12月6日  戦時農園(第二部 古い世界、新しい世界)

 私がアニメを見ている時に、ちょっと不思議だったのが、スターリング少年が小さな畑で畑仕事をし、野菜を育てているところでした。おそらくここに違和感のあった方は、他にもいたのではないでしょうか? というのも、ウィスコンシン州の農村地帯とは言え、父親は農業をしている風ではないし、スターリングも基本、割と自由気ままに放課後や夏休みを過ごしている様子です。親友のオスカーは農家の息子で、親の仕事を手伝っていましたが。ちなみにスターリングの父親の仕事は、簡単に言うと農地の売買。所有する農地で採れた作物の利益の一部は手に入る……そんな仕組みもあったようです。


 話を戻しますと、スターリングが野菜を育てていたのは、戦時農園というものでした。

 第一次世界大戦中であり、農業人口が圧倒的に少なくなるための国策です。余っている土地を畑にする事を国が推奨し、「勝利の種を蒔こう」というスローガンのもと、行われていたものとの事でした。 


 にしても、スターリング少年は、採れた野菜を売りに行き、お金をもらっていましたよね。これはすごくないですか?

 十一才の子どもが戦時農園で、付け焼き刃で野菜を育て、売り物になるようなものを作れるなんて。それともウィスコンシンという自然あふれ、作物の宝庫のような環境がそれを可能とするのでしょうか?


 とにかく野菜を売ったのは、スターリングがお父さんと二人暮らしで、スターリングいわく「テキトー」な食事を二人で済ませていたからでしょう。このような食生活では、育てた野菜を二人では食べきれなかったのでしょう。

 第一部で取り上げた角砂糖についても、政府の配給品だったものですが、父子の生活では余っていたらしいですからね。母親が生きていたら、パイ等作ってくれて砂糖は余らなかったでしょうから、この話はちょっと悲しくもあります。


 他に戦時中の子どもである事を感じさせるエピソードとしてはクルミの種を集める活動があって、それは毒ガスマスクの材料になるからだという事。

 同じように錫箔を集める活動があって、ボールのように丸めていた事。錫箔とは、アルミ箔が登場する前に、アルミ箔の役割をになっていた物らしいです。赤十字が錫箔集めの活動を行っていたのですが、錫箔は急病の人たちの毛布として求められていたようです。体温を保つ目的です。これは目から鱗でした。

 錫箔の集め方ですが、少年達は、道を歩く時に落ちている錫箔を見つけるというのです。ここでラスカルが活躍します。ラスカルにはキラキラ光る物を集める習性があり、道や溝に落ちている錫箔の欠片かけらを探し当てるのが得意だからです。

 それにしても、いくらアルミ箔より錫箔が重宝がられていた時代とは言え、そんな物の欠片がおいそれと道に落ちているものなのか、今でも不思議です。


 そして、こんなふうに子どもの日常まで変えた世界大戦なのですが、その戦死者の数より、猛威をふるったスペイン風邪での死者数の方が多くなる事態となるのです。





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