没落伯爵家の私が嫁いだ相手は、呪われた次期公爵様でした ~放っておけずにいたら、夫と甥っ子くんに溺愛されています!~
はづも
プロローグ
sideレオンハルト 呪われた次期公爵
「私たちの子に触らないで!」
一人の女性がそう叫ぶ。
ベッドに伏せっているというのに、その声には強い意志と怒りが宿っていた。
幼い男の子を抱き上げようとしていた男は、その言葉に従って動きを止める。
この男女は、兄と妹だった。
兄の名は、レオンハルト。公爵家の嫡男で、この西方地域の騎士団の団長でもある。
以前は仲睦まじい兄妹だったのだが、妹・ステラの夫が亡くなったときから、彼らの関係は変わってしまった。
彼女の夫は、この兄妹の共通の幼馴染で、レオンハルトの親友で、副官でもあった。
幼い頃は三人組として扱われ、色々なことをして遊んだものだ。
しかし、彼は亡くなった。大規模な魔物との戦闘の際、レオンハルトを庇って戦死したのだ。
以降、妹はあなたのせいであの人は死んだのだと兄を恨み、自分たちの子供に近づくことも許さなくなった。
息子・ルカは大事な大事な、夫の忘れ形見。
死因となった男に触らせることなんて、できなかった。
レオンハルトは妹と甥を心配し、何度も何度も二人の家に足を運び、喜んでもらえそうなプレゼントや生活用品も度々用意した。
けれど、受け取ってもらえることは一度としてなく。
行き場を失った贈り物たちは、レオンハルトが住む屋敷にたたずむのみだった。
夫の死から半年ほど経った頃、ステラも心労で亡くなった。
妹夫婦が亡くなったのは自分のせいだと己を責めたレオンハルトは、せめて甥のルカを引き取って育てようと思ったのだが――。
ステラの葬儀のあと、ルカの頭に触れたレオンハルトの手が、痛みに襲われる。
まるで、火傷をしたときのような感覚。
まさかと思い、彼が自身の手を見ると。そこには、呪いの症状として見られる火傷のような痕がついていた。
この世界では、強い怒りや恨みが死後も呪いという形で残ることがある。
レオンハルトの手に与えられた痛みと痕は、死してなお、ステラが心から兄を拒絶している証拠だった。
お前のせいで夫は死んだのだ。私たちの子に触れるな、と。彼女は、今も兄を呪い続けている。
妹の激しい怒りを受け取ったレオンハルトは、甥のルカを引き取ることを諦めた。
それが亡き妹の意思ならば、尊重しようと思ったのだ。
レオンハルトは、甥を父方の……親友の親戚筋の者に託し、自身は身を引いた。
それでも甥を心配する気持ちは消えず、頻繁に様子を見に行っていたが、ルカを家族として迎えてくれた家庭は温かく、きっと大丈夫だと安堵していた。
だが、それからしばらくの時が経った頃。彼は、甥のルカを自分の屋敷に連れてくることとなる。
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