」
クソ……なんか話し方がいちいちムカつくんだよな。何アッシーとかメッシーって……平成初期の話してんの? 令和だぞ? このジジイあれか? タクシー捕まえるのに札束見せつけてた時代の人間か?
「んまぁ、そういう事よ! とにかくお前さんは、自分の至らなさを反省して、乙成あいりの好感度上げに専念するんだな。さ、もう遅いから帰んな。俺はひと眠りすんのよ」
そう言って、部屋の真ん中に置かれたぺったんこの布団の上に寝転がるアカツキさん。一晩明かせば、きっと全身から謎の発疹が出そうなその布団に、よく横になれるな。
「分かりましたよ……あ、てか最後に聞いてもいいですか?」
「何」
「なんで俺の彼女が、乙成あいりって知ってるんですか? 名前、言った覚えないのに……」
「………………」
「……………………あの、アカツキさん?」
「……さぁな。まぁまたいつでもここに来いよ。俺はここにいるから」
手をひらひらと振って、そのままアカツキさんは寝る姿勢に入ってしまった。鍵とか……は要らないのか。本当は今の言葉の意味を聞きたかったが、これ以上ここにいても取り合ってもらえなさそうなので諦めた。
まぁいつでも来いと言ってくれたし、あの人、なんか変わった人だけど悪い人ではないと思うしな。それに、今のままじゃゾンビ化を解く手立てになりそうな話が聞けただけだ。実際にどうすれば良いのかは、まだ分からない。
もう少し、あの人の事も知らないといけないかもな……
好感度マックスねぇ……とりあえず、と◯メモ辺りから始めてみるか……?
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